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とある世界の重力掌握

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そこまで考えて、ふと護は思い出した。10年前、イギリス、そのキーワードに繋がり、なおかつ個人で組織を相手取れる力を持つ男。

「後方のアックア........いや、ウィリアム・オルウェルですね? 」

「?.......後方の......かどうかは知りませんが、確かにその男です。イングランド出身の魔術的な傭兵であるその男は我々とイギリス3代派閥の1つ『騎士派』との戦いに介入し、見事に我々を打ち負かしました。 しかし、今、彼はイギリスから姿を消しています。その為、あの男がいない今がチャンスなのです 」

かなり、色々と厄介な事になってるな?と内心ため息をついた護だったが良く考えれば、この申し出を断ることもないと思い直した。

彼女たちが自分たちを利用したいのは間違いないだろう。

だが、彼女たちとの共闘はこちらにとっても有難い話である。

ラミアは『自分たち、十字教徒に救う事は出来ない』と言っていた。だがナタリーたちは、ユダヤ教だ。その枠には縛られない。

「わかった......その申し出を受けるよ。その変わり、君たちが知っている情報を提供してほしい、後から仲間を集めてまた会いたいから集合場所を決めてくれないか? 」

「分かりました......では夕方5時に喫茶店『カバラ』にきてください。場所は×××です 」

ナタリーは一礼して最後にこう言った。

「本当に噂に聞いたとおり、善人なんですね.....正直、感動を覚えました 」

それだけ、言いのこして、ナタリーの姿は暗がりに消え、再び目の前の景色に人が戻ってきた。

「ねえ、護。奴らを信頼して良いの? 罠かもしれないよ? 」

「大丈夫だよ。たとえ罠だったとしても哀歌がいるから 」

護の言葉に赤面し、下を向く哀歌。そんな姿に微笑しながら護は市街に広がっている仲間たちへと連絡を取る為無線機に手を伸ばした。

数時間後、護たち『ウォール』メンバーは集合場所に定めた大英博物館の前に来ていた。この非常時で無ければゆっくり見学していきたいところだが、今はそうはいかない。

「つまり、その『救民の杖』って組織も俺たちと同じ目的で動いてるっつーことか 」

「しかしね?、アンタ、良く申し出を引き受けたわね。これが罠だったらどうするのよ? 」

「罠だとしても、自分達『ウォール』なら食い破れると信じてる 」

護は、上条に視線を向けた。

「上条.......ここから先はきっと厳しい戦いになる。正直、全員が生きて帰る保障なんてない。それでも来てくれるか? 」

「そんなの決まってんじゃねえか。友人(ダチ)の頼みをそう簡単に断れるかよ。それに俺の右手が必要なんだろ?だったら行くしかねえよ 」

上条の言葉に、やはり主人公は違うな.....と感じさせられた護だった。

「護.....嫌な感じがする。ここから離れた方が良い 」哀歌に唐突にそう言われ、周りを見渡す護だったが目の前の光景におかしな所は特にない。

「どうしたんだよ哀歌? 」

「誰かが魔術を発動しようとしてる、それもかなり大掛かりな術式を......禁書目録(インデックス)がいれば何の術式か解けるのだけど 」

「大掛かりな術式? 」そう護が呟いた直後だった。

ぱっくりと地面が口を開け、その場の全員を飲み込んだ。

「は? 」 「え? 」「なに? 」「うそ? 」「きた! 」

それぞれ声を上げながら、5人は地のそこに落ちて行った。


「ん......つてて.....痛っいな......みんな無事か? 」

「私は大丈夫 」

「私も大丈夫よ 」

「俺とこいつも大丈夫だ 」

「高杉のおかげで助かったぜ....... 」

どうやら全員、無事だったようである。

護は痛む頭を振りつつ、現在の状況を確認する。

どうやら自分たちはかなり地下奥深くに落ちてしまったようで上にある穴から見える光はかなり遠い。

だが、落ちた場所はえらくスペースがあり、また舗装された道のようになっている。まるで人の手によって作られたかのようだ。

なんというか、巨大な地下トンネルにいるような感じを受ける場所である。

「とにかく、この道を進んで出口を探そう。息が続く以上、どこかに入り口か出口があるはずだし 」

そう言って、歩き出そうとした護だったが直後、周囲の壁に異変が起こった。

「!? なによこれ? 」

周りの壁のあちらこちらに突然、血で塗りたくったような真っ赤な『???』という文字が現れたのだ。

「この文字は! みんな早くこの文字を消して! 」

慌てて叫ぶ哀歌だったが少し遅かった。

ボコッと壁の一部が、人形になり、壁から独立して動き出す。

その手に土塊から形作られた剣が握られている。

そんな奴らが周囲の壁から次々と湧き出してきた。

「こいつら、まさか......ゴーレムか? 」

「多分.......でも、こんなタイプはみたことがない 」

前方に迫りゴーレムの一体が、土塊から作られたライフル銃をこちらに向けた。

「まずい! 」とっさに右手から『超重力砲(グラビティブラスト)』を放ち、その一体を含めて前方のゴーレムをまとめて吹き飛ばした護だったが、敵は四方八方にいる。

周りに展開しているゴーレムからの一斉射撃が始まった。

哀歌が拳で頭を砕き、高杉が放つ機能性炸裂弾がゴーレムたちをまとめて吹き飛ばし、美希が放つ鉄球が10体まとめて粉々にし、上条の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』がゴーレムをただの土塊に戻しても.......敵の数は一向に減らない。

「くそ! 真の意味でゴーレムを無に帰せるのは上条だけだ。こいつらを倒すには術者を倒さないと! 」

とはいっても周囲を完全に、ゴーレムの群れに囲まれている状態ではどうしようもない。

「なら、俺の能力を使って前方限定だが道を開くか? 殺すことはできんが、時間稼ぎにはなるぜ 」

高杉が機能性炸裂弾射出機をゴーレムたちへ向けながら言う。

「いや、高杉の能力を使うとしてもこいつらを転移させる場所がない! ここは美希に頼もう 」

護の言葉に首を傾げる美希。

「美希! ここは地中だ、砂鉄を操って360度全方向に展開させてくれ! 前方以外の全ての方向で盾代わりに利用する! 」

「なんで前を開けるんだ? 」

上条の問いに護は自分の右手を振りながら答えた。

「あいつらにこの能力をぶつけてやる為さ。それに、哀歌の攻撃を当てる為でもある 」

そんなことを話している間にも、ゴーレムたちは距離を詰めてくる。

「行くわよ! 砂鉄展開! 」

瞬間、ぞわっと地面が動いた。地中に含まれる無数の砂鉄が美希の意思により、周囲に展開される。

「よし、こんどは僕らの番だ! 哀歌! 前方の敵を一掃するよ! 」

「分かった! 『竜の息吹(ドラゴン・ブレス)』! 」

「『超重力砲(グラビティブラスト)』!」

哀歌の前方に現れた魔法陣から放たれる強烈な光線が、護の超重力砲により信じられくらいの速度に加速し、一瞬で前方のゴーレムたちを消滅させる。

「今だ! 走れ! 」護の叫びを合図に、5人は一斉に前に向けて走り出す。
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン