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こらぼでほすと 解除15

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「ここまで深くは説明してないけど、なんとなくは気付いていると思う。把握してんのは、俺たちじじいーずとドクターだけ。」
 それと、坊主と沙・猪家夫夫だ。坊主は、それに気付いたらしく、嫁に来い、と、ニールを手元に置いたのだ。ついでを言えば、肉弾戦組は怪我なんぞしないから、そういうことから守られている安全な環境でもある。
 スメラギとラッセは、二人して顔を見合わせて視線で確認する。そういうことなら、自分たちも納得できる。体調の問題だけなら、多少のことは目を瞑って復帰させられるが、それでは到底、無理な話だ。マイスターでなくても、戦場には出る。その状態に精神がついていけない人間なんて危険すぎるのは、当然のことだ。
「なるほど、わかりました。・・・まあ、復帰はさせられないだろうとは思ってたんだけど、そういうことなら、尚更ね。」
「ご理解いただけて何よりだ。・・・・あんたらには、ティエリアがいるだろ? あいつにフルドライヴを命じればいい。駒はある。」
「そうなんだけど、私たちでは命じても拒否される可能性もあるの。」
「でも、リジェネもママニャンに関してだけだぜ? たぶん、キラが頼んでもしてくれない。ママニャンに、それを説明して命じさせるのも難しいから、うちでも使えない。」
 フルドライヴしなければならない事態となれば、尋常なことではない。キラからすれば、そうだったとしても、リジェネに影響がなければ、応援は望めないし、ニールに、その事態を説明すれば、ニールのほうが、その事態の如何によって完全に壊れる可能性もある。さすがに、キラも、それはできないだろう。つまり、ヴェーダを完全に使いこなすことは、どこの陣営にも不可能ということだ。
「まあ、うちに居るようなのは、どっかがおかしいんだ。スメラギさん、これは諦めたほうがいいぜ? 」
「そのようね、ラッセ。・・・・ハイネ、組織への復帰は認めないことは、ニールにも報せるわ。それでいい? 」
「そうしてくれると有り難い。どう言い聞かせても、あいつは聞かないんでさ。」
 聞かないというよりは、自分で認められないのだろう。戦えると思っているニールには、自分が、どういう状態かなんてわからないのだから。組織側から、はっきりと言われれば、そちらへのアプローチはできないのだと理解する。
「それ、アレルヤのことで? 」
「いや、最初からだった。・・・・たぶん、ここに居た時からだと思う。」
「全然わからなかったわ。」
「そりゃそうだろう。うちでだって、年少組は、ほとんど気付いてなかったさ。外面が、鉄面皮でさ。今でも、全然わかんないだろ? 」
 ふとしたことで、そのおかしさが露呈する。それが積み重なって、じじいーずも気付いた。最初に気付いたのは、鷹だった。それから、トダカも虎もハイネも、すぐに気付いた。とにかく、『吉祥富貴』で心と身体を休ませてやろうと動いたのも、じじいーずだ。その後で坊主が気付いて、嫁入りさせたのだ。お陰で、あまり崩れることもなく今は生活できている。
「アレハレのことで悪化はしたんだと思う。」
「じゃあ、あの時、ニールとの接触を拒否したのも、そういうこと? 」
「そう、ママニャンに報せたら、確実にヤバイって解ってたから、あいつには隠してたんだよ。それを、お宅のエージェントさんがバラしてくれたから、盛大に壊れたんだ。」
 組織側に、アレルヤ生存の報告だけは入れたが、それ以上の協力は、『吉祥富貴』も拒否した。『吉祥富貴』にも、決まりがある。組織に協力することは、それにひっかかることだったから、アレルヤの生存報告だけにしたのだ。
「ティエリアくんが降りて来た時は、かなり落着いていたけど、それでも驚いていました。私も、専門施設に移そうか考えたほどです。」
 暴れるような壊れ方ではなかった。ただ、ぼんやりしてしまって受け答えもできないし、食事も睡眠も意識できなくなってしまったから、ドクターも対処に悩んだ。安定剤で落着かせて、時間をかけて元に戻す方法しかなかったので、時間もかかった。
「でも、今は正常なんだろ? 」
「もちろん、普段は正常だ。いや、ちょっとおかしな時もあるけど、まあ、大体はマトモ。ただし、眼の前で怪我したりすると、かなりパニくる。」
「こればかりは、すぐにどうこうできるものではありません。そういう人間が、こういう場所で活動するのは無理がある。ニールくんの場合は、クスリでどうとかいう類のものでもないので、私も復帰は認めたくありません。」
 ドクターも、その点は、ハイネと同意見だ。長い緊張状態なんてものに晒されると、精神が耐えられないとは予想できる。クスリで抑えられたり治る種類のものなら、ここまでは言わないが、ニールの場合は、そういうものではない。子供の頃のトラウマが前提にあって、そのまま成長しているから、治すとかいうものではないからだ。
「お酒で紛らわしてるより性質が悪いんじゃない。」
「悪いな、確実に。まだ、スメラギさんのほうが強いよ。ここで踏ん張ってるんだからさ。」
「しょうがないわ。やるって決めたから、もう後には退けないの。・・・いいわよ、ニールには地上で待機所の管理人をやってもらえばいいわ。」
「そうだな。・・・・最初から、そのつもりだったんだろ? 」
「あわよくば、というのはあったんだけどね。さすがに、そういう事情じゃ引き摺り出せないわ。」
 スメラギとラッセも、この件については、最初から諦める材料を探していた。それが、思っていたより大きいので驚いただけだ。そういうことなら、今後、組織に関わらせることはない。




 ドック内を、ぶらぶらと散歩していて、そういえば、と、ニールは思い出した。歌姫様が、プラントでコンサートを行なっている。
「リジェネ。」
 いつも通り、声をかけたが反応がない。電脳空間に漂っているから、リジェネの呼び出しは簡単なのだが、留守の場合もあることをニールは失念していた。
「リジェネなら、ヴェーダから離れている。何か? 」
「今、ラクスがプラントでコンサートをやってるだろ? あれ、中継してるんなら、こっちにもデータを持って来れないかな? 俺もフェルトもコンサートなんて見たこともないからさ。」
「そういうことなら、俺が調べてみましょう。少し待ってください。アレルヤ、俺の身体を頼む。」
 ヴェーダを掌握している片割れのティエリアは、そう言って、素体からヴェーダ本体へと戻って、そのデータを検索した。あらゆる電脳空間に干渉できるヴェーダなら、データとして保存されているものは、こちらでも再生できる。プラント関連のデータの中に、それは存在していた。本日のものは編集されていないが、前日のものは編集までされたものがある。それを、コピーしてヴェーダのほうへ引き返す。時間は、僅かのことだ。
 くったりとアレルヤに凭れていたティエリアの身体は、しゃきっとして顔を上げた。
「ありました。本日のものは、現在、編集中で、昨日の分なら観られます。昨日の分はリハーサルのようですが。」
「それ、どこかで観られるか? 」
「トレミーの休憩室でプロジェクターに映すと臨場感もあるでしょう。それでいいですか? ニール。」
作品名:こらぼでほすと 解除15 作家名:篠義