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サプリメント

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 なんの酔狂でサガは多額の金を支払ってまで、今もなお紛争の続くこの土地に行きたがったのだろうかと訝しんだ。いわゆる役者魂とかで次回作の映画か何かに絡んだ役作りのためかと鼻白んだのだ。

 ―――ま、そういうのもありかもしれないが。私の自伝でも書いてもらおうと思ってね、シャカ、君に

 本気とも冗談ともつかぬ調子で煙に巻きながら、「詳しくは目的の場所にたどり着いてから」と言い切ったサガは宣言通り、アパートでもエアポートでも語ろうとはしなかったし、ずっと、あの調子でふざけることしかしなかった。だが、決して安全ではないこの国の入り口に辿り着いた時から、すっかりお調子者のなりは潜め、それこそ別人のように厳しい表情を浮かべるサガを目にするようになった。
もっとも、その姿も数多演じてきた「役」のひとつかもしれなかったけれども。

「約束通り、サガ、君には色々と質問をぶつけて、身ぐるみ剥がさせてもらうから覚悟したまえ」

 人の命を奪う銃口ではなく、今のこの瞬間を焼き付けるカメラのレンズを遠慮なくサガに定める。今までも様々な場所、時でずっと狙い定められ続けてきたサガにとっては息をするように自然なことなのだろう。絶妙すぎるほど周囲の風景と溶け込む場所に佇み、表情を作り上げていく。正直、薄ら寒ささえ覚えるくらいだ。

「元より承知だ。なんなら今すぐここで脱いでみせようか」
「……本当に脱がなくて結構だ」

 シャツの前を肌蹴ようとしたので、思わずカメラを降ろし、眉を顰めた。
ああ、でもこの男のヌードを撮って写真集でも作れば当面は金銭面で苦労しなくて済みそうだなと、一瞬、打算的な考えがちらりと横切ったのは秘密である。

「そうか?残念だ」

 それでも、こうやって時折は軽口を叩いて見せるサガが小憎たらしく感じた。どこまで彼は「サガ」という人物を演じ続けるのか、興味が沸いた。そして、この旅でサガの本性をしっかりと暴いて彼につきつける……それが私の密やかなコンセプトとなっていた。


作品名:サプリメント 作家名:千珠