Ib ~とある美術館での物語(6)~
―メアリーサイド―
「・・・最後の言葉、イヴわかったかな?」
イヴが絵に入ってからわたしはそう呟いた。
「・・・どういうつもりだ?」
振り返るとイヴのお母さんに化けていたものがいた。
今は人型の黒いモヤになっていた。
顔もモヤになっているため表情はわからなかった。
「どういうつもりって二人を元の世界へ返しただけよ?」
「・・・なぜ、邪魔をしたあの女の子はお前とも親しかっただろ?」
「ええ、そうよ」
「なら、なぜ?」
「わたしのようにはなって欲しくなかったのよ。それにここから出てまた会えば良い話だし」
「・・・お前、まさか」
「そうよ、思い出したの。全てね」
「だが、もうお前はゲルテナの作品だ。記憶を取り戻したからと言って帰れるとは・・・」
「だったら試してみようか?」
わたしはそう言うと絵の方を向いた。
「・・・やらせると思うか?」
「邪魔をするってことは出られるのね?」
「・・・さぁな。まぁ、行かせんがな!」
そう言うとそいつはわたし目がけて飛びかかってきた。
作品名:Ib ~とある美術館での物語(6)~ 作家名:エグゼター