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とある世界の重力掌握

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『確かにお前が目指した復讐は当然とも言えるしだれにもお前を悪と断じることはできない。ただお前は一つやってはならないことをした 』

「なんだと? 」

『エバーフレイヤの人間に刃を向けたことだ。エバーフレイヤの血を引く娘たちを計画の為に利用しようとし、感づいた2人の娘を手にかけた。私はエバーフレイヤ家に仕える義務を持つ。お前のした事は私を敵に回すことだった 』

「なんだと!? 」

『だが私はそれでもお前を止めなかった。お前を止めようとする者たちが止められるかを見極める為に。 だがそれは叶いそうになかった。それで私は姿を現した。 今私が宿るこの少年のまえに。 そしてお前が疑わぬようお前を倒そうとしていた少年を消した上でエバーフレイヤ家への義務を果そうとしていた 』

「ならなぜ殺さなかった! 」

『少年を止める必要が生じたからだ。殺すのではなく止めて助けることを選択したのだ 』

「なぜだ? 」

『それを話す義理などない。それに私との会話に集中する余裕などあるのか? 』

「なんだと? 」

『そろそろお前の部下たちを倒したお前の妻が仲間と共にくる頃ではないか 』

その途端、天井に無数の穴が開き、そこから次々と聖騎士団と救民の杖のメンバーが降りてくる。その先頭は聖騎士団団長のラミア。

「ジェラルド。あなたの計画はもうお終いよ。神話の加護をなくした今のあなたではもう私達と戦うことも逃げることもできない。 もうここで終わりにしましょう 」

「君も私を悪と見なすのか、君は私の事を一番理解してくれていたじゃないか! その君でさえ今の私を悪と見なすのか!? 」

「私は確かにあなたを理解してた。だから一緒になって戦ってあなたと結ばれた。でもあなたは変わってしまった! 私が知っているジェラルドは他人を自分の道具のようにはけして扱わない人だった! あなたは復讐の為に変わってしまった。私の愛したジェラルドはもう遠い昔に消え去ってしまった! 」

ラミアはその手に持つ槍を握り締める。

「私はあなたを愛した。理解したつもりでいた。だけど私ではあなたの復讐の感情をあなたの心の傷を癒せなかった。あなたの気持ちを気づけなかった。だからこの結末を招いた責任は私がとる。 私があなたを殺す 」

ラミアは右手に持つ槍。グングニルの槍先をジェラルドに向ける。

「さようなら、ジェラルド 」

突き出されたグングニルはジェラルドが構えたヌアダの剣を砕き容赦なくジェラルドの体を突き抜け背中まで抜けた。

死に纏わる伝承につながるグングニルの特性によって刺さった箇所から強烈な勢いで老化が始まっていく。

すでに体の4分の3以上が老化しているジェラルドの口が僅かに動いた。しゃがれて途切れ途切れだかジェラルドはこう言い残したのだ。

『ラミア、すまん 』

それがエバーフレイヤ家当主であり魔術結社『タラニス』のリーダであったジェラルドの残した最後の言葉となった。

ついに全身が老化し、干からびたミイラのようななったジェラルドの体は次の瞬間には砂となり空中を流れていく。

それを漠然と眺める護の服の裾をだれかが引いた。

引いたのは、クリスだった。

十字架から解放された時のままの微妙にあちこちを強調した儀式めいた服装のままクリスは護に飛びついた。

「!? ちょ、ちょっと! 」

「ありがとう護くん! 私なんかの為に傷つきながら戦い続けてくれたんだよね? 本当にありがとう! 私、どうやってこの恩を返せば良いか迷っちゃうぐらいなのよ? 」

年頃の男子にとって異性からのこういったアプローチは強烈なことこのうえない。護ももちろん例外ではなく一瞬完全に硬直状態に陥ってしまったが、いそいで話題を変えることでなんとかそれから脱出した。

「でも、僕はクリスの父さんを結果的には殺すきっかけを作った。 いくら悪人だったとしてもあの人はクリスの肉親だった。ごめんクリス 」

「いいの......護くん。 私は確かに父さんを尊敬してたし、父親として愛していたわ。父さんも私を愛してくれていたと思う。でも父さんは私を計画の為に利用しようした。 それは悪い事でしかないわ。 だがら父さんがいなくなるのは寂しいけど私は護くんを憎んだりはしない 」

「ごめん.......そういえばどうするんだ? 僕たちは学園都市に戻ればおそらく『ウォール』としてまた活動することになるけどクリスはもう暗部組織用員となる必要はないはずだろ? 」

護は一体化したルーからクリスが学園都市暗部に入った理由を知らされていた。

父親であるジェラルドの影響下からクリスを逃がす為に学園都市と交渉したラミアに学園都市から亡命の条件として暗部の人間になることがあったのだ。

「私は、これからも護くんや仲間と一緒に『ウォール』の一員として一緒に戦うつもりよ。 だって仲間だもの 」

「本当それで良いの? 」

「うん 」

「ありがとう........ じゃあ、戻ろう。 僕達『ウォール』のあるべき場所へ! 」

護の言葉に、高杉と美希は拳を上げて応えクリスは大きく頷き立ち上がる。

その後、旅館で療養していた哀歌とも合流し、再びアイルランドに戻った護たちは残り1日しかない退座期間の中でクリスやラミアの案内でやっと旅行を満喫することができた。

そして出発の日、空港で護たちは思わぬ同伴者がいることを知る。

「セルティが学園都市に!? 」

「ええ、あの子あっての希望なの。後は私としての都合もあるのだけど 」

そう申し訳なさそうに言うラミア。

「ここアイルランドで母さんと一緒に暮らすのは私が吸血鬼である以上難しいの。 私は迷惑かけたくないからどこか十字教の影響が少ないところに行きたいんだけど、どうせ逃げるなら姉さんと一緒のところが良いの 」

「それで学園都市とコンタクトをとって許可されたのよ。特例としてね、その代償は暗部に入ること。その暗部組織の名は『ウォール』。向こうから直々に指定されたわ。あなたたちってあの街のトップから気にいられてるのかしら? 」

「じゃあ、セルティは僕達『ウォール』のメンバーとなって学園都市に来るんだね。 なんか女子の比率の方が大きくなってきているような...... 」

そんな護の呟きは誰にも聞こえることなく、ウォールは新しいメンバーを抱えて学園都市に戻ることとなった。

この先、自分たちをまつさらなる騒乱をこの時、護たちは知るよしも無かった。
<章=第三十三話 とある戦の最終決着>


吸血鬼。 その存在は空想上の存在とされていたが現在魔術サイドでは実在するものとして認識されている。ある特異能力『吸血殺し(ディープブラッド)』の存在が確認された事により。

「で、それで......その能力をもつ人がなんでこの街にいるっていうんですか? 」

作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン