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とある世界の重力掌握

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護がなにか言う前に絹旗は近くにあった輸送用の大型トラックを軽々と片手で持ち上げ護に向けて投げつけて来た。

「避けられない.....! 」重力を操作し、とっさにトラックを真上からかけた重力により地面にめり込まさせる護だったが次の瞬間には距離を詰めた絹旗の右拳が腹にめり込む。

「!? 」

「これでうちのリーダより上とは超片腹痛いですね 」

「いや......まだ全力なんて一言も言っていないよ......」

護は右手を重力によって加速させ、弾丸のようなスピードの一撃を絹旗に向けて繰り出す。

自動防衛機能により、護の拳は装甲に防がれるが勢いは殺せず、絹旗は一気に後方に5メートルほど飛ばされ施設の壁をぶち抜いて吹き飛んだ。

「君の能力は防御に特化しているはず.....この程度じゃ死なないだろうけど、衝撃までは防げないはずだよね? 」

大穴が開いた壁の向こう側から出てきた絹旗に目立った外傷はない。

「なるほど、伊達にレベル5を名乗ってるわけじゃないのは超理解しました.......ですがこの程度じゃわたしは超倒せないですよ? 」

「分かってる.......いや、殺すことはできてしまうかもしれないけど僕はしたくない。特に君のような大切な人を殺すことは 」

「な.......! なにを超クサイ台詞言ってるんですか!? 」

「そのままで受け取ってもらえば良いよ。言ったとおり、僕は君を殺したくない。だから、すこし大人しくしてもらうよ 」

護の言葉になんらかのアクションを予想し身構える絹旗。だか次に護がとった行動は絹旗の予測を大きく裏切った。

「緋炎之護 」

護が呟くと同時にその右手に緋色の十文字槍をが握られる。

「な! そんなの超ありなんですか!? 複数の能力を...... 」

「第弐の技、緋炎斬波! 」掛け声と共に振るわれる護の槍から緋色の炎が波になって放たれる。絹旗の足元へ。

絹旗のわずか前方の地面を緋炎が地層ごと切り裂き彼女の足場を不安定にさせる。

ふらつく絹旗は次の瞬間、眼を見開いた。目の前に護がいたからだ。

「第参の技、緋球爆散! 」

その言葉と共に、至近距離で突如現出した緋色の球体が炸裂し凄まじい衝撃波に絹旗の体は宙高く舞い上がった。

「超どうなって.......! 」

なかば混乱ぎみの絹旗は直後に、わき腹に痛みを感じた、首を下げて見てみると槍の下にある石突が衝かれている。

「言ったろ、殺したくはないって。だから今は眠ってくれ。僕の大事なレベル4 」

窒素装甲の防備でも防ぎきれなかった一撃は容赦なく絹旗の意識を奪った。力を失う絹旗の体を抱え、護は重力操作により地面に降り立つ。

「ふ?......我ながらクサイ台詞吐いちゃったな.....どうやらこの槍を使うと言動にも影響がでるっぽいぞ 」

ため息をついた護は自分の腕に抱かれる絹旗を見る。こうして見ると絹旗はただのか弱い女の子にしか見えない。

だがわき腹に突き刺さった石突がそんな思いを吹き飛ばす。

「この傷を治療させるには、とにかく一度アパートにもどって哀歌に見せないと......って結局仲間を巻き込んでるじゃないか.....とっさだったとはいえ、もっと力の制御をするべきだったな..... 」

嘆く護だったが後悔してももう遅い。

「仕方ない。とにかく一度戻るしかないな。破壊は後回しだ 」

絹旗を抱えたまま、護は腰にさしてある携帯で高杉を呼んだ。



そのころ脳神経応用分析所の一室では1人の少女があることを成し遂げようとしていた。

「これから、なにをするのですか? とミサカ19090号は問いかけます 」

「good question......あなたはこれから真の感情をもつのよ 」

少女の指先が目の前の機械に触れられ、巨大な集合体の1つでしたかなかった少女に向けて変革の波が放たれた。
<章=第三十五話  とある成果と強襲作戦>


「ん.....超ここはどこ..... 」

「僕ん家だけど? 」

「そう言えば......ていうか超訳わからないんですけど!? 」

「君は僕との戦いで重傷を負って意識を失ったんだ。それで僕がここで治療するために運んできたんだけど 」

「因みに治療したのは........私.....だよ 」

やはり面識のない人間に対しては途切れ途切れになる哀歌である。

「外傷を回復させる能力でも超持ってるんですか? 」

「まあ......そんなもの.....かな 」

「とにかく君を治療したけど、別に恩を着せようとしてるわけじゃない。拷問をかけようとか尋問しようとしてるわけじゃない。ただ1つだけ教えて欲しいことがあるんだ 」

「なんだってんですか? 」

「君達は.....いや、麦野沈利はいったいどこを守ってるんだ? 」

「うちのリーダーの名まで知ってるとか、あなたもしかして超こっち側の人間ですか? 」

「さあね......それじゃあ質問を変えようか.......君が施設にいたのは『御坂美琴が襲撃する可能性が高い施設の護衛』のためかい? 」

顔色を変える絹旗に護はやはりと心の中で頷いた。

「やっぱりそうか.......哀歌、ちょっとこの番号に連絡して 」

「これは? 」

「美琴の携帯の番号だよ 」

「ごめん、私の携帯の充電切らしてて.....ちょっと充電してくる 」

護が止める間もなく哀歌は(なぜか)部屋の外に飛び出していった。

「なんなんだ一体...... 」

困惑する護を見て絹旗はこっそりため息をつき呟いた。

「あの反応見て分からないなんて....第4位は超鈍すぎじゃないですか..... 」

「ん? なにか言った? 」

「別に超何も言ってませんよ? 」

「なら良いけどさ.....じゃあ治療も終わったことだし戻れば? 仲間がまってるはずだよね 」

「なぜ解放するんですか? あなたたちに利益があるとは超思えないんですけど。 私がまたあなたの前に立ち塞がって戦いを挑むかもしれないんですよ? 」

「その時はその時だよ......また同じように戦うだけだよ。ただしそちらがアイテム総出で来るのならこちらも総出で戦うよ......ウォールの全員でね 」

「やっぱりあなたも超暗部の人間でしたか 」

「そういう事、僕は全力で第3位に協力する。それがこの計画の核である第1位と戦うことに繋がったとしても 」

「あなたの決意は超結構ですけど、その前に私たちに潰されるかもしれないですよ? 」

「大丈夫 」

護は右手でグーサインをした。

「僕の仲間たちはそんなヤワじゃないよ 」

絹旗は護の眼を見つめた。濁りのない澄んだ眼をしている。 この最下層の闇にいながらどうしてそんな眼をしていられるのだろう。

「まあ、その余裕がどこから出て来るのか超理解できませんが、そういうことにしときましょう 」

絹旗は部屋の扉に手をかけつつこう呟いた。

「なんで、闇の中にいて、そんな眼をしてられるんですか....超不思議でなりません...... 」

小声だったので護は気づかず、絹旗はそのまま部屋を出ていった。
「ごめん美琴。今すぐ会えない? 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン