Wizard//Magica Wish −4−
・・・
「皆、今日はお疲れ様!」
「うわ~!今日のケーキは美味しそうだな~!そう思わない?ほむらちゃん!」
「え、えぇ。とっても…」
「ったく、なんで私がこいつの隣りなのよ」
「なんだぁさやか、ハルトが嫌いなのか?」
「ふんっ!ついこの間まで敵だった奴なのよ?あとちょっと近い!もっとそっちいってよ!」
「そうカリカリしないでよ、さやかちゃん。お、この紅茶美味しいなぁ」
「気安く名前呼ばないでくれない!?…はぁ、皆もちょっとは警戒したらぁ?」
魔女を撃退後、5人はマミの家に上がりいつの間にか恒例になっていたお茶会を開催していた。ちなみにハルトと ほむら は まどかの強制参加令が出たため無理やり出席させられたのである。もちろん二人とも、あまり乗り気ではなかったのだが、がっちりと二人の腕を彼女に掴まれ、「もちろん二人とも参加するよね?えへへ…」と笑顔で連行されてしまったのである。そのときの まどか の笑顔はどこか、恐ろしかったとハルトと ほむら は珍しく意見が合意するのであった。
「すごいねマミちゃん。この紅茶といいケーキ…一緒に食べても全く違和感なく喉を通っていく。それどころかお互いの相乗効果でさらに旨みが増している。まるで激選して選んだみたいだ」
「選んだみたい…じゃなくて、本当に毎日悩んで買っているのよ?食べ合わせも研究して毎回、鹿目さん達にお出ししているの!」
「へぇ~洒落てるなぁ」
「…むぐむぐ…ふん!」
「さやか、いい加減素直になれよ~いつまで気を張ってるつもりなんだ?」
「別に~」
「ったく、本当にお前はガキだなぁ~」
「暁美さん、紅茶のおかわりいかが?」
「えぇ、お願いするわ」
「ね?来てよかったでしょ!?ほむらちゃん!」
「…久しぶりに息抜きはできたわ」
「…ん?なぁほむらちゃん」
「なにかしら、操真ハルト」
ハルトは ほむら の顔を見て何かに気付き ほむら に近づいた。ほむら はいきなりの事で眉間にしわを寄せるが ハルト はお構いなしで今度は手を差し出し ほむら の頬を触り始めたのだ。
「っ…何のつもり?」
「ほら、ほっぺにケーキのクリーム付いてたよ…はむっ」
「っ!?」
「ふふっ!ほむらちゃんって可愛いとこあるんだね!」
「ち、ちがっ」
「ははっ!赤ちゃんみてーだな!!」
「黙りなさい!佐倉杏子!!」
珍しく感情敵になった ほむら は机をバンっと叩き杏子に身を乗り出したのだ。クールな彼女のイメージとは裏腹に、頬を赤くし焦りながら弁解を図る ほむら を見た5人は大爆笑し、本人は一旦落ち着き、咳を一回付いたあと紅茶を飲み直していた。
「ははっ!まだ赤くなってやんの!ハルトに惚れたのか!?」
「それはありえないわ。天地がひっくり帰っても、このようなデリカシーもなく、能天気かつマイペース人間には興味は全くわかないわね」
「ちょ、ちょっと ほむらちゃん…そこまで言われちゃ俺…」
「あんたにピッタリの言い分だと思うけどね?ちなみに ほむら の言ったことは全部当てはまってるわよ」
「そういう さやかちゃんはどうなのさ~」
「私?ふふんっ!この完璧かつ美人な魔法少女、さやかちゃんのどこに落とし穴があると!!?あんたとは違うのよ!!」
「初恋の奴と一度失敗してるじゃん」
「杏子ぉぉぉぉぉ!!!!」
そのまま さやか と杏子はもう何度目になるかはわからない取っ組み合いが始まり、それを見ていたハルトは止めることなく逆に応援し始め、ほむら は便乗せず優雅に紅茶を飲み続けていた。
「あぁ…もう、またか」
「ふふっ!相変わらず、みんな元気ね!…本当、こんなひと時、幸せ…」
「…マミさん?」
「こんな時が、また私の元に訪れるなんて、ね…」
なんだろうか、この感じは。
目の前にいる自分の先輩の一言が、何故か胸に突き刺さる。
「どうしたんですか、マミさん?」
「え、…えぇ、ごめんなさい!なんでもないわよ?」
本人は特に何もない素振りをしているが、この時 まどか はマミのある変化に気付いたのだ。
なんだろうか…今、一瞬。マミはどこか悲しげな表情をしていたような気がする。
マミは決して、自分の弱みを見せない強い、そしてたくましい まどか達の先輩だ。
だからこそ、彼女は大事なことを自分たちには伝えてくれない。
マミは典型的に物事を自分の中で抱え込んでしまうタイプである。
彼女は優しすぎるのだ。
「あの…マミさん」
「なに、鹿目さん?」
「あ、いえ…えと…な、なんでもないです!ははっ…」
結局、本人に訳を聞けなかった。
もしかしたらただ単に疲れていただけなのだろうか。
でも、なにか違う気がする。
彼女の心の中に、一体何が渦巻いているのだろうか。
「どした?まどかちゃん」
「なに?ハルトくん」
「おいおい、俺が聞いているのに聞き返すことないじゃない」
「へ?あ、あぁ!そうだね、えへへ…ちょっと気になることあってね、またあとで話すよ」
「…?そうか、わかったよ」
作品名:Wizard//Magica Wish −4− 作家名:a-o-w