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とある世界の重力掌握

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「ふう........面白いことを言うんだねそのお医者さんは。でもそれは違........」

「それで間違ってはいないのではないか少年 」

突然割り込んできた声に護は全身の筋肉が急激に萎縮する感覚を覚えた。

忘れもしないこの声。今回護が一切刃が立たなかった相手。

錬金術師アウレオルス=イザ―トの声だ。

「そんなに恐れることはない。もう私に黄金練成(アルス=マグナ)は使えん。今は少年の敵ではない 」

「え.......? なんで? 」

「私の黄金練成(アルス=マグナ)は、三沢塾の2000人の生徒を操り、 一斉に詠唱させることで作業効率を極端に引き上げ、僅か半日で発動させたものだ。よってそれら全てを放棄した私には使えんのだ。やろうとすれば100年単位の時間が必要になってしまう 」

護はこんな展開を予測してはいなかった。もしアウレオルスが敵でなくなるのなら確かにありがたい話ではあるのだが、この事象が作品にどんな影響を与えるかは計り知れない。

「あなたはどうして上条の説得に応じたんです?あれだけショックを受け自暴自棄になっていたと言うのに....... 」

「思い出されたのだ。私が彼女のパートナーだったときに願ったことを。私は本来なら彼女が救われたことを素直に喜ぶべきだったのだ。だが自分のしてきたことが全て無にされた感覚に呑まれてしまい........君達を攻撃してしまった。君の言葉は胸に突き刺さった。あの言葉で私は正気に戻れたのだ。感謝する少年 」

アウレオルスの意外な言葉に護は気恥ずかしそうに手を振った。

「そんなに褒めないで下さいよ....... 」

「ところで護さん。今の会話聞いてる限りやっぱり私に内緒で戦ってるんですね? 」

佐天がいることをうっかり忘れて喋ってしまったことに今更気付いた護の額から嫌な汗が流れる。

「仕方ないわね護くんは。でもそんなところも含めてウォールリーダー足り得てると思うけど 」

その女声を聞いて護は思わずカーテンで仕切られている向こう側を凝視した。

「そこにいるのは、クリス? 」

「大正解よ、護くん。いやウォールリーダー 」

護の目の前で向こうからカーテンが開いていきその先にウォール構成員にして学園都市最強の念動力者。クリス・エバーフレイヤ。

「良かった......無事だったんだねクリス 」

「お医者の先生によるとかなり危なかったみたいだけどなんとか大丈夫。でもしばらくは活動は無理みたい 」

「そうか......まあ、アイルランドからこのかた無理してばっかりだったからね.........ここは無理せずゆっくり休んだ方が良いかもね 」

「心配してくれてありがとう。ところで護くん.........またその子の前で自分の秘密を話しちゃってるけど意識してる? 」

ん?と後ろを振り返った護はとても不機嫌になっている佐天さんを視界にとらえた。

「佐天さん? 」

「ここまで暴露しちゃった以上素直に認めた方が良いよ思うよ? 」

無責任に煽るクリスにそれでも暗部の人間か!と怒鳴りつけたくなる護だったが、たしかに事態がここまで来てしまった以上全部ウソだと言う手は使えないだろうと判断するしかなかった。

「はあ......佐天さん、黙っていてごめん。お医者さんが君に話したことは全部本当だよ 」

「どうして黙ってたんですか 」

「それを言ったら佐天さんを危険にさらせてしまうと思ったからだよ。それに裏側の闇で活動することになった僕に佐天さんが関わって同じ闇に呑まれないようにしたかったから     」

「事情も分からずただ待っているのも辛いんですよ! 」

そう言われて護は、原作の中で美琴が重傷の上条に放った言葉を思い出した。

『人がどういう気持ちでアンタを待っているのか、そいつを一度でも味わってみなさい!病院のベッドに寝っ転がって、安全地帯で見ていることしかできない者の気持ちを味わってみなさい! 』

その言葉はまさしく今の佐天さんの心境を端的にあらわしているように護は感じた。

「そう......だよね。今までごめん佐天さん 」

「もうそれは良いですよ護さん。ただ一つお願いしても良いですか? 」

「なに? 」

「護さんの手助けをさせてもらえないですか? 」

その言葉に護とクリスはほぼ同時に聞き返してしまった。

「「いま、なんと? 」」

「護さんの手助けをさしてもらえないかと聞いたんですけど」

「ええと.......それはつまり.......」

「護さんが率いている組織の一員となって手助けしたいということなんですけど 」

ストレート過ぎる返答に護は思わずクリスと顔を見合わせた。

「それについてはすぐに答えられない。仲間とも話合わないといけないから1週間だけ待ってくれる? 検討はするから 」

護の言葉に若干不満そうな佐天だったが一応頷いたので護は深く安堵した。

その後、今度は初春や美琴と共に見舞いに来るといって佐天は帰っていき、護とクリスはお互いベットの上に横たわりながら今後について語り合うことになった。

「護くんとしてはどうしたいのよ彼女のこと 」

「僕はできればあの人を危険な目にあわせたくはない。でもここまで知られちゃった以上佐天さんはこの件に関しては一切退かないかもしれない 」

「それだけじゃないわ。私達ウォールの敵対組織が佐天さんと私達のつながりに気づけば彼女を狙う可能性がある。これは彼女を強引にでも私達のメンバーにして守るしかないんじゃない? 」

「とは言っても暗部に佐天さんを入れるのは........それに佐天さんを枷として利用しているアレイスターが許可するかどうか........ 」

「それだったらあえて表向きは暗部ではなくすれば良いんじゃないかな 」

「え? 」

「それについては私から話そう少年 」

いままで黙って2人の会話を聞いていたアウレオルスが口を開いた。

「今現時点で私はローマ正教を敵に回しているため迂闊にローマ勢力圏の中を動けない。同じように君達が倒した私の協力者だった少女.........火野咲耶も同じく事情は良く分からないが今はこの街にいる必要があるそうだ。そこで提案なのだが..........その佐天という子と私に火野咲耶を合わせた別動班を作ったらどうだろうか? 」

アウレオルスの意外な提案に護は驚いた。

「今の私は黄金練成こそ扱えないが私のダミーが使っていた瞬間錬金(リメン=マグナ)などの通常の錬金術は扱える。火野咲耶という少女の実力については君が一番知っているはずだ。我々なら君の言う少女を守りつつ別動班として動くことができると思うのだが 」

「なんで僕達と戦ったあなたが協力しようと思ったんです? 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン