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Wizard//Magica Wish −2−

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魔法少女達のお茶会も終わりを迎え、まどか と さやか はマミの家を後にした。
ちなみに杏子はマミの家に泊まっていくらしい。

ある程度歩いた後、まどか は さやか と別れを告げ、一人で自宅へ向かっていった。
今は まどか の家への近道となる公園を通っている。


「はぁ~みんな、完全にウィザードさんのこと敵だと思っているなぁ…私はそんなことないと思うんだけどな」


まどか は相変わらず、腑に落ちていなかったらしい。
確かに、杏子に襲いかかったのは事実。しかし、何か引っかかったのだ。
丁度、杏子を助ける直前に彼が自分の横を通り過ぎた時。

彼は私にこう言った。



「希望はまだ捨てるな…かぁ」


あの時、本当に杏子を失いそうになったとき、まどか は「絶望」しそうになった。
佐倉杏子…友達を失うことに。
だが、彼のその暖かい一言で まどか は救われたのだ。
特に根拠はない。しかし、その彼の声に まどか は失い掛けてた「希望」が心の底から一瞬込上がったのだ。


「ウィザードさんだって、きっとなにか訳があってソウルジェムを集めているんだよ、でも…どうしよう。ソウルジェムを渡しちゃったら…私…」


−ぐぅぅ…ぐぅ…−


「…よし!今度ウィザードさんに会ったらちゃんと訳を話してもらおう!きっと大丈夫だよね!」


−ぐぅぅ…ぐっ…すぅぅ…−


「話せば解ってくれるよね!同じ人間なんだし!…ん?なんの音だろう…」

−ぐぅぅぅ!!ごぉぉぉ…−

「へっ!?何、なんなの!?」


彼女は周りの異変にようやく気付いた。…少々遅いが。
耳をすますと何か低い低音がリズムよく鳴り響いている。

まどか は独り言をずっとしていたため、気づいていなかったのだ。
…彼女のすぐ真隣りのベンチに…一つの影が…。


「だ、誰!!?」

「ぐごっ…う、うぅぅん…なに?ふあぁぁ……あ、まどかちゃん、おはよう」

「ハ、ハルト…くん?」



………

「へぇ~ハルトくんって旅してるんだ」

「うん、特に目的はなにもないんだけどね。ただ退屈な人生は送りたくなかったから」


まどか は近くにあった自販機で暖かいココアを2つ買い、二人は街頭が立っている場所があるベンチへと移動した。


「退屈な人生…日常かぁ」

「まどかちゃんは、考えたことはある?人と同じ人生をずっと続けるのは嫌だって」

「う~ん…ちょっと違うけど、それっぽいことは昔考えてたなぁ」
(今は魔法少女になったから、ちょっと人とは違う人生送っているけどね)


まどか は空を見上げた。
太陽は完全に落ち、今は幾千もの星が光輝いていた。

自分は、初めて使い魔に襲われたとき、ふと自分と さやか 目の前に現れたマミの姿を見て、感激した。自分も、魔法少女の素質があるのなら、マミのように何か人の助けになる事をしたい、と。
自分は『とある願い』をキュウベぇに叶えてもらい、魔法少女となった。
そして今はマミと同じ魔法少女の仲間である さやか と 杏子と一緒に日々、人々の生活を脅かす魔女と戦う魔法少女となった。

確かに辛いときもあるけれど、今の自分の人生に後悔はしたことはない。


「…ね、ねぇ!ハルトくん!…あ、ちょっとまって…その前に、ハルトくんって普通に呼んでるけど…その…」

「ん?俺は16才だけど、別にタメ口でも良いよ」

「へっ!!?せ、先輩だったんですか!!?…あうぅ、マミさんより年上だぁ…」

「気にしなくても良いって。むしろ敬語使われたほうが距離あって嫌だし」

「で、でもぉ、いくらなんでも年上ですし…」

「ほら!もう敬語になってる。まだ敬語使うつもりなら俺どっか行くよ」

「あぁ!わ、わかったよぉ」

「うんうん、それでよし。あ、そういえば まどかちゃん、俺に何か聞かなかった?」

「あ、そうだった…えと」


まどか は大きく深呼吸し、座り直した。
…何故、目の前にいるハルトに自分の悩みを聞いてもらおうと思ったのか、理由はなかった。
しかし、ハルトなら、何か答えを知っていると確信してしまったのだ。
そして、まどか はその悩みを口にした。


「ハルトくん、もし、…もし、自分にとって大切なものが欲しいっていう人が目の前に現れたら、どうする?」


聞いてしまった。
口に出してしまった。
常人が聞いたら、まず最初に口に出すのが「は、はぁ…」だろう。
いや、別にハルトが常人ではない…と、いうわけではないが。

しかし、まどか の予想どおりハルトの反応は常人とは違った。


「ふぅん…なんで?」

「あっ…えっとね。ちょっと前に、私はその…そうだ!怖い人達に襲われて…」

「ぷふっ…う、うん。続けて」

「?…それで、襲われそうになったとき、ふと知らない人が私を助けてくれたの」

「あ…はは…うん、で?」

「けど…私を助けてくれたその人は私の一番大事な物を頂戴って言ってきたの。でもそれは本当に大事な物だから…そしたらその人は今度は私を襲ってきたの」

「だったら、そいつも悪い奴じゃん。良い人な訳ないよ」

「けどね!私を助けてくれたのは事実なんだ。だから…私は、その人は悪気があってやってる訳じゃないんだって」




「けど、襲ってきたのも事実だよね」




「うん、でも何か理由があるんだよ」





「理由?ないかもしれないよ」





「でも!絶対何かあると思うの!本当は、人の事を思いやることのできる人…ウィザードさんは…本当は、良い人なのかなって思うんだ…」





「ふぅ~ん」



ウィザード、ねぇ。




「あっ…えっと。それで、ハルトくんは、どう思う?」

「うん…そうだね。とりあえず まどかちゃんは…」


そう言うと、ハルトは一気にココアを飲み干し、少し遠くにあったゴミ箱目掛けて空き缶を投げた。

−がんっ−

「「あ」」

…外したが。


「おほん…優しすぎ」

「え?」

「はぁ…また外した。ちゃんと捨てないと」

ハルトはそう言い残し、空き缶を捨てにいった。
まどか も一気にココアを飲み、ゴミ箱に空き缶を捨てに行こうとその場にたった。が。


「え、あれ!?」


−がこんっ−


空き缶の捨てる音は聞こえたが、その場にハルトの姿はもうなかった。
ほんの、数秒の間で彼は消えてしまったのだ。



「優しすぎかぁ。別にそんなつもりはなかったんだけどなぁ」


作品名:Wizard//Magica Wish −2− 作家名:a-o-w