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とある世界の重力掌握

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「うん?まあ、後は家帰るだけだから暇といえば暇だけど...... 」

そういった瞬間、護は佐天の眼がきらりと光った....気がした。

「だったら一緒についてきてくれませんか、今日『セブンスミスト』って店で初春や御坂さんたちと会う約束してるんですけど、御坂さんたちに護さんのことを紹介したいんですよ 」

護としては今朝、美琴に追いまわされたばかりであり、あえて蛇のいる穴な飛び込むような真似は避けたいところなのだが........

「そういえば、御坂さん知りたがってましたよ。護さんが去り際に何を言ったか。どうしようかな、思い切って話しちゃおうかな 」

ぞざぁぁぁと背中を冷や汗が流れていく感触を覚える護。明らかに佐天は脅迫している。

要するに、『ついてきてくれれば、あの話は言いませんけどついてこなければ..... 』という脅迫なのだ。

「分かった、行くよ。でそのなんとかっていう店はどっちにあるの? 」

ここで断って御坂の耳にあの話が入ったらと思うと寒気がする護。ここは素直に従うしかなさそうだと観念したのだ。

「ええと、私が案内しますよ。こっちです 」

なんだかにこやかな笑顔の佐天に護は(女の子ってみんなこんな風に黒いところあんのかな?)などと全世界の少女をてきに回すような不埒なことを考えていた。

「ここが、セブンスミストですよ 」佐天とあった場所から20分もしないうちにセブンスミストについた。どんな建物かと思っていた護だったが。想像以上にでかい建物に圧倒されていた。

「ここって、デパート?」

「そうですよ?あれ、護さんは知らないんですか? 」

「僕は、まだここにきて4日だしねえ。それに過去にもこの街にいたらしいんだけど記憶がなくてね..... 」

後半は嘘であるが、確かに護は散策のときもここには寄らずにきたので、このデパートのことはさっぱり知らなかった。

「え?護さん。記憶喪失だったんですか?! 」
驚く佐天。だが次には怪訝そうな表情になった。

「でも、そう言えば私の名前は知ってましたよね? 」

うっと詰まる護。昨日のあの時、うっかり『佐天さん』と語りかけてしまったのを忘れていた。

「じゃあ、護さんと私ってどこかで知り合ったことがあるんでしょうか? 」

佐天の問いに即答できない護。知り合いといえば知り合いと呼べるかもしれないが、直接話すタイプの知り合いではなく、雑誌という媒体を通しての一方的な顔見知りというほうがあっている気がする。

「ううん.....記憶がないからよく分かんないけどそうかもね.......って向こうからやってくるの君が言ってた人たちじゃないの? 」

「あ、本当だ。初春?、御坂さん?こっちです!」

なんとか話をそらすことに成功した護だったが、一難去ってまた一難、おそらくこの後待っているであろう、質問タイムと電気姫(みさかみこと)のビリビリショーを予想して一段と冷え込む思いをする護だった。

その後、やはり初春と美琴からは質問攻めにされたが、電気ビリビリショーだけは免れた。(佐天が必死に説得してくれたことが大きい)

というわけで、護は現在、佐天や美琴たちとは離れて、書店に入っている。佐天たちは向かいの服屋で品定めをしている。

「ねえ、初春?なんで、ジャジメントのワッペン付けてるわけ? 」

「最近、ちょっと事件があって警戒してるからですよ 」

「ふーん....仕事熱心だねえ......でもせめてここに来た時ぐらいゆったりしなさいよ!」「ああ!佐天さん、何するんですか、ワッペン返してください!」

ほのぼのとしていていいなと感じる護だったが直前に、ふと違和感を感じた。

(まてよ.....このメンツでデパートでってなんか覚えがある場面だぞ......まてよ、たしか初春が狙われた時は『セブンスミスト』にいるとき........)

その時だった、プルルルル!と携帯の着信音が前方から聞こえてきた。ここからでは誰の携帯が鳴ったのかは分からない。だが護には確信めいたものがあった。いまこの状況でかかってくるとすれば.......それは黒子からの初春への電話だ。

「どうした。だれからの電話だったんだ。」書店から出てきた護の質問に初春は緊張した面持ちを向ける。

「落ち付いて聞いてください。実はここ最近、あちらこちらで爆発事件が起きてるんです。そして今、このアパート内に犯人がいる可能性があります。だからお客さんたちを外に避難誘導しなきゃなりません。佐合さんは外に避難を、御坂さん、護さん、誘導を手伝っていただけませんか?」

「ちょっとまってよ。せっかくだから佐天さんにも手伝ってもらおう 」

護の思わぬ言葉に3人は戸惑った表情を見せる。

「ほんとは佐天さんも初春さんの手助けしたいいんじゃないのか?自分には素直が一番だよ? 」

嬉しそうにうなずく佐天。だが初春は首を振った。

「万が一の時に、民間人である佐天さんが巻き込まれたら大変なんです。あきらめてもらうしか.....


「じゃあ、僕が一緒に付いているってのはどう? 僕の能力『重力掌握』ならたぶん爆発が起こっても佐天さんを守れると思うけど? 」

この言葉に初春はしばらく悩むそぶりを見せたが、けっきょく了解した。

「じゃあ、みんなで手分けしてお客さんを誘導しよう。」そういうわけであちこちで手分けしてお客さんの避難誘導を行うこと15分ほどで、大体の客は外に避難が完了した。

(しかし.....まだどこかにいるはずだ.....たしか、あのウラナリは女の子にカエルの人形を渡して、それを爆弾として利用して、初春を爆死させようとしていたはず......なら今は初春のところに向かわなきゃな.......)

今、もっとも危険なのは初春だ、なんだか上条さんも見かけなかったし(学校で補習うけていたから当たり前なのだが)やけに連続虚空爆破事件が起きるのも早い。

(僕が原作に介入したことで、少しずつ本来の話とのずれが出てきているってことか........)

護は後ろで残っているお客がいないかの確認をしている佐天のほうに向きなおった。

「佐天さん。ちょっと気になることがあるから初春さんのところに行ってくる。そこを動かないで確認を続けてて!」

「わかりました。任せてください!」

なんだかやる気満々な佐天に安堵しながら、護は広い通路を初春がいるであろう地点へと急いだ。

「おにいちゃんがこれをお姉ちゃんにこれを渡してって。」

護が初春を見つけた時、ちょうど女の子が初春にカエル人形を渡そうとしている時だった。

「初春さん!それを受け取っちゃいけない!それが爆弾だ!」

護の叫びに驚き、人形をあわてて子供から取り上げ、放り投げる初春。その人形がゆがみ、爆発が起きようとする。

「くそ!間に合わない! 」いまからイメージしては時間が足りない。このままでは初春は爆死してしまう。

「くそお!!」

もはや、絶望か、そう思ったその時、ビュン!!という空気を切り裂く音とともにオレンジ色の光線が人形を貫き、粉々にした。

「これは.......超電磁砲(レールガン)!? 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン