Wizard//Magica Wish −3−
瞬間、杏子の目の前から ほむら の姿が消えた。
気がつくと、ほむら は数メートル先に立っており、二人が逃げた方向へと向かっていたのだ。
「しまった!!やべぇ…」
杏子は焦りながら ほむら の後を追う。
しかし、一向に距離は縮まらない…むしろ、広がっていた。
「ったく、一体なんだよあいつの魔法は!!」
・・・
「急いで まどかちゃん!出口までもうちょっとだよ!」
「はぁっはぁっ…早いよ、ハルトくん…」
二人は必死に走る。
通り過ぎる人達は何事か…と二人を不思議そうに見ていた。
だが、今はそんな悠長な事を考えてはいられない。
実際、まどか は逃げる必要はないのだが、問題は自分だ。
今の彼女は他人の声が全然聞こえていない…そこまで彼女が気がたっている証拠だ。
何故、彼女は必死に自分を狙っているのだろう。
彼女の瞳は、一体何が見えているのだろうか…。
「そこまでよ、操真 ハルト」
「ほむらちゃん!?」
「えっ…いや、なんでそこにいるの?俺たちの後ろにいた筈なのに…」
出口の目前というところで、暁美 ほむら は立っていた。
自分達の後ろにいた…ということは今はどうでも良い。
彼女は躊躇なく再びハルトに拳銃を向ける。
何度もこの光景を見てきたが、どうやら本気のようだ。
「わかった…わかったよ!そこまで本気っていうなら」
「『ドライバーオン』プリーズ!」
「…相手になってやる」
「えっ。やめてハルトくん!!ほむらちゃんもやめてよ!!」
ウィザードライバーを腰に出現させたハルトをみた まどか は必死に彼の肩を揺さぶり静止を求めるが、全く聞く耳を持たなかった。無論、ほむら も同様だった。
「まどかっ!くそ、間に合え!!」
ようやく、ほむら を追いかけてきた杏子がその場に到着し、戦闘態勢に入る二人が目に移り、瞬時に簡易的な結界を発動させた。一般人の目に映らさせたないためだ。
辺りはまるで宇宙のような空間へと変わり、その空間にいるのは杏子を含め4人だけである。
「はあっはあっこれで周りの被害は出ない筈だ」
「杏子ちゃん、どうしよ…」
「あぁ…悪いが、この際二人で戦わせよう」
「で、でもそんなことしたら!」
「安心しろ、そんときは私が刺し違えてもなんとかしてやる」
「シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!」
「変身」
「『フレイム』プリーズ!『ヒーヒー!ヒーヒーヒー!』」
「さあ、…お仕置きの時間だ!」
「それはあなたよ!」
瞬間、二つの閃光がぶつかりあった。
ウィザードのキックが ほむら の盾に当たったのだ。
ほむら はそのままガードしながら何発か拳銃を打つ。
しかしウィザードは華麗に交わし、再び魔法を発動させた。
「『コネクト』プリーズ!」
「長期戦は厳しいな、これで決めてやる!」
ウィザードはウィザーソードガンを取り出し、そのまま必殺技を放つ態勢へと以降した!
それを見た ほむら も左腕の円盤型の盾から今度はアサルトライフルを取り出し、瞬時にカートリッジを取り付けた!
「あなたがそのつもりなら、私もこれで決める!」
「や、やべぇぞ!くそっ…最後の手段か」
「いや、…止めて…止めてよ…二人とも」
私は、また見ているだけ?
何もしないで…また誰かに守られるの?
「キャモナスラッシュシェイクハンズ!『フレイム』スラッシュストライク!」
「…フィナーレだ」
「行くわよ、ウィザード…っ!!」
そんなのおかしいよ…だって、二人とも私の友達なんだよ?
でも、どうすれば良いの?
それとも、もう無理なのかな…
もう…二人を助ける手段なんて…
「こんなの…嫌だ…絶対に…嫌だ嫌だ!…諦めちゃダメだ…諦めちゃダメだ…諦めちゃだめだぁぁ!!!!」
二人が一気に距離を詰める。
杏子はそれを見て、二人に突っ込もうとした。
だが、その一足前に、彼女の体が動いた。
「そこまでだよっ!!!!二人ともっ!!!!」
「おぉっ!危なっ…」
「っ!!ま、まど…か?」
大きな声が、結界内に響き渡る。
丁度、二人がぶつかる瞬間に まどか は仲裁に入った。
あともう少し反応が遅かったら まどかに直撃する寸前だった。
「二人とも…いい加減にして。それ以上、戦いを…戦いを…戦いを続けるっていうなら!!」
まどか は自分のソウルジェムを取り出し、二人に見えるように差し出した。
ウィザードと ほむら は何事か…と各々の武器を地面へ下げた。
「この…私のソウルジェムを…この場で砕きます…っ!!」
「なぁっ!!…はぁ、あの馬鹿…」
「な、何を言っているの まどか…冗談はよして…」
「冗談じゃないよ、ほむらちゃん…今度こそ私は本気だよ…う…!」
その瞬間、まどか は力いっぱい自分のソウルジェムを握り締めた。それと同時に自身も苦しみ始めた。
「ど、どう…ハルトくん…私のソウルジェム…無くなったら、…困るでしょ?」
「よせ…よせ!止めろ!!まどかちゃん!!」
「じゃあ二人とも、私と『契約』して!!…くぅぅ…」
「契…約!?」
「一体何を言っているのまどか!?」
「いいからっ!!…ハルトくんは、もうこれ以上勝手に魔法少女達のソウルジェムを奪わない事!!ほむらちゃんは…あっ…ハルトくんと仲良くして!!」
「わかったわ…わかったから止めなさい!!まどかぁ!!」
「止めろ まどかちゃん!…わかった、約束するよ…約束するから…もう良いよ」
「じゃあ二つ目の契約、二人とも、仲直りの握手!その握手は今の約束を絶対に守るって約束だよっ!!あ、あぁぁぁ!!!!」
「ちょ、ちょっと…まどかちゃ…」
「いいから今すぐしてっ!!本当に砕くよっ!!!!」
「わかった!わかったからやめるんだっ!!…その、さっきは悪かった…」
「うっ……こ、こちらこそ…」
一瞬、そう一瞬の出来事だった。
まどか は自分の命を引き換えに二人に取引をした。
ウィザードと ほむら はお互いぎこちなく握手を結ぶ。
それを見ていた 杏子 は何故か半笑いだった。
まどか は…相当気がたっていたのか…大きなため息をしてその場に腰を下ろしてしまった。同時に結界が解け、窓から夕日が照らされる図書館の入口へと戻ったのだ。
「はぁ~…怖かった…」
「ぷっくふふ…、成長したな、まどか」
「あ、そのっ…バレちゃった?」
「え…」
「おい、どういうことだ?」
「はははははっ!お前ら二人馬鹿なんだなぁ!!ソウルジェムが人の手で砕けるわけねぇだろ!!」
「「あ」」
「ごめんね?ほむらちゃん、ハルトくん。でもお互い私と『契約』したんだからもちろん守るよね?えへへ…」
・・・
「全く、やられたよ まどかちゃん」
「ごめんね、ハルトくん。でもこれぐらいやらないと絶対私の話聞いてくれないかな~って思って」
「………」
「なんだぁ~お前?さっきのこと、まだ気にしてるのかぁ!?ぷっ…」
「黙りなさい、佐倉杏子」
作品名:Wizard//Magica Wish −3− 作家名:a-o-w