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とある世界の重力掌握

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「アウレオルス...............相変わらず早起きだね。希の容体は? 」

「当然、彼女の容体は安定している。後数日安静にしておれば問題ないであろう 」

それは良かったと安堵のため息をついたところで、地下室から咲耶が上がってきた。

「あ............おはようございます護さん 」

そう遠慮気に言う彼女はどうやら主人格に戻っているようである。

「おはよう...........捕らえた人造神の............えっと海神だっけ?彼からなにか情報は取れた? 」

護の言葉に咲耶は少し困ったような表情を浮かべながら応えた。

「それなんですけど...............さっぱりなんです。変質的なまでに禍島に忠誠を誓っているようで、第2人格がどれだけ尋問しても口を割らないんです..................それに見た目がああなってるんで記憶として残る私にはちょっと耐えられなくて.............」

彼女の話によると、見た目が金髪ナイスバディの外国人女に変っている海神に、仲間を殺そうとした敵と分かっていても主人格の咲耶はその性格のせいで、それ以上我慢して傍観することができず、強引に第2人格を押しのける形で体の主導権を握ったらしい。

「まあ確かに................あの外見になっているからね................... 」

彼女が躊躇いたくなる理由が護にはよく分かる気がした。エンゼルフォールの影響で現在、この世のわずか一握りの例外を除いたほぼすべての人間の外見が入れ替わっている。

昨夜、ほぼ半壊したホテルの一室の後処理に来た工作員たちの姿に護は思わず噴き出しそうになったほどだ。

なにしろ来たメンバーの外見が、老人やら幼児やらだったのだ。

まあ、訳分からんことにその外見できっちり後片付けを終わらせたので問題はなかったのだが、正直、御使堕し(エンゼルフォール)の理屈が分からない護としては冷や汗ものだった。

一夜明けたからと言ってその状況が変わるわけでもなく、正直外に出るにも気が引ける護なのであった。


護が現在いるのはSAS事務所である。そしてSASは表向きとしては万屋、つまりは何でも屋として存在している。

万屋とは、様々な意味合いをもつが、SASは世間一般的な認識からすれば探偵会社、あるいは調査会社的な色合いを持っている。

そのため、浮気調査や噂の真偽についての依頼、行方不明者の捜索以来、場合によっては武装無能力者集団(スキルアウト)関係の依頼さえ舞い込んでくる。

主に受付と客の相談に乗るのがアウレオルス。尾行や聞き込み、内偵などを行なうのが佐天と咲耶。そして場合によって実力行使を請け負うのが咲耶である。

もっとも佐天に関しては学校生活との兼ね合いもあるため、そう頻繁に一員として働けないのであるが、現在は夏休みということもあり積極的にSASの一員して動いている。

もともと趣味が都市伝説や噂話を追求することであっただけはあり、依頼された事案に関わる各種情報の収集に佐天は非常に長けており、パソコンや電子機器を使った情報収集のプロである初春とはまた別の天才と言えるかもしれない。

また、初春のスカートを挨拶代わりにめくるというセクハラな面はあるものの、気さくで陽気で気遣いがきく佐天はSASを訪れる依頼者に好印象を与えており、店の看板娘となっていた。

そんなSASはその創設に関わる重要な関係者である護の仲間たちが囚われるという事態になったとしても、それが理由で臨時休業とすることはできない。それをしてしまえば自分達がウォールと完全な繋がりを持っていることを宣伝しているようなものだからだ。

それで、当然ながらSASは8月19日も朝から営業しているわけなのだが、その客がやってきたのは太陽が真上に昇り、そろそろ昼食の準備をするかと人々が動き出す午前11ころだった。


「ようこそ!私、佐天涙子って言います 」

「涙子さんね?初めまして。私は淡雪って言いますの 」

SASの玄関で出迎えた佐天ににっこりとした笑顔を向けたのは、純和風の着物を着た20代前半の女性だった。

髪は美しい銀髪だが、瞳は黒、顔つきもアジア系............というか日本人に近い。だがその髪は染めているという風にも見えない。 言葉遣いはお淑やかな感じでなんというか上品な感じの、気品といったものが感じられる。

同じような言葉遣いでも、とある風紀委員(ジャッジメント)の少女とはえらい違いである。

「こちらにどうぞ。すぐに担当が来ますから 」

居間の中央付近に置かれているソファーに彼女を案内した佐天は、お茶や簡単な手製ケーキなどを出して、接待する。

奥の部屋から護が出てくる。ちなみにアウレオルスは別用で現在は対応ができない状況である。

アウレオルスは元々、ローマ正教所属の隠秘記録官(カンセラリウス)という役職についていた。

隠秘記録官とは、作品中ではステイルによって魔術の使用傾向と対策を魔道書として書く仕事と語られているが、具体的にどんなものかは判明していなかった。

護達の仲間となったアウレオルスは、魔術世界の一員としての歴史が浅く、使える魔術の幅が狭いセルティなどの為に魔道書を書く作業を進めていた。

たいがい依頼がない時はアウレオルスはその作業に2階の私室で取りかかっているのである。


「失礼。代表が急用でこれないので代理として僕が担当します 」

「いえ、お気になさらなくてもよろしいですわ。アポもなしにいきなり来たのはこちらなのですから 」

そう言って頬笑みを浮かべる彼女に護と佐天も自然に表情が緩む。
   
彼女は自分の名を冬木淡雪と名乗った。本当にその名にふさわしい透き通った白い肌と銀髪を持つ彼女を若干、佐天はうらやましげな目線を向けた。

「それで、いったいどんな依頼があってここへ? 」

佐天の問いに淡雪は、その持ってきていた手提げ袋から1枚の写真を取り出し机に置いた。

「この写真の人を探していただきたいのですわ 」

彼女が置いた写真を上から覗き込むように佐天と護が覗き込む。

その写真に写っていたのは、パッと見7?8歳くらいの少女だった。はっきりって幼児の年齢である。学園都市七不思議の1つに指定されている小萌先生を(あくまで外見年齢としてだが)超える若さである。

その写真を凝視し、向かい合っている淡雪を見つめ、再び写真に目を戻し、もう一度淡雪を見つめた護は恐る恐るといった感じで問いかけた。

「あの..........この写真の女の子とどういった関係なんですか.........?」

「この子は.............私にとって絶対に会わないといけない存在なんですのよ。でも少し事情があって警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)の手を借りることはできないのですわ 」

「事情..................それは、裏側の事情ですか?」

「はい...........ここに来たのも、この万屋SASが学園都市の裏側にある組織と繋がりを持っているとお聞きしたからですわ 」
作品名:とある世界の重力掌握 作家名:ジン