二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

とある世界の重力掌握

INDEX|95ページ/106ページ|

次のページ前のページ
 

「これまでの経過からしてメンバーの分散は敵に付け入る隙を与えることになりかねない..............行動するときは基本的に集合して行った方が良いだろうね..............それと敵である『人造神』が死体をベースにしていることを考えると.............通常の人間の急所や致死点はまったくの無意味になることを頭に止めて、敵を確実に..........殺す必要があると思う 」

護の言葉に、その場にいたメンバーの内、哀歌とセルティは驚いた視線を向けた。

極力人死にが出ないよう配慮し、敵すらも説得によって死なせるのを避けようとする護が明確に殺すという言葉を出したことに彼女たちは驚きを隠せなかった。

「護..........それで良いの........? 」

「敵は僕の仲間、それも昔からの中核メンバーに攻撃を仕掛けてきた。絶対に許せない...........それに仲間が囚われている以上、敵への情を捨てるくらいのことをしなければ、敵の手から高杉達を救いだすことは不可能だと思う 」

その護の言葉には、覚悟のようなものが感じられた。

実際護は、今回巻き起こるであろう騒乱で、自らの手を赤色に染めるかもしれないという予感を抱いていた。

今回はいつものように、自らの意思で敵として戦う者の命を救うような生易しいヒューマニズムは通じない。

敵を殺し、その血で両手を染め、その手で仲間を救いだす。そんな暗闇の底の者達の戦いになる。

それを護は予感していた。

護の様子に不安げな視線を向けたまま哀歌が言葉を発しようとしたその時だった。

突然、部屋のドアが開かれた。鍵をかけていたにもかかわらず、ウォールと全く縁がないはずの青髪のホテル清掃員が堂々と部屋の中に入ってきたのだ。

「あ、すんません。清掃サービスにまいりました.................連絡が行ってなかったっすかね? 」

先頭で入ってきた若い男の言葉に哀歌が眉を潜めつつも応じる。

「連絡も何も.........人がまだ中にいるのに清掃するの? それにまだ清掃を頼むほど部屋は汚れていない 」

「いやいや結構汚れてるじゃないすか」

そう言いつつ、清掃員の男は部屋に運んできた手押し車にかけてあった覆いを払ったかと思うと次の瞬間、中からトイソルジャ―...............学園都市での正式名称はF2000Rであるアサルトライフルを取り出した。

「暗部と見間違えるほどっすよ? 」

刹那、ホテルの部屋に消音機(サイレンサー)をつけた銃特有のくぐもった発砲音が響き渡った。




その時、部屋にいたメンバーは敵の攻撃に対して即座に行動を取った。

咲耶は一瞬で第2人格へと入れ替わって小規模な炎の壁を造り、希は常に持っている数珠丸の鞘から視覚できないような速度の斬撃を放って自分に迫る銃弾を斬り捨て、護は重力操作によって銃弾を跳ね返し、哀歌とセルティは被弾覚悟で偽清掃員を抑えるべく前に飛び出した。

偽清掃員に、哀歌とセルティを止められるはずがない。そうその場のだれもが思っていた。なまじ男が銃器という能力以外の力を使ったことも要因になった。護達は敵を正確に理解していなかった。

迫る哀歌とセルティに対し、男は軽く手で空を掴むような動作を見せた。

そして次の瞬間、男の手に三股に先端が分れた銛(モリ)、トライデントが握られた。

「!! 」

先に迫っていた哀歌は表情を変え、即座に腕をクロスさせ防御の態勢を作るとともに、後ろからきているセルティを強引に後ろ脚で押して後方に下げる。

次の瞬間、勢いよく突きいれられたトライデントが哀歌の竜人の者へと変化した腕とぶつかり合い火花を散らす。

そして哀歌の体が勢いよく後方に吹き飛び、壁に激しく激突し、そのまま壁を突き破り外に飛び出し落下していった。

「1人始末っと............さて、次は誰が相手してくれるんすか?」

その青い瞳を向け、ニヤニヤ笑いながら男はトライデントを一振りし、その切先を数珠丸を構える希に向けた。

「次の相手は、銃弾斬りのお姉さんに決定っと 」

ふざけた調子のまま男は、トライデントを希に向けて突きいれる。

その攻撃が彼女に当たる直前、その姿が掻き消えた。

いや、消えたのではない。希の姿は次の瞬間には男の背後にあった。

「『聖人』にして『仏』でもある私を舐めないでほしいわね 」

刹那、数珠丸の斬撃が放たれる。

「邪を祓え!数珠丸!」

その声と同時に放たれた斬撃は一撃で男の体を切り裂いた。

だが切り裂き、結果を得たはずの希の表情は浮かない。

「(手ごたえがなさすぎる.........まさか!?)」

希がとっさに体の位置を変え、首を回した瞬間だった。

真後ろから突きいれられたトライデントの3股の刃が希の左肩を貫いた。

「即座に偽装を見抜いたんすか?さすがは弾丸斬りぃ 」

先ほど切り裂かれたはずの男は相変わらずニヤニヤした笑いを浮かべながら希の後方に立っていた。

「く!」

痛みに顔を歪めながら、それでも使える右手を使って数珠丸を振るう希。

それに対し男はトライデントを引き抜いて軽く跳躍して後方に下がる。

「不思議っすか?不思議っすよね?タネを知りたいっすか? 」

「あいにくだけど..............それは君のボスに聞くとするよ。今は君を倒す! 」

相変わらず軽い調子で話す男に向けて護は、重力操作を使って一気に距離を詰め、その右こぶしを握りしめた。ちなみに護の両手はアイルランドでの戦闘の折に身につけていた『銀の両腕』で覆われている。

その手にかかる重力を操作し横向きにした上で、その強度を上げた一撃が男に向けて放たれた。

「それが重力掌握の力っすか! 」

なぜか歓喜さえ感じさせるような声と共に男はトライデントを横薙ぎに振るった。

その瞬間、突如何もないはずの空間から溢れんばかりの洪水のような勢いの水流が飛び出してきた。

「なに!? 」

護は驚愕の表情を浮かべた。何もない空間から水があふれ出してきたことに対してではない。いや、それ自体も驚きの対象ではあるが、それ以上に驚きなのが、護の重力操作により一撃が、水に包まれた途端に力を失ったことだ。

「驚くのも無理ないっすよね。これが人造神たる俺の力っす。この俺、海神(ワダツミ)湊(ミナト)の 」

ニヤニヤした軽薄な笑みを張りつけたまま再び、男、海神がトライデントを振るうと水流はうねりながら勢いを増し、護の体を一気に窓から部屋の外に押し出した。

当然ながら重力によって自然落下していく護だが、そこは重力の使い手。重量制御によってなんとか軽めに地面に着地できた護は同じく先ほど窓の外に吹き飛ばされたが無事で、機会を狙っていた哀歌を見つけた。

彼女の目線の先、ホテルの一室では、希、セルティ、咲耶らと海神が視線を向けあっていた。

そのままの状態が続くかと思われたその時、希に変化が起こった。

突然、彼女の体がふらりと揺れたかと思うと、何の前触れもなしに希は崩れるように床に倒れた。

「希さん!? 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン