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こらぼでほすと 解除11

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 さあ、スメラギたちが待ってるぞ、と、刹那がニールの腕を取って起こす。フェルトが呼び出しを掛けたので、スメラギとラッセもブリーフィングルームで待っているとのことだ。扉を出ると、フェルトが待っていた。こちらも、間違わずにニールの手を取って誘導する。廊下部分は低重力だから、フェルトが誘導してくれる。
「そっくりだと思うんだけどさ、なんで間違わないかなあ。」
 ライルは刹那とフェルトの間違わなさが不思議だ。確かに体格的には、ちょっと違うが見た目には、ほとんど変わらないはずなのだ。だというのに、どちらも間違わずにニールを選ぶ。
「当たり前だ。俺とフェルトが間違うはずがないだろう。」
 どちらも親猫に世話をされていた子猫だ。親猫とロックオンでは、まったく気配が違うから間違いようがないらしい。




 ブリーフィングルームでは、今や遅し、と、スメラギとラッセが待っていた。ティエリアとアレルヤも一緒だが、気分的にはウキウキしている。意識が戻って、トレミーまでやってきたと聞いて、大喜びで呼び出しに応じたのだ。
 刹那とフェルトが迎えにいって、すぐに戻って来た。フェルトの後から、ロックオンが入ってきた。その後から、刹那が続いている。
「ん? ロックオンか? 」
 ラッセは、ちょっと違和感を覚えて首を傾げる。見た目には、完全にロックオンなのだが、どっかおかしい。そして、スメラギのほうは、直接確認とばかりに抱きついた。
「俺はダーリン持ちなんですが? ミス・スメラギ? 」
「・・・・その言い方は、ニールのほうね? 」
「あれ? ライルは、スメラギさんのことを、そう呼んでないのか? 」
「スメラギさんって呼んでるよ、兄さん。」
 刹那の後から、ようやくロックオンも入ってきた。同時に並ぶと体格でバレるから、別々に現れたのだが、やはり違和感はあるらしい。
「確かに見た目は酷似してるが、体格的には違うんだな。ニール、久しぶり。」
 ラッセも、やっぱり、と、ニールに握手を求める。どこか違和感があったが、双子を見比べて納得だ。差し出された手を握って、ニールも挨拶する。
「久しぶり、ラッセ。」
 ラッセとは、実に五年ぶりぐらいの再会だ。プラント在住組とは、夏に顔を合わせたが、ラッセとは、再始動前から、ほとんど逢っていなかった。
「なんか色気が増してないか? ニール。」
「はあ? なんか悪いもんでも食ったか? ラッセ。」
「あら、ラッセ。ニールは嫁入りしたんだもの、色気ぐらい増すわよ。なんせ、旦那様は、ひと時もニールを手放したくないってぐらいの熱愛っぷりなんだから。」
「こらこら、ミス・スメラギ。誤解が生じる言い方はやめてくれ。ただの同居人だって。」
「同居人にしては、いちゃいちゃしてるらしいじゃない? みんなから、そう聞いてるけど? 」
「いちゃいちゃとはしてないんだけどなあ。」
 ニールの感覚で言うと、いちゃいちゃには該当していない。三蔵が、いろいろと用事を言いつけてくれるので、それに対応して暇を紛らわせているというところだ。ただし、傍目には亭主を女房が構い倒しているようにしか見えない代物ではある。
「まあ、無事でよかった。どうだ? トランザムバーストの味は? 」
「ああ、右目の視力がちょっと戻ったよ。まだ、結果は出てないんだが、治ってるとこはあるみたいだ。」
 スメラギとラッセとニールは、年が近いから、よく一緒に飲んでいたメンバーだ。だから、どちらも久しぶりに顔を合わせると嬉しい。それに、ラッセは同じ症状でダウンした仲間でもあるから、どちらも生きて再会できたことに喜んでいる。
「俺も、もうダメだと思ったら、急に身体が軽くなって驚いた。」
「うーん、俺は、それほど劇的な回復じゃないんだよなあ。ラッセは、ほんと、ギリギリだったんだろ? 俺は、そこまで悪化させてないからさ。」
「いや、おまえ、地上で死にかけたんだろ? 状況的には変わらないと思うぞ? 」
「漢方薬を使ってたから、そこいらだけマシなんだろうな。」
「確かにな。俺は医療ポッドで再生させつつ働いてたからな。」
「悪いな、俺だけ楽させてもらって。」
「そうでもないだろう。おまえのほうが重症だったんだ。・・・だいたい、右目の視力もなかったし、身体だって回復しきれなかったんだから、参加は無理ってもんだ。」
 ドクターストップのかかっていたニールと、そこまでではなかったラッセだ。この違いは、直撃を浴びたか、浴びていないかの違いからくる。ラッセは、機体の中で被弾しているから、多少なりとも守られていたが、ニールの場合はパイロットスーツだけで、負のGN粒子の直撃を浴びてしまっていた
。その違いが、ここまで如実に現れている。遺伝子情報の狂いが大きかったのも、ニールのほうだ。漢方薬治療がなければ、ここまでは生きていない。
「いいじゃないの。どっちも生き残ったんだから。」
 で、スメラギの意見としては、こうなる。どちらも、土壇場ギリギリで一発逆転したのだ。生きているんだからいいだろう。
「並ぶと、はっきりするね? ニールの筋肉が、ほとんどない。」
 離れて観察していたアレルヤは、そこの違いを指摘して、ふむふむと頷いている。単品で見ていると、それほど違っているとは思わないが、並べば、一目瞭然だ。
「そりゃそうだろう、アレルヤ。俺は五年以上、ほとんどトレーニングしてないんだからさ。今は、コルトですら反動が抑えられなくて、的に当たらないってぐらいの体たらくだ。」
「誰ですか? 勝手に、そんなことを推奨しているのは? あなたの身体では、射撃訓練は無理だと言ったはずですが? 」
 すかさず、ティエリアからツッコミだ。トレーニングは一切するな、と、ティエリアは降下して健康管理をしている時は、そう注意していた。ジムのマシーンを小一時間が、せいぜいだったし、再始動間近の頃は、それさえ禁止にしていたからだ。
「気晴らしに、三蔵さんと寺で遊んでただけだよ、ティエリア。全然、当たらないから、三蔵さんに、さんざんにバカにされたさ。」
 コルトは反動の少ない銃なのだが、それですら標的に掠りもしなかった。肩や背中の筋肉がなくなっているから、反動を抑えられないのだと、坊主に指摘は受けた。たまに、気晴らしなら付き合ってやる、というので、たまに寺で撃っていたぐらいだから、トレーニングなんてものではない。
「そっちは廃業しなさいよ? ニール。主夫業が忙しいんだから。」
「身体が治ったら、ぼちぼちやるさ。」
 健常な身体に戻ったら、それなりのトレーニングはやって昔の勘ぐらいは取り戻しておこうとニールも考えている。
「組織への復帰は認めないぞ? ニール。」
「はいはい、わかってるよ、刹那。護身用ってだけだ。」
「護身用も必要ない。あんたの亭主が守ってくれる。」
「まあ、そうなんだけど、俺としては守られているだけっていうのも寂しいからさ。うちの亭主のお荷物だけはやりたくないの。」
「ほおら、亭主がいるじゃないの。」
「いや、言葉のアヤだろ? ミス・スメラギ。」
 ぎゃあぎゃあと騒いでいたら、フェルトが近寄ってきた。くいくいと腕を引っ張るので、そちらに移動したら通信パネルの前だ。ポチッと繋ぐと、そこにも懐かしい顔だ。
作品名:こらぼでほすと 解除11 作家名:篠義