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とある世界の重力掌握

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となると、当然ながらこの敷地の中を探し回らなければならないわけだが、あいにくと今は昼間。堂々と探っていれば、不審がられてしまうだろう。もっともイギリス清教も一般人が見学している時間帯に堂々とこの施設を利用するのは避けるだろう。

「こうなったら、日が沈むまで市街で待機して、倫敦(ロンドン)塔から一般人がいなくなりしだい先入して調べるしかないな 」

高杉の言葉に上条は首を振る。

「いくら夜に人がいなくなるからってダイヤモンドとかも展示されてるんだから監視カメラとか防犯装置とか付けてあるんだぜ? そういうのどうするつもりだよ? 」

「そこは私の出番よ 」

美希は自分の前髪に電気を発生させながら言う。

「私の能力を使って、そういった電動式防犯設備は全部無効化できると思うわよ 」

「そっか、美希はビリビリの従姉妹で同じ力を持ってたんだっけな 」

関心する上条。彼は事実を知らないゆえに軽く言っているが当の本人にとっては重い話である。

「よし、そうと決まったらさっそく実行に移そう。閉館時間まで市街で自由行動。なにかあったらすぐに携帯で連絡するように! 」

てなわけで、護たち5人は定刻まで時間を潰すことになったのだ。

護は哀歌と連れ立って、市街を歩いていた。元の世界では一度も海外にでたことの無い護にとってはイギリスの風景は本気で新鮮だった。

「この近くだと、大英博物館があるよね。僕はそことか見学したいな 」

「いまだに緊張状態は続いているのに......のんき過ぎない? 」

「どの道、焦っても事態は好転しないだろ? 時間までは割り切って楽しもうよ 」

そう言った護だったが直後、彼の表情が強張った。哀歌の表情も張り詰めている。

2人に緊張をもたらす原因がなにかといえば目の前に広がる風景を見れば分かるだろう。

「この不自然なほど無人な風景.....まさか、これは! 」

「『人払い』の術式....まさか、もう『必要悪の教会』に悟られたの? 」

両腕を竜人に変化させ、警戒する哀歌。

最高に、警戒する2人の前に現れたのは...........

木製の杖(ステッキ)をついて、学生服の上からフード付きのマントを羽織る少女だった。

一瞬場を沈黙が包み込み、一呼吸おいて双方から言葉が飛んだ。

「きみ.... 」「あの... 」双方喋りだしたところで重なり再び黙ってしまう。

「.......君から要件をどうそ 」

「あ......はい。私の名はナタリーと申します。魔術結社『救民の杖』に所属しております。あなたがたに話したいことがあってこんな方法を取らせていただいたことお許しください 」

しっかりとしたアクセントの日本語を話す外国人少女 (瞳の色が青であることからの判断) にすこし戸惑いながらも護はナターリーに向き直る。

「話したいことっていうのは? 」

「はい。あなたたちがやろうとしていることに私達を混ぜていただけないかという話しなんですが..... 」

「僕達がやろうとしていること? なんのことかな? 」いくら相手が丁寧な態度で接触してきたとしても、それですべて信頼できるはずがない。ましてや護たちは学園都市の暗部構成員である。

「警戒されるのも無理ありません。ですが私はイギリス清教に協力はしていません。だいたい協力しているなら、わざわざあなたたちと接触せずに通報したほうが早いです。私は.....いや、私達はあなた達と同一の場所を狙っているのです.......この国唯一の裏側専用の牢屋を 」

裏側専用の牢屋。この言葉が指し示す場所は一つだ。すなわち倫敦(ロンドン)塔である。

「な? 僕達はともかく、なんで君達が倫敦(ロンドン)塔を狙うんだ? 」

「あなた達と同じです 」

「同じ?.....まさか、仲間が捕らえられている? 」

ええと頷くナタリー。

「あの塔には、私達のリーダーが捕らえられています。私達はそれを取り戻したいのです。その為に『吸血鬼セルフィの奪取』を目指すあなた達に協力させてもらいたのです 」

なるほどと護は納得した。

リーダーを失った彼らは、それを取り戻さなければ組織として機能しなくなりかねない。だから確実にリーダーを助け出す為に護たちの協力を必要としているのだろう。

「もう1つ聞かせて欲しい、僕らの目標をどうやって知った? 」

「私達は、世界のあちこちに拠点を持ちます。そのうちの1つ、アイルランド支部からの情報からです 」

「たまげたな....... そんなにデカい組織なのか君達は 」

護は素直に驚愕していた。もし彼女が言っていることが本当であれば、『救民の杖』はかなりの規模を誇る組織ということになる。それだけの組織は1年か2年で作り上げられるものではない。

「私達、『救民の杖』のルーツは十字教における『旧約聖書』、私達ユダヤ教における『聖書』の中に出てくるモーゼの跡継ぎ『ヌンの子、ヨシュア』が率いた『杖部隊(ステッキ・コマンド)』にさかのぼります。この部隊はモーゼの弟のアロンが持っていた『救民の杖』と呼ばれる杖を守護する役目を持った精鋭部隊でした。安住の地、エルサレムを持ってからも部隊は存続し続けました 」

ナタリーは、一息ついて話を進めた。

「ところがバビロニア帝国という国の侵略を受けてユダヤ人国家の『イスラエル王国』は壊滅。多くのユダヤ人が捕虜となってバビロニアに連れていかれた......これを『バビロン捕囚』と言うのですが、この出来事によって『杖部隊(ステッキ・コマンド)も一時消滅しました。しかし、バビロニア帝国が滅ぼされたことによってユダヤの人々はイスラエルの地に戻ることができました。それに伴い『杖部隊(ステッキ・コマンド)』は復活し、その後、とある男が現れるまで存続し続けました 」

「ある男? 」

「現在、もっとも多くの信者を抱える一大宗教の教祖さまと言えば分かりませんか? 」

もっとも多くの信者を抱える宗教........それを指すのはたった一つだ。

「十字教........ 」

「ええ、その男を『神の子』と崇める一大宗教の誕生によって『杖部隊(ステッキ・コマンド)を含めた『ユダヤ教』自体が『神の子を殺したものたちの集まり』とされるようになってしまったのです。その為に『杖部隊』のようなユダヤ教を象徴するような勢力は時の十字教各派閥のトップに睨まれ、次々と潰されて行きました。そんな中、『杖部隊』は地下に潜伏し、十字教に対向する為、部隊の組織化を進め、やがて名を『救民の杖』と変えました。幾度となく........特に魔女裁判などを行なう『イギリス清教』、最大宗派である『ローマ正教』と戦い、それを経て『世界最大の魔術結社』と呼ばれるようになったのですが、今から10年ほど前、私達の主力はイギリスで、ある男によって一方的に蹴散らされ、リーダーをさらわれたのです! 」

護は首を傾げた。ナタリーが話していたことを信じるとして、それほどまでに巨大な組織の主力を個人で蹴散らすことができる人間がいるだろうか?
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン