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Wizard//Magica Wish −1−

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−そう、午前中は特に魔女や使い魔は現れなかったのね−

「おう、今日も見滝原は平和だったぞ~。もう今日はマミの出番はねぇんじゃねぇか?」

−ふふっ!でも、気は抜いちゃだめよ?3時になれば学校も終わるからその時にいつもの喫茶店に合流しましょ!−

「おう!ケーキおごってくれよ!!」

−んもう、調子にのらない!…でも、今日だけ特別ね!鹿目さん達には内緒よ?−

「よっしゃあ!その言葉、覚えとけよ?さあて、午後からも巡回すっか!」

杏子は勢いよくベンチから立った。
ちなみに彼女は現在公園にいる。昼時だったためか周りを見渡しても人影一つすら見えない。実質、この公園にいるのは杏子のみである。…逆に誰もいないのが嫌に恐ろしいが。


「って、張り切ったのはいいけど、お腹すいたな…どっかで昼にするか…ん?」

「………。うぃ~………・・・。」

「…っ!……はぁぁぁぁ!!?」


今、杏子自身は身体中の血の気が引くぐらい驚いている。
何故…と聞かれれば答えなくてはいけない。
だが、本来なら考えられない事態である。

今、つい先ほどまで杏子はベンチに座っていた。無論、隣りには誰も座ってはいなかった・・・が。


「お、お前だ、誰だっ!!!!」

「…………。」


一瞬。
一瞬の内に、そのベンチには見ず知らずの自分と同い年以上の青年がうつむきながら座っていたのであった。
杏子は常人以上に常に周りの気配に敏感なのだ。が、これだけの距離で気配すら感じ取れなかったのは今回が始めてである。


「お、おい…(やっべ…今の全部聞かれてたか?)」

「あ~………」

「…?」


杏子は彼の目の前でしゃがみ、おそるおそる彼…いや、青年の顔を除く。
…一様、整った顔立ちであった。
しかし、どこか生気が抜けたように衰弱しきっている。目には光すらない。


「お、おい…どうしたんだ、お前?」

「んなぁ…君…」

「何?男なんだからもっと大きな声で喋りなよ!!」


青年はゆっくりと顔をあげる。
先ほどは影でよくみえなかったが、顔全体が青ざめており、酷く弱りきっていた。


「な…なにか…食べ物…ないか…な?」

「食いもん?…あ、あぁ…」


杏子は3時のおやつとしてとっておいた、プレーンシュガードーナッツを懐から取り出し、彼に与えてあげた…。




………


「ふぃ~…生き返った。ありがとう、杏子ちゃん」

「あぁ!良いってことよ!困ったときはお互い様だろ?」


青年は先程とは考えられないぐらいまで生気を取り戻していた。
というのも、彼は財布を無くしてしまい、三日三晩なにも食べ飲みもせず、ずっと生活をしていたのである。


「へぇ~あんた、旅してるんだ。あたしとそんなに年変わらないってのにタフなんだね~」

「まぁそんなことないよ。あ、俺の名前は『操真 ハルト』、よろしくね、杏子ちゃん」

「あぁ!…て、それよりこれからあんたどうするんだい?この見滝原市じゃ泊まるとこなんていくらでもあるけど金ないんだろ?」

「まぁまぁ歩いてればなんとかなるでしょ。…よっと!」


ハルト はベンチから立ち、かるい屈伸運動をして明後日の方角を見る。
どうやら再び旅をはじめるらしい。
ついさっき出会ってお互い自己紹介してもう旅立つとは…どうやらハルトは極度のマイペース人間らしい。


「おいおい、もう行くのか?お菓子ぐらいだったらまだあるぞ?」

「ん?もうもらったよ」

「え?…って、あれ!!?」


いつの間にか、自分の懐に貯めておいた飴が全て消えていた。
ハルトを見るとその右手にはごっそりと飴の塊を持っているのがわかる。
…いつ自分の懐から奪ったのだろうか?


「お、おいハルト!」

「大丈夫、また今度会うとき返すから!じゃあね!」


そのままハルトは振り向くことなくそそくさとその場から去っていった。
たった数十分一緒にいただけだが、不思議な感じがした。

何か、他の人とは違う何かをだ。


「変な奴…また今度って、今度会う保証があるのかよ…」




作品名:Wizard//Magica Wish −1− 作家名:a-o-w