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とある世界の重力掌握

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「どうしたんだ?インデックス 」「当麻。あの剣はアイルランド神話に出てくる神の武器をモデルにした霊装なんだよ! 名は........ 」

「『ヌアダの剣 (クラウ・ソラス)』だ。さあ、味わってもらおうか。この力を! 」

男の叫びとともに、剣からすさまじい光が放たれ、一瞬にして護達を光の渦が包み込む。

「当麻! お前の右手でこの渦に触れるんだ! このままじゃ飲み込まれる! 」護の叫びにわずかに困惑した上条だったが、即座に自分たちを囲む渦に右手でつくった握りこぶしをぶち当てる。

はじけるような音とともに光の渦は消し飛ばされる、だが消えると同時に無数の光弾が護達に向かってくる。

「下がって!護! 」哀歌が護を横に突き飛ばし、護の前に出る。

「現出せよ、『破壊大剣(ディストラクション・ブレード)』! 」哀歌の叫びとともにすさまじい閃光が彼女から発せられ、向かってきた光弾をすべて打ち消す。

その光が収まった後、そこに立っていたのは『変化』をとげた哀歌だった。

「あれって、哀歌だよな?翼が生えたりしてるけど、あれは哀歌なんだよな? 」

上条が戸惑うのも当然で、彼は哀歌の『変化』した姿を見たことがない。

「ああ、そうさ。僕の仲間にして親友。そして対魔術戦闘のエキスパートだよ 」

哀歌はその両手で構える『破壊大剣』を真上に振り上げながら一瞬で男の前に移動する。

その全長3・5メートルの大剣が男に向けて振り下ろされる........が男はその攻撃を『右手』一本で構えた剣で防いだ。

「おまえも魔術師のようだが......知ってるか? 『ヌアダの剣』の持ち主である神『ヌアダ』は戦いにより両手を失い.......医学の神が作った特製の『銀の腕』を取り付けることによって力を取り戻した........それが表向きの伝説だ。だがもう一つあまり知られていない伝説がある。医学の神が作った『銀の腕』には『神器を扱えるだけの怪力』をもたらす力がこめられていたという伝説だ.....つまり『銀の腕』と『ヌアダの剣』はセットじゃなきゃ力を発揮できないのさ.......ただ、さすがに両手を切り離してまで力を手に入れようとは思えんのでな.......俺の場合は、『右腕』を『銀の腕』にしてそこに『銀の両腕』の特性を集約しているというわけさ 」

驚愕し、男の右腕を見つめる哀歌。確かにその右腕は銀製の義手になっている。

「さて、それじゃあ吹き飛んでもらおうか。いくら巨大な武器をぶつけても俺には意味はない。この『右腕』がある限りな! 」

哀歌が身構えるのと同時に、男の剣が勢いよく振られ、哀歌の体を大剣ごと吹きとばす。

「哀歌!くそ!『重力鉄槌(グラビティック・ハンマー)』! 」護が作り出す重力の鉄槌を、しかし男は『右手』で受け止める。

「.....超能力.....科学サイドの象徴......なるほど確かに強力だ。だが、その程度で、このグラン・ストリスを倒せると思うな! 」

どういう力を使ってか重力を『弾き飛ばした』グランはその剣に巨大な光の波をまとわせる。

「滅びろ超能力者! これで『あの方』の計画は成就する! 」

グランがいっきに振りぬいた剣から巨大な光の波が放たれる。護は周辺の重力を操作し、その攻撃を抑えようとするが、多少スピードが遅くはなるものの、まっすぐこちらに向かってくる。

「(この攻撃、科学の法則を完全に無視してるせいで、能力が効かない!?) 」

自分の無力さを呪いつつ護が観念して目を閉じようとした時、その前に人影が立った。

「こんなに早く.....あきらめてんじゃねえぞ! 」

次の瞬間、前に立つ人影.......上条当麻の『右腕』がまっすぐ伸ばされ、その手が波を粉々に打ち砕く。

「なあ!? 」驚愕するグランに向けて上条の言葉が放たれる。

「てめえが、その『右手』を使って、まだ俺の『仲間たち』を傷つけようって言うんなら......まずは、その幻想をぶち殺す! 」
<章=第二十話 とある男の銀製義手(シルバーハンド)>


「その『右手』...... お前いったいなにもんだ? 」

「なに者でもない。ただの高校生さ。ちょっとばかし変わった右手をもつ、ただの高校生......だよ 」

「ただの高校生が、俺の攻撃を打ち消せるはずが無い! いったい...... 」

「幻想殺し(イマジンブレイカー)さ。こいつの右手には、あらゆる異能の力を打ち消す力が宿ってるんだ。こいつの前ではお前のどんな攻撃も無駄ですよ?」

護の言葉に、グランの口元が歪む。

「ふざけるなよ.......そんな戯けた力があってたまるか! 」

再び光の波を放とうとするグランだったが.......

「私のことを忘れてるわよ? 」

いつのまにか、グランのやや後ろに来ていたラミアがその手に槍を構えて立っている。

ラミアのもつ槍を見たグランの表情が変わる。

「きさま......そうか、お前も『一族』の血を.....『女神の素質』が成せる力か! まさか、『死の女王スカアハ』の特性とはな。となると......その槍は! 」

「魔槍『ゲイ・ボルグ』。勇者クー・フリンの武器として有名だけど、本来は死の国の女王である『スカアハ』のもの....... あなたも『これ』の威力は知ってるわよね? 」

瞬間、ラミアのもつ槍が凄まじい速度でグランに向けて投げられる。そこは別に普通だ。だが違うところが1つ。彼女は『足で投げた』のだ。

「その投擲法.....まさか! 」

「そうよ...... 」

ラミアはグランにむけて薄く笑う。

「こいつは、あんたのもつような『量産型(コピー)』じゃない......『本物(オリジナル)』よ 」

グランは慌てたように構えるがすでに遅い。

投擲された『ゲイ・ボルグ』は空中で突如30の鏃に分裂し、闇色の鏃に変化しグランに遅いかかる。

グランが光の波を放とうとするが間に合わない。突き進む30の鏃はその全てが容赦なくグランの全身に突き刺さった。

「ぐわああああ!? 」

激痛に全身を蝕まれ絶叫するグランは、自分の体の変化に気づいた。鏃が刺さった部位が徐々に『老化』を始めている。

「ラミア! きさま、なにを! 」

「あなた、自分で言っといて忘れてるの?私は『死の女神スカアハ』の特性をもっているのよ?『死』を司るスカアハに『老化』が関係ないわけないでしょう? 」

唇をかむグランにラミアは静かに告げる。

「安心して。手心を加えて置いたから、あくまで『刺さった部位』が老化するだけ。『葬式』で親族が見るあなたの顔は今のままよ? だけど、あなたを『助けはしない』わ。体の30箇所を鏃で貫かれた以上、なにか措置をしないかぎり、あなたは助からないわ 」

「く.....そ.....が..! 」体の30箇所から真っ赤な血を流し、口から血の塊を吐き出しながらも、グランはおのれの右手に握られる抵抗の象徴である剣を持ち上げようとする。だが、その手はもう1つの『右手』に押さえられる。

「てめえの幻想はここで終わりなんだよ。グラン! 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン