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こらぼでほすと 解除14

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「おまえだって、来年の春におかんの独占をするんじゃないか? 刹那。それに、おまえは昨晩、添い寝をしてもらったんだから、遠慮しろ。」
「あれは正当な権利だ。ニールは、俺のおかんだ。」
「なんだと? 貴様だけのおかんではないっっ。」
 ニャアニャアとかしましいので、周囲は大笑いだ。はいはい、と、手を叩いてニールが止める。
「わかった。各人のMSを紹介してくれ。それなら機会均等だろ? 俺とフェルトを案内してもらう。・・・・喧嘩してないで、口を動かせ。フェルトはメインブリッジの案内な? 」
 五月蝿いので、仲裁して黙らせる。なるほど、と、ドクターも感心する。ここでも、ニールがおかんだから、差配するのはニールの権限らしい。『吉祥富貴』の年少組も同じようにいなしているから、ドクターにも見慣れた光景だ。長年、こんなことをしていれば、性質バラバラの『吉祥富貴』の年少組でも仕切れるものらしいと感心しきりだ。普通は、途中でキレるものだと思う。
「やっぱり、ニールがいると賑やかね。懐かしいわ。」
「この小競り合いがあると、ニールがいるって実感するなあ。」
 スメラギとラッセも、その光景に苦笑する。以前は、協調性皆無の子猫たちを仕切っていたから、これより酷かったが、ニールは、それもこなしていたからだ。
「おまえの以前の苦労が伺えて笑えるぜ、ママニャン。」
「こんなもんじゃなかったぞ? ハイネ。こいつら、ほっとくと武器まで持ち出して喧嘩すんだからな。」
「以前は、刹那がマイスターに相応しくない言動だったからです、ニール。」
 しれっとティエリアが口を開いている。今は、すっかりマイスター組リーダーとして大成して、ティエリアも認めているが、以前は諍いが絶えなかった。刹那が唯我独尊すぎて、抑えが効かなかったからだ。
「おまえが規則と規範しか知らなかったからだ、ティエリア。」
 もちろん、刹那も反論はする。そして、口元を歪めると、ティエリアも、ニッと笑う。今は、お互いに認めているから、以心伝心するものがある。分かり合ってしまえば、以前の諍いが些細なことだと思う。
「うん、よく、ここまで協調性が育ったもんだと、俺も感心するよ。」
 協調性が育つ前の世話をしていたニールにしてみれば、よくここまで仲良くなったもんだと感動するクラスのものらしい。
「うちでやってるのも、これと違いないな。」
「まあ、慣れてるからさ。」
 最初から、『吉祥富貴』でも仕切り役をしていたが、経験豊富だからできたことらしい。扱いづらいはずのレイや、歌姫様を手懐けたのは、スタッフでもびっくりだった。
「三蔵さんの世話ぐらいで疲れないっていうのは、あれより凄かったってことなんだな。」
「凄かったっていうより、忙しかったんだよ。ミッションもあったからさ。今は、寺のことだけだから楽っちゃー楽だ。それに、あの人の用事なんて大したことはないからな。」
「あれでか? おまえ、『あれ。』『それ。』『おい。』で片付けてるけど、結構な用事だぞ? 」
 坊主は、大概、「あれ。」とか「おい。」ぐらいで用事を頼む。それで解るから、ニールのほうは、はいはいと動いているが、かなり構い倒しているようにしかハイネには見えない。
「お茶入れてくれ、とか、晩酌の準備しろ、とかぐらいだぜ? あとは、適当。」
 多少、坊主の意図と外れていても、順々に毎日、似たようなことをしているのだから、どこかで該当する。だから、どっちも、それでイラついたりしない。該当していないことが続いたら、坊主も言葉で命じてくれるから、女房のほうも、それで解る。だから、適当なんてことになっていたりする。
「ねぇ、それってイチャコラっていうのに該当してるんじゃないの? 」
「イチャコラじゃないって。単に家政夫してるだけ。だいたい、風呂で背中を流しましょうか? ってからかっただけで殴られるんだぜ? ミス・スメラギ。それはいちゃこらじゃないだろ? 」
「シャイなのね? あなたの亭主。」
「違うってっっ。」
「俺は頭を洗ってもらっているが、イチャコラには該当していない。」
 刹那が意味もなく、混ぜっ返すが、当人は自分のやってもらっていたことを主張しているだけだ。
「そういや、以前はバスタオルを持って刹那を追い駆けまわしてたよな? あれは、子供の世話だとは思うけどな。亭主の髪の毛は拭いてやらないんだな? ニール。」
「ラッセ? そのツッコミは意味がわからないぞ。」
 刹那は、しばらく世話係のニールと同室だった。その頃のことを思い出して、ラッセがツッコむと、ニールも反撃だ。
「いや、世話係を拝命してたけどさ、あそこまで世話するもんだと俺は思わなかったんだ。」
「しょうがないだろ? 水滴が飛び散るなんて宇宙じゃ問題なんだからさ。刹那は、そんなこと無頓着だし、そのまんま寝たら風邪引くかもしれないしさ。」
「俺は、風邪なんか引いたことがない。」
「引いただろ? 俺に感染したじゃねぇーか。」
「あれは、あんたの免疫力が落ちていたからだ。それに、俺は看病もした。」
「当たり前だ。・・・おい、ライル。こいつ、髪の毛はおざなりにしか拭かないから、ちゃんとチェックしろよ? 」
「はあ? そんなの俺の担当か? しつけは兄さんの担当だろ。」
「刹那の嫁になったんだから、おまえの担当だ。」
「俺、そんな、細かい事は無理。むしろ、濡れ髪が首筋に触るのは気持ちいいし・・・やってりゃ、どうせ乾く。」
「・・・おまえ・・・刹那に風邪引かしたら、怒るぞ? 」
「そん時は、兄さんのとこへ下ろして世話してもらう。そういうのは、おかんの担当だろ? 頼んだぜ? 」
 けけけけけっ、と、ロックオンは楽しそうに笑ってウインクだ。双子だが、刹那に対する態度は、かけ離れたものだ。愛情の掛け方が、まったく違うベクトルを向いている。
「ニール、ロックオンに、そういうのは無理だよ? それに宇宙じゃ、風邪なんて滅多にひかないから。」
「まったくだ。こいつは、あなたと違って全てが大雑把だ。刹那の世話は無理だと断言する。」
 現ロックオンのアホさ加減は、アレルヤとティエリアも、よくわかっているから、そうツッコミだ。
「いや、ツッコミどころは、そこじゃないだろ? せつニャンも大人なんだから、自分でやるだろ。」
 もう成人しているのだから、刹那だって自分で勝手にするだろう、と、ハイネが正論を吐いて、刹那にふる。刹那のほうは、もちろんだ、と、頷いて返事する。
「水滴が垂れないまでは拭いている。」
「ドライヤーは? 」
「そこまでは必要ない。すぐに乾く。」
「刹那さん? 俺は、ちゃんとドライヤーで乾かすとこまで教えたはずですが? 」
「あんたがいないから、適当に端折っている。問題はない。そんなに心配なら、あんたが来て、俺の世話をしろ。」
「できるかぁーっっ。」
 ああ言えば、こう言うのは昔からだ。この掛け合い漫才のような会話も、以前の実働部隊では日常茶飯事レベルだったので、誰もツッコミしない。実のところ、刹那は甘えているだけで、ニールがいなくなってからは、ちゃんと自分でしているのだ。いれば、おかんに甘えるだけなので、スルーされる。
作品名:こらぼでほすと 解除14 作家名:篠義