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とある世界の重力掌握

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その言葉に哀歌はようやく納得がいった。

衛から携帯でその可能性があることを伝えられていたからである。

「どうするの?私としては早くこの役目を終わらせたいんだけど 」

ついに倒れる哀歌の前に立った鞘は変化させた2ふりの髪刀をその喉元に突きつける。

「どうするの?チェックメイトだけど 」

「ふ......それはどうかしらね? 」

「?どういうつもりか分からないんだけど 」

「あなたは大事な事を忘れてる......あなたは個人として戦っている。だけど私たちウォールは集団よ? これが意味することが分からない? 」

「まさか...... 」

その言葉に周囲に警戒の視線を走らせる鞘。

その時目の前にいたずの哀歌の姿が消えた。

いや、正確には消えたのではなく周囲を突然覆った暗闇に包まれたのだ。

「笑止.......散々、弄んでくれたじゃん統括理事の犬 」

その暗闇の中から滲むように人影が現れる。

真紅の長髪に真紅の瞳、要所にプロテクターを取り付けた防刃防弾スーツを着るその少女の名は..........

「私と互角だったあの子を、あんた程度にやられるのは嫌なのよね?とにかく暫くここでつきあってもらうわ。言っとくけど断るのはなしね。もし断ったら........ 」

轟!と彼女の右手を覆う装甲腕の周囲を炎が覆う。

通常の炎とは違う真紅の炎。

その光景に額に汗を流す鞘に向けて咲耶は言葉を投げかける。

「この火野咲耶が燃焼させちゃうぞ? 」

闇は既になく、2人がたつのは真っ白な空間。

その無の空間で少女と少女の短く長い戦いが始まった。
<章=第五十一話 とある組織の前哨戦>


「本当に良いのか? 」

「咲耶が援護に向かったそうだし、何とかなると信じるよ。敵に回せば彼女は恐ろしいけど味方としては哀歌と同等の実力者だからね 」

そんな会話をしながら護と高杉は上条が来るだろう場所に向かっていた。

その場所とは常盤台中学女子寮。

原作で上条が大勢の妹達(シスターズ)と遭遇したあと、事実を確かめようと美琴に会う為に来るのがここだった。

正直なところ護としては、どのタイミングで上条と再び合流すべきか迷った。

ミサカ10031号が一方通行(アクセラレータ)に殺されるのを本当のことを言えば止めたいと思っていたからだ。

だが今までの先例から、作品の根幹の出来事に介入してしまえばその先が本来と違う結末になりかねないことは分かっている。

よって考えた末に護がとった決断はあえて10031号と一方通行との戦闘は見過ごし10032号、及び美琴、上条の保護を優先するというものだった。

「時にリーダー。上条当麻........あいつが計画を止める鍵になると言っていたが、本当にあの第1位を倒せるのか? あいつにはリーダーでも敵わなかったんだろ? 確かに奴の右腕の特殊性は凄まじいが、それ以上に第1位の能力もヤバイもんだぜ? 」

「確かに第1位.......アクセラレータは強い。でも上条ならやってくれる。あいつの力は異能の力に対してはそれがどんな強力な力でも打ち勝てる可能性を秘めてる。僕は上条にかけるよ 」

「まあリーダーがそう言うんならこれ以上俺は言わんけどな........お、あれ上条じゃねえか? 」

高杉の言葉に付近を見渡す護の目に向こうから女子寮を目指して歩いて来る上条の姿が映った。

「上条! 」

「お前、護か? そちらは高杉........なんでお前らがここに? 」

「ちょっとな.......上条を待ってたんだ。今上条が巻きこまれている出来事に僕達も関わっているから 」

「! どういうことだよ! 」

「上条は会ったんだろ大勢の美琴の妹達に、そして見たんだろ血塗れになって路上に横たわる妹達の1人の死体を 」

「なんでそれを? 」

「僕には未来が少しわかる。だから知ってるんだよ。上条、それについては後で話す。今は落ち着いて僕の話を聞いて欲しい 」

「話? なんの話だよ? 」

「あの大勢の妹達と美琴との関係だよ。そしてその妹達が巻き込まれている悲劇について 」

その後の数分間で護は上条に全てを話した。

妹達のこと、アクセラレータのこと、美琴がやろうとしていること、それらを聞いた上条は首を捻った。

「信じられねえ.......大体クローンの製造なんて法律違反だろ? だったら理事会なんかに報告しちまえば........ 」

「馬鹿かお前は。常にこのまちは衛星で監視されてんだぞ? 統括理事会も黙認してんだよ 」

高杉の言葉に納得がいかない様子の上条を見て護はここは原作通り行くしかないと判断した。

護は拠点から持ってきていた常盤台中学女子寮の地図 (SASからの支給品)を高杉に見せつついった。

「高杉、この女子寮の構造は大体分かるよな? この部屋に僕達を瞬間移動させてくれ 」



「正直、護さんがいなかったらその類人猿をぶん殴ってやろうかと思いましたの 」

「ごめん。にしても会うのは久しぶりだね白井さん 」

「ええ多分、始めてあった時からまったく顔を合わせていなかったと思いますわよ。ところでいったい何の用事でこんなところに瞬間移動してきましたの? 」

白井の問いに護は即答した。

「ちょっと美琴のベット下のガサ入れにね 」

はあ?という顔を白井がした時階段を上がってくる音が聞こえてきた。

「マズイですわよ!寮監が上がってまいりましたの! 」

「だったら僕と上条はベットの下に隠れてるよ。さあ上条早く! 」

「ちょ.....護? 」

半ば強引に狭い美琴のベット下に上条を入れ自分も入り込む。

こうして野郎2人が乙女のベット下に潜むというシュールな光景が出来上がったがそれを作り出した本人にしてみれば真面目な行為である。

『てめえ護......なに考えてんだよ?』

『静かにするんだ上条。えっと確かこの辺りに......これだ! 』

小声で話しながら護が差し出したのは一枚の紙と地図、そこには護や上条が巻きこまれている計画について記されている。

『............これは.......この地図の中に書き込まれている印は何なんだ? 』

『それは......美琴が計画の妨害の為に潰そうとした施設の場所だよ 』

『じゃあ本当にビリビリは.... 』

『ああ、彼女は計画に巻き込まれてる。というか計画の発端となったのが彼女だ。そして事態は美琴1人がどうにかできるレベルをとうに越えてしまってる。だから彼女は最後の手段を取って計画を潰そうとしてる。上条にはそれを止めて欲しい 』

『最後の手段........おい、まさかそれって....... 』

『ああ、最悪な結末に繋がる方法だよ美琴がやろうとしてることはね 』

護の言葉に黙り込む上条。彼に取ってこれはかなり重い問題であるはずである。

だが上条は頷いた。

『俺の幻想殺しでどうにかできるならいくらでも協力するぜ。だけど護、なんでお前自身はいかないんだ? 』
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン