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とある世界の重力掌握

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そんな会話をする護は少し緊張していた。その理由は初春の表情である。 彼女の表情にはなにか疑念の色が浮かんでいるように護には思えていた。

実際の所、初春は護に対して疑問を抱いていた。当初、彼に対しては『佐天さんと親しい上級生のレベル5』程度の認識しか彼女は持っていなかった。

だが、その後に起きたいくつかの事件を経て初春は護の正体がなんなのか気になりだしていた。

たとえば、グラビトン事件の後の初春の腕をもってしても探し出すことができなかった謎の失踪。木山が引き起こした幻想御手(レベルアッパー)事件での突然の護の介入と同時に発生した警備員(ジャッジメント)派遣部隊の壊滅。
そしてたびたび護の消息が掴めなくなること。これらの疑念材料から初春は護がなにか秘密を隠していると判断していた。同時にそれが佐天にとって危ないことであれば力づくでもそれから離れさせる心づもりでもあった。

「とにかくあんまり大したおもてなしはできないけど。とりあえずお菓子とかは用意しといたから自由に食べて 」

そう勧める護だが初春は少しも手をつけず、すっと席をたつと護の方を見た。

「すいません。すこし2人だけで話がしたいんですけど良いですか? 」

その言葉に、初春が何を言おうとしているのかだいたい予想ができた護は目だけで動こうと席を立ちかけていたアウレオルスと咲耶を制し、初春の言葉に頷いて席を立った。

2人で別室に向う護と初春を見て、首をかしげる佐天と対照的にアウレオルスと咲耶はたがいに顔を見合わせて肩をすくめた。


「突然こんなこと言ってすいません..........でも聞きたいんです、護さんは誰なんですか?」

初春のストレートな問いに護は内心苦笑しながら、それでも表には出さず答えた。

「誰って.........僕は僕だよ。学園都市レベル5の第4位で高校1年の男だよ? 」

「そういう意味で聞いたんじゃありません............私が聞きたいのは護さんの裏側の姿です 」

その言葉に、もしや気付いているのか?という疑念を抱いた護はそれでも平静を装い言葉を返した。

「.............なんのことかな? 」

「誤魔化さないでください。私は護さんが行方不明になっていた時から調べてたんです、その後の幻想御手事件の時もずっと..............そうしたら.........」

初春は唐突に制服のポケットから1枚の写真を取り出した。どこかに設置されていた監視カメラからかあるいは学園都市製の衛星からだろうか、幻想御手事件の終幕の地となった高架道路が映されている。

別にそれ自体は問題にはならない。だが、問題はそこに背中に羽を生やした状態で剣を振るう少女、哀歌の姿が写りこんでいること、そしてその近くの高架へと昇るための階段の位置に護の姿が写っていたことだっった。

「この写真をどう説明するつもりなんですか?これを見ると翼を生やした女の子に護さんが呼びかけているようにも見えるんですけど............すぐにデータが削除されてしまったのでこれしか写真は入手できなかったけど、これについてなにか言い訳があるんですか? 」

さすがにこれは誤魔化しきれない。そう護は思った。こういった映像や写真はアレイスターらの情報統制によりそのほとんどが削除されていたはずだが、それらを掻い潜ってこの写真を入手したのはさすが初春と言えるだろう。

「.................確かにこの写真に写っている女の子とは知り合いだよ。彼女の名は竜崎哀歌。この街の能力者の1人で能力名は『人外変化』。肉体変化(メタモルフォーゼ)系のレベル4だよ 」

「そのあたりは私も調べて知っています。でもなんでその人がこの場にいたんですか? 」

「..................もうこうなったら仕方ないか!全部話すよ初春さん。この場に哀歌がいたのは僕が君を助けるよう彼女に依頼したからだ 」

「え........? 」

虚を突かれた表情になる初春に構わず護が言葉を続けようとしたその時だった。

部屋をノックもせず、咲耶が蒼白な表情をして入ってきた。

「!どうしたんだ? 」

「連絡があった...........『宝珠は砕けた』だって 」

その言葉に表情を硬くした護は、いまだ呆然としている初春に手を合わせて言った。

「ごめん。また後日しっかり全てを話すから今日は勘弁してほしい。あと............僕について調べていたのなら大体分かっているとは思うけど.............自分が風紀委員(ジャッジメント)であることを認識したうえでもう1度よく考えてほしい 」

そう言って部屋を護が去った後も、初春はしばし無言で考え込んでいた。


「.............ということは古参メンバーが哀歌を除いて壊滅ってことなんだね? 」

「そういうことになる..............どうするの? 」

「とにかく今から拠点(そちら)に咲耶を連れて向うよ 」

哀歌との通話を終え携帯をポケットに入れた護は、後ろについてきている咲耶を振り返った。

「人造神計画..............君を生みだし、そして君が止めようとした計画が動き出したみたいだよ 」

「はい............ごめんなさい............」

「なんで君が謝るんだよ? 」

「私が初めての成功体となったからあの人たちはきっと味をしめて計画を続けたんです............私さえいなければ.......」

「さすがに自虐すぎるよそれは.........悪いのは計画を発案した禍島っていう統括理事だよ.」

護の言葉に咲耶は首を強く振った。

「違います!あの時、彼が一緒に私を連れ出して真実を告げられた時に死を選んでいればこんなことには...........」

その言葉に護は1つ気づいたことがあった。

「今、彼が一緒に連れだしてって言ったよね?その彼って誰? 」

「それは.............」

言葉に詰まる彼女になにか隠したいことがあるのだろうと察した護は、彼女の中の別の咲耶に問いかけることにした。

「言いにくかったら第2人格とかに話してもらえば良いんじゃない? 」

「それで良いですか..........? 分かりました 」

そう言って咲耶が目をつぶった瞬間、髪の毛がふわっと浮き上がり閃光を発したと思ったら次の瞬間には黒髪から深紅の赤髪に変っていた。

そして目を開けた咲耶の瞳は深紅の色に変っていた。彼女の持つ人格の中の1つ、俗に第2人格と呼ばれる攻撃的な2人目の咲耶へと変化したのだ。

「笑止................本人格に配慮してぇ...........私を表に出したのは『私達』を研究所から連れ出した男の名前を聞きたいからぁ?一応、私も人並みに心に傷を負ったりするんですけどぉ? 」

「だったらもう少し口調を直した方がよいと思うよ?」

呆れつつ言った護に口元を尖らせてぶーぶー文句を言った咲耶だが、彼女とて事態の深刻さが理解できぬわけではないらしく口調はそのままであるが『そのこと』について話し始めた。
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン