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とある世界の重力掌握

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哀歌の叫びに、我に帰り、自らの体を転移させようとする高杉に向けてアンの剣が飛ぶが、その攻撃は哀歌の『火竜の怒りをは大地を焦がす』により燃やしつくされる。

「どこを狙ってるの?.......あなたの相手は私だよ...... 」

哀歌は、アンを睨みつけ、自らの腕を高く上げる。

「この地の底で、私の仲間に手を出したこと、永遠に後悔させるから! 現出せよ『破壊大剣(ディストラクション・ブレード)』! 」

瞬間、眩いばかりに溢れる閃光と衝撃波にアンの体は包まれた。

一方、『霊安場』でセレナ相手の戦いを続ける美希は孤独な戦いを続けていた。

棺から無数に溢れ出てくる『死人(アンデッド)』。

どこかのホラー映画のように噛まれたら、仲間になってしまう訳ではないようだが、映画以上の俊敏さを持っており、ここは映画通り、頭部を攻撃しなければ即死とらならない。

とは言え、電撃使いの美希にとっては最大出力の電撃を浴びせれば大概頭にもダメージがゆくので倒すこと自体には苦労していない、ただ、余りにも連続して能力を使用する場合、『電気切れ』を起こしてしまう危険があるのだ。そうなってしまえば、美希はただの『女子中学生』となってしまう。

「まったく.........どんだけ出てくんのよ、あの死人ども......だいたいあの棺からどんだけ出てくんのよ? あの大きさであの数はなしでしょうが! 」

そんな事を愚痴っている間に、隙をついてセレナが羽毛を変化させた無数の短矢を浴びせかける。

それを電撃で片っ端から叩き落とす美希だったが、ここで遂に電気切れが起きてしまった。

「ぐ!?......しまった....... 」

「おやあ? 電池切れかな、ビリビリちゃん? そのままだと死人どもの仲間入りだよ? 」

嘲笑するセレナに向けて美希は目線を向ける。

「分かった......私の負けよ.....好きにすれば良いわ。その代わり、一つ教えて欲しい事があるの...... 」

「なに? 」

「あなたを助けたお父さんは、なにを企んでるの? 」

セレナは口元を歪める。

「話す義理なんてないけど、まあ冥土の土産に教えてあげる。お父さまが為そうとしてるのはイギリスの占領よ。かつてアイルランドを支配したイギリスを今度はこちらが占領するのよ?こんな愉快な話をないじゃない! 」

「は....はは.....はははははは! 」

突然、笑い出す美希を怪訝な目でみるセレナ。

「なにが可笑しい! 」

「いや......なんだ、そんなショぼいことのために、こんな力を使ってるなんて知らなかったからさ......なんだ、私はてっきり世界征服とか考えてるのかと思ってたけど.......なんかえらく外れたわね......なんか、アンタを潰すのも馬鹿らしくなってきた......だから......アンタじゃなくて、こっちを潰す! 」

美希の目がキラリと光ったのをセレナが確認した次の瞬間、霊安場の4方の壁が突如崩れ、部屋を地下の照明が照らし出す。

動いていた死人たちは、一様に身悶えし、次々と倒れていく。

「バカな........なぜ、貴様に力が残っている? 」

「逆に聞くけど、私が一度でも力を使い切ったと言った? この死人どもが霊安場入り口に近づかないのに気づいて閃いたのよ。この死人どもは『霊安場』という環境の中でしか活動できないんじゃないのかってね.......大当たりだったわ! 」

見抜かれて動揺する、セレナの足元が四角に区切られ、彼女の体は穴に落ちていく。美希が砂鉄を操ったのだ。

「これで終わりよ、セレナ。しばらく眠りなさい! 」

穴に向けて雷撃のヤリが放たれ、戦いに終止符が打たれた。
<章=第二十五話 とある地底の戦闘終盤>


古城内部の一室、隠し部屋にクリスの父、ジェラルド・エバーフレイヤは立っていた。脇に控えるのはエバーフレイヤ家執事『ベネット』。

「まもなくだ......まもなく計画が成就する。時期的には少し早いが『聖騎士団』の手が完全に伸びる前にことは終わらせねばならん 」

「まだ、運命の3女神の特性を持つ者は2人しか集まっておりません。4人目の御息女はいまだに見つかってはおられませんのに...... 」

「かまわん.....たとえ2人でも、クリスの『主導神ダヌ』の力があれば十分に事はたりる....まあ、長期戦はきついがイギリス清教の持つ『遠隔制御霊装』を奪う程度には十分に役立つはずだ 」

この隠し部屋は古くからこの城の内部に作られているもので、数々の戦乱の中、当主を守り抜いた部屋でもある。

「それはそうとして......『侵入者』はどういたします?城内部に『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師複数の侵入を確認しておりますが...... 」

「消せ 」ジェラルドの冷え切った声が部屋に響く。

「アイルランド統一のために戦ってきた我々が『対魔術師戦力』を保持していないはずがないだろうが....『タラニス』戦闘員をすべて出すのだ......やつらを1人残さず始末しろ。指揮はお前が取れ 」

「かしこまりました........儀式の準備を整え次第、私も戦列に加わります 」

一礼して部屋からベネットが出ていき、部屋に静寂が満ちる。

「あいつがクリスを学園都市に送った時はヒヤヒヤしたが、とにかくこれで計画に必要なパーツはすべてそろった。娘たちの体さえあれば計画は実行できる......ふはははは!見ていろイギリス王家よ!我らの絶対的な正義を味あわせてやる! 」

「絶対的な正義......良く言えますね、そんな言葉 」

予想もしない声にバッと後ろを振りかえるジェラルド。その瞳に映るのは.......

「取り返しにこさせてもらいましたよ。さて、僕たちの仲間を返してもらいましょうかね?」

古門 護、高杉宗兵、上条当麻の3人の姿が高杉の瞳に突き刺さる。

「馬鹿な......きさまら、どこからここへ? この場所は通常の方法ではたどり着けない! 」

「あいにくと、こちらにも『魔術の専門家』がいましてね、彼女の力を借りて探り当て、後は高杉の力で瞬間移動すればそれでことは終わるんです 」

護は、自らの右手をジェラルドに向ける。

「ここで終わりにしませんか? あなたの娘、クリスの妹達はいまごろ哀歌と美希が押さえている。あの2人を含めなきゃあなたの計画は実行できないのですよね?だったらこれ以上の戦いは無意味でしかないと思いますけど? 」

「ふん.....知ったような口をきくな小僧。その口ぶりからすると、『聖騎士団』と接触したということか.......なるほど奴ら、かなり正確に俺の計画をつかんでいたようだな。だが、そのすべてが正確なわけじゃない 」

ジェラルドは口元に冷笑を浮かべた。

「わが娘達から聞かなかったのか? 私はあの2人を『蘇生』させたことを 」

一瞬、何を言われたのか理解できない護達だったが、すぐにその言葉の意味を悟る。

「まさか......」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン