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Wizard//Magica Wish −4−

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−−−ん?


あ、そうか。
魔法使って俺寝たのか。

…?なんだろ。首筋が痒いな。
なにか…なにかに吹きかけられているのか?

…これは、息?


「…あぁ?」

「くか~…す~…」

「う…うぅっ!!……っ!!!!」


魔法の効力が切れて起きたハルトのすぐ横に、気持ちよさそうに寝息を立てて寝ている杏子がいたのだ。ハルトは大声を出しそうになったが、流石に起こすのは悪いと悟ったのか自分の手を口元に当てそれだけは回避することはできた。
ハルトは杏子を起こさないようにゆっくりと布団から立ち、ソファで寝ようとした。


「なんで寝るのにも疲れるんだ?…あれ、窓があいてる」


暗くて良く見えなかったが、どうやらベランダへの窓が空いていたらしい。
ハルトはそれを閉めにベランダへと向かった。だが、そこに人影があった。
パジャマ姿のマミが、深夜の見滝原市を眺めていたのだ。


「あんまり外に出てると、風邪引いちゃうよ?」

「ハルトくん。…あ、御免なさい起こしちゃった?」

「うぅん、たまたま起きちゃっただけ」


ハルトはマミの横に並び、手すりに身を寄せる。
深夜の見滝原市。
所々に光が輝き、トラックのライトがまるで流れ星のように色々なところで動いている。
気温はそこまで低くもなく、多少なら薄着でも立っていられるぐらいだ。

「あの、ハルトくん。さっき見たら佐倉さんと一緒に寝ていたみたいだけど、まさか」
「手は何も出していません」
「そう、ならよかったわ」

そんな冗談を交えてマミは手に持っていたホットミルクを少し飲む。
ハルトはマミの顔を覗く。その表情は普段の彼女とはまた違う、なにか不安が募った、そんな表情だった。


「マミちゃん、今、この時間は、君にとって幸せ?」

「えっ…どうしたの?いきなり…」

「いやさ、ちょっと気になって…で、どうなの?」

「そうね…幸せよ。昔と違って」


マミは再びホットミルクを飲み、空を見上げる。
地上とはまた違う、幾千もの星が光輝いていた。


「ハルトくん、私の事知っているでしょ?」

「うん、ある程度なら まどかちゃん達から聞いた」

「そう…私、今の時間が幸せ。今のこの時間で生きていられることが本当に幸せ。これが、私が望んだ時間」


ハルトの表情は次第に険しくなっていく。やはり、彼女の心の奥底にはなにか まどか達には話していない辛い出来事があったのだろう。
しばし、黙ってその話を聞くこととした。


「私ね…」



数年前、私は友人や家族に囲まれて何不自由ない生活を送っていた。親が企業で結構上の立場だったらしくてね、望めばなんでも叶う人生を歩んでいたの。
丁度その頃から不可解な集団自殺や事故を耳にして、何者かの視線を感じることはあったけど特に気にすることはなかったの。

そして、下校中に私のパパとママの乗る車に乗車して外食へ向かう最中の時、…そう、事故があったの。魔法少女になったのはその時よ。

数日後、周囲の人達は心配するけど私はそれを心意と受け入れずにいたわ。
キュウベぇに魔法少女の使命を課されても実感が持てずにいたけど、少し時間が立った時、私の目の前でビルの上から飛び降り自殺を図ろうとしたOLの人を私は見た。
必死だったのよ?もう、目の前で誰かが死ぬ光景を見たくないって…
そして私はその時初めて魔法を使用した。リボンを出現させてクッション代わりにさせてその人を助けたの。その後魔法少女に変身して使い魔を倒し、ようやく魔法少女としての自身が出たわ。

けど、そんな私に転機が訪れた…。

ある日、パトカーのサイレンがある場所へ向かっていったので私は気になってそれを追いかけると母親と思われる人物が息子が突然行方不明になったと騒ぎ立てて警察側はどうにか落ちつかせようとしていた。
私はすぐに魔女の仕業だと悟ったわ。
キュウベぇと共に魔女結界に入り魔女に遭遇して、私の目の前で男の子が取り込まれそうになったわ。私は戦った。けど攻撃が全く通用しないぐらい強い魔女だった。
やむを得ずにキュウベぇに説得されて一時撤退してしまったの。

この考えが甘かったわ。
この時、差し支えても男の子を救うべきだった。



−ごめんなさいっ…ごめんなさい!!…う…うあぁぁぁぁ!!…−



私は、男の子を救えなかった。
男の子は完全に魔女に取り込まれてしまった。

何も出来ない私の弱さと、力の無さ。

ふと、道を歩いていると電柱にその男の子の捜索依頼のポスターが張ってあった。
私はなんとか忘れようとそこから一気に走った。
ずっと走る…走る…。けど、頭に染み付いてあの光景が離れない。
結界内で私に向かって何度も「助けて…助けて…」って叫んでいたあの光景が…。

それから何時間も泣いた…気がつくと朝になっていた事もあった。

だから、私は決めた。
もう、絶対に私は負けない。
絶対に、誰も見捨てたりしない…と。

それから私は戦いに関することに没頭することとなり、この頃からリボンから銃や大砲を作るようになったわ。
けど、それが原因で気づかず内に友達との交流を避け続け、以降は孤独な戦いに身を落とすようになっていった。




私は、本当の意味で一人ぼっちになってしまった。





「それから、佐倉さんに出逢い、鹿目さん達とも出会って今、ここに立っているってわけ…あの、ごめんなさい。こんな話しちゃって」

「よく、頑張ったね」

「え…っ…」


ハルトは、それだけ言ってマミを自分の胸元に引き寄せた。
自分が想像していた以上に悲惨な過去をマミは体験していたのだ。
何も、言葉が浮かばなかった。
だから、行動で示した。


「ハ、ハルトくん…」

「マミちゃん…もう、良いんだよ。気を抜いても」

「…っ!」

「今度から、俺は絶対に戦いに遅刻しないし、マミちゃんの分まで戦う。だからもっと自分の人生を楽しんでよ。失ったものも大きいけど、得た物も沢山あるじゃない…」

「…意地悪なのね…ハルトくん…せめて『俺が守ってやる』ぐらい言えないの?」

「まぁ…こう見えても照れ屋だから」


ハルトはマミに何をしてあげれば良いのか理解した。

彼女には魔女との戦いを気にせず安心してもらう環境と時間が必要なのだ。
今以上に、彼女は欲している。

今まで彼女はずっと一人で辛い思いをしてきた。今度は自分たちが彼女を救ってあげなくてはならない。

それが出来るのは、魔法少女である まどか達と、自分だけだ。




「安心して、マミちゃん。俺がマミちゃんの希望だから」

「ふふっ!…ありがとう、ハルトくん…」




作品名:Wizard//Magica Wish −4− 作家名:a-o-w