Wizard//Magica Wish −5−
「巴さん!今日みんなでカラオケ行くんだけど一緒にどう?」
「たまには良いじゃない、ね?」
「ご…ごめんなさい。今日も用事があるの。また今度ね?」
マミは学校の用事を済まし、見回りのため下校しようとしていた。その途中で同級生が自分を遊びへ誘ってくれたのだが人の命が左右されることがあるため、気を抜くことはできなかった。彼女達には申し訳なかったのだが適当な理由をつけてその場を乗り切った。
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−はぁ、また断られちゃった。そんなに私達と絡むの嫌なのかな−
−そういえば最近、下級生の子達と仲良く喫茶店で話してるの私見たわ。…私達の誘い断っといてそれってありえなくない?−
−あ、それ私も見た!−
−もういいや、巴さん誘うのもうやめよ。きっと下級生の子達と一緒にいるほうが良いんだよ−
−だよね、…いつも一人きりだったから気にかけた私達が馬鹿だったな−
−ちょっとマキ!たしはあんたみたいに馬鹿じゃないのよ!一緒にしないでくれない!?−
−きゃははっ!いいや、この話しの続きはカラオケのときにしよ!さあ皆行こ~…−
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「…はぁ……」
本当は悪いことだけど、同級生達の会話をソウルジェムを使って盗み聞きした。
こんなことになるのは当たり前なのは承知だった。
現に鹿目さん達と一緒にいる時間のほうが長いのは本当だ。
全て事実なんだ。
けど、こんな事考えながら魔女退治なんて出来る訳がない。
振り切るんだ、自分。
辛いのは承知の上、あの時から私は絶対に逃げないって誓ったんだ。
それに、今は昔みたいに一人ぼっちじゃない。
…鹿目さん達が傍にいるんだ。
「さて、今日も張り切って頑張らないと」
「あれ、マミじゃねぇか。さやか達は一緒じゃないのか?」
「…っ!佐倉さん?」
校門を出た瞬間、杏子がポテトチップスを食べながら待ちぼうけをしていた。おそらく まどか達を待っていたのであろう。
「美樹さん達なら先に帰っているみたいだったけど、会わなかったの?」
「お、そうなのか?だったら早く合流しようぜ!どうせいつもの喫茶店だろ?」
「ふふっ!そうね。行きましょう」
正直、今はすぐにこの学校から離れたい。
ここには自分の居場所は限られている。
はやく彼女達と会ってまた楽しい時間を過ごしたい。
今は、これで良いのだ。
「ったく、本当に魔女や使い魔も現れなくなっちまった。別に戦わなくて良いのはいいけどグリーフシード集めないと私達も危ないからな」
「そうね…グリーフシードの貯蓄も少なくなってきたし、いきなり連戦にもなったら大変ね」
「こればっかりはどうにもならないからな~…ん、あれってハルト達じゃね?お~い、ハルト~!」
丁度、商店街へと続く市街地の真ん中で反対側からこちらへと向かってくるハルト達3人と偶然にも合流を果たした。いつもであればこの時間帯は今だに喫茶店にいるはずなのだが今日は何かあったのであろうか。
それはともかく、ここで合流できたのは都合が良い。
探す手間が省けた。
「あ、杏子ちゃんにマミさんだ!」
「ちょっとあんた!それ隠しなさいよ!」
「『コネクト』プリーズ!」
「言われなくてももう隠したよ」
「ん、ハルト。お前今魔法を使わなかったか?何したんだ?」
「えっ…なんでもないよ、杏子ちゃん」(こういう時に限って鋭いんだから)
「どうしたの?二人とも。いつもだったら喫茶店にいると思ったんだけど、今日は何かあるの?」
「えっ…あ、いや…あはは~!なんでもないですよマミさん!ね、まどか!」
「は、はい!そうなんですよ!えへへ…」
「…?」
「とりあえず、見回りは俺たちがあらかたしてきた。夜までマミちゃんの家で紅茶でも飲みに行っていいかい?」
「けど、いつ何時現れるかわからないのよ?あまりおろそかにすることは…」
「いや、ハルトの言うとおりだ。ちなみに私も反対側の山の方角へ行ったけど使い魔の気配すら無かったよ。当分は大丈夫だろ」
「なら良いんだけど…ま、ちょっとぐらいなら大丈夫よね」
「うんうん、マミちゃんもたまにはゆっくりとさ、休み……っ!!」
なんだ、この感じ。
この禍々しい『魔力』は一体なんだ。
魔法少女のにしては大きすぎる…魔女…いや、違う。
それ以上だ。
こちらに近づいてくるのか、…皆気づいてないのか?
「マミさん!疲れてません?肩揉みますよ!」
「ちょっと、美樹さん。別に家に帰ってからでも…きゃっ!ど、どこ触ってるのよ!」
「あはは…ちょっと羨ましくて…つい…」
気付いていない…俺だけなのか?
「ハルト、どうしたんだ?」
「…ハルトくん?」
「杏子ちゃん、まどかちゃん…ちょっとヤバイかも…」
「え?」
「はぁ?なに言っているんだ、ハルト」
大きくなっている…間違いない!
こっちに近づいてきている!
「皆!俺の周りに集まれ!」
「な、なによいきなり!あんた頭おかしいんじゃ…」
「いいから俺の傍によれ!今すぐだ!!」
「えっ…」
まどか は驚愕した。こんな必死なハルトを見たのは始めてだ。さやか に至っては普段の彼のイメージが強すぎたのか呆然としている。
とにかく4人はハルトのすぐ傍に集まった。
「『ディフェンド』プリーズ!」
「なっ、ハルト!?」
「黙ってて!!…持つか?」
「どうしたの、ハルトく……きゃあっ!!!!」
次の瞬間、炎の輪で防御魔法を発動させた瞬間に遠くから無数の火炎弾が自分たち目掛けて降り注いできたのだ!!衝撃が地面から伝わってきて立っているのがやっとだ。
周りの木々やコンクリートの壁は無残に破壊され、防御魔法を発動させた一角だけ無事という状態だった。
もしハルトが気付いていなかったら今頃どうなっていただろう…間違いなく、全滅していた筈だ。
「な、なんだ…魔女か!!?」
「いえ…魔女結界が無いわ…魔法少女の仕業かもしれないわね」
「そんな…私たち以外の魔法少女が見滝原にいたの!?」
「でも、こんな強力な魔法…いくらなんでも魔法少女の力にしては…」
「えぇ、だって私は『魔法少女』ではないもの」
「…っ!!上か?」
ハルトは上を見る。
丁度、目の前の民家の屋根の上に人影らしきものが立っている。その人影の右手になにやら大きな物体の姿があった…。
「っ!!…まさか、…もう再会するなんてね…たしか、ミサって言ったっけ。もう会いたくはなかったんだけど」
「覚えてくれていたのね、操真 ハルト…いえ、指輪の魔法使い」
「ハルト!こいつ知ってるのか?」
「うん、丁度昼前にね」
「え…あれって…」
まどか はハルト達の会話よりも目の前に立つ女性の手に持つ物体に目が行った。どこかで見覚えがある…いや、ちょっと待て。あれは『物』ではない…よくよく見ると長い髪が風に煽られている…あの特徴的なくせっ毛…まさか…あれは!!
「ほむらちゃんっ!!!!」
「なんですって!?」
「まさか…暁美さんが!?」
「あぁ…この子ね…ほら、『返す』わ」
作品名:Wizard//Magica Wish −5− 作家名:a-o-w