サプリメント
「……君は物好きだとよく言われないかね?」
「物好きと言われるよりは、好き者だとよく言われるが」
「…………そうか、ね」
あっけらかんと極上の笑みを返し答える美丈夫に脱力する。もう何度目の脱力だろうか。この程度で一々めげていては、この先も一体何度となく地面に額をこすりつけることになる。しっかりしろ、私!と心に喝を入れる。
「どうしてそんな風に言われるのかはわからないが。まぁ、それはさておき。私の願いが叶って良かった。シャカ、君に断わられずに済んで正直、ホッとした。君意外では考えもしていなかったから」
「いや、考えてくれるとありがたかったのだがな…それにあれは願いというよりも、半分以上脅迫だったではないかね」
深々と溜息をつくと、ベッドの上に広げたままの旅に持っていく物のチェックを続ける。ここは下町の古びたアパートメント。スプリングの効かないベッドに毛羽立ったシーツ。狭い部屋には大した物は置いていない。だが、根無し草のような生活を送る私にすれば、これでも上等だ。
すぐそばには小さくはあるけれども一応仕事場ともいえる机と椅子。その椅子の上にサガは座りながら、長い脚をベッドの端に乗せて伸ばしていた。
長年の相棒であるカメラは傷だらけだが、調子は良いようだと、つい癖で被写体を捉えてしまう。ファインダー越しに捉えたサガは腹が立つほどいい男だと思いながら、ケースへと収めた。どうせ、この先嫌というほど、この男を撮るのだから、と。
何が楽しいのか、食い入るようにそんな様子を眺めているサガ。
最初こそ、その視線が煩わしくて仕方なかったが、さすがに三日目ともなれば慣れる。そう、すでに三日目だ。旅立ちの予定は明日だというのにこの男は三日前から居座っていたのである。