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とある世界の重力掌握

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「危機一髪だったわね、大丈夫?初春さん 」

おかしい.....と護の本能が告げていた。これで終わるはずがない......と、本来美琴に起こるはずだったイレギュラーな事態は起きなかった。本来ならあそこで美琴はコインを落としてレールガンを撃てなかったはずなのだ。

(いったい、なにが引っかかってるんだ?)そこが分からない護はとりあえず周りを見渡してみて、そしてはっと気づいた。

(あのウラナリは風紀委員をターゲットにしてる。初春は今、風紀委員のワッペンをしていないのに狙われた。ということは奴はそとから初春をつけてたってことだ......そして女の子に人形を渡して行かせたってことは中にもいたはず......その時にもし、佐天さんが避難誘導をしているところを見て、彼女も風紀委員だと認識していたら.......)

「御坂さん。初春さんとこの子を連れてはやく外に避難してください。それから外の路地裏でぶつぶつ言いながら歩いているウラナリメガネ男を探してください。ぼくはちょっと用事があるんで失礼します! 」

「ちょっとあんた、何言って....... 」美琴が何か言う前に全力でダッシュし佐天さんのもとに向かう護。

(僕が馬鹿だった......昨日、この世界を自分の現実にすると決めておきながら、まだ元の世界の知識に頼って、完全にこちらの世界を受け入れていなかったんだ。その結果がこれだ.......絶対に佐天さんは死なせない!)決意を胸に護は通路を走っていく。

「ふう......もうさすがに逃げ遅れた人はいないよね。にしても護さん遅いなあ。自分から私を守るっていったくせに....... 」

ぶうぶう言いながらも護を待つ佐天。その前方にある非常階段から男の子がてくてくと出てきた。

「おねえちゃん。 」

前から聞こえた声に顔を上げる佐天は、こちらに大きな猫の人形を持って走り寄ってくる男の子を見つけた。

「あれ、まだ逃げ遅れた子がいたんだ......ボク、そうしたの?迷子?」

「ううん。あのねメガネのお兄ちゃんがこれをお姉ちゃんに渡してくれって 」

男の子が差し出した人形を佐天が取ろうとした瞬間だった。

「とっちゃだめだ!佐天さん!」突如響いた護の声に思わず人形から手を話す佐天。その人形はふわりと空中に浮かんだと思ったらすさまじい速度で後ろにすっ飛んで行く、その先に立ち右手で人形をつかんだのは......

「護....さん.... 」

「ごめんね、守るはずだったのがこんな目に会わせちゃって。でも大丈夫。責任は僕が負う。こいつは僕が何とかしてみる。だから佐天ははやく逃げろ。」

「いやですよ!なんですかその死亡フラグみたいな言い方は!やめてください!」

佐天は自分が死ぬことになろうともここに残るつもりだった。自分に力がないからこの事態に何も出来なくて人が死ぬなんて、佐天はいやだった。だが.........

「え?...... 」気づいた時には佐天は子供を抱いたまま非常階段のところまで流されていた。

「ほんとにごめん、佐天さん。でも僕は......君だけには傷ついてほしくなかった。そのために僕が傷ついても君だけは......じゃあ、またあとでね。」護は横に設置されているシャッターの開閉ボタンを押す。

護と、佐天を隔てる厚いシャッターは佐天の叫びもむなしく間をふさいだ。

その日、セブンスミストは爆破された。だがその効果はひとフロアだけにとどまり全壊だころか半壊にもならなかった。

救助隊により佐天は救出された、だが佐天が供述したフロアに残った少年、古門 護は発見されなかった。

護は忽然とセブンスミストより姿を消したのだった。
<章=第七話 命名決定と連続虚空爆破(グラビトン)>


護は、あれはてた廃墟に佇んでいた。ここになぜいるのかを護は知っていた。

向こうから、化け物達が迫ってくるのが見える。その後ろには、兵隊達まで。

佇む護の横に立つ少女はいう。

『自分にはどうしても出来なかった 』

護がなにかをいう前に、少女は黒い空をバックに飛び上がる。

止めようと必死に伸ばす手を少女は、届くのに握らなかった。

そして、敵の群れに正面から突っ込む直前、護の方にゆっくり振り返り言った。

いつもと同じ、悲しげな微笑みを浮かべながら、こう言った。

「忘れないで、生きていればかならずまた会える。だから、私のこと忘れないで 」

止める間も無かった。

彼女は、敵の群れに正面から突っ込み、そして.........護の意識はそこで途切れた。


「う........ここは......? 」護の眼に最初に入ったのは、天井に無数に張り巡らされたパイプ。

「いったい........僕は.......... 」

セブンスミストで佐天を無理やり逃がし、爆発物である人形を真上からからかけたGで覆うように地面に押さえ込んだ護だったが、いきなり力を使い過ぎた反動か.........

頭を激痛が走り、力のイメージを最後まで保てず、結果的に僅かながら爆発エネルギーを逃してしまい、その時のエネルギーをモロにくらった護は吹き飛ばされ意識を失った。

そして、気がついたらここにいる。暗くて不気味な部屋。体を起こし見渡してみて、この部屋がなんなのかを理解する護。

「ここは.......そうだ。だけどどうして....... 」

「興味深いな。ここの事も知っているのか、少年」

広い空間全体に均等に広がるような声。その声を放ったのは.......

「学園都市、統括理事長.......アレイスター・クロウリー...... 」

「ほう、やはり知っているか........さすがは『異世界』の人間だよ護くん 」

アレイスターの言葉に護は思わず身を震わせた。

「私が君の存在に気づいていないとでも、思っていたのかね。分かっていたさ、君が最初に現れた時から今まで私は君を見ていた」

護はすっかり失念していた。この世界に入り込んだ不確定要素を、アレイスターが放っておくはずがなかった。

「プランの障害になる可能性がある僕を、消すつもりなんですか」

護の言葉に、アレイスターは苦笑したようだった、すこし含み笑いの入った口調で続けた。

「それなら、わざわざ君をここには呼ばない。暗部組織に君を殺させてたよ。ましてやレベル5になど任命しない。」

「じゃあ、何故!」

「魔術、この言葉を君は知っているはずだ」

護の中で時が止まった。

「いや、悪いけど知らないです」

「嘘は良くない」

即座に否定された護。だが、そこで折れる護ではない。

「なにを、根拠に魔術を知ってるというんですか!」

「土御門..........彼の名を見たときの反応は、面白かった。 」

「さらに、君は意識していたか知らないが『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。これついても君はなにか知っている素振りを見せている。それが根拠だ」

護は自分の能天気さを呪った。あまりにも不用心すぎた、だがアレイスターは何をさせるつもりなのだれう。

「納得して、もらえたかな?」

護はかなわない事を悟った。
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン