サプリメント
断続的に聞こえていた銃声がやっと落ち着いた時、あたりは薄闇に包まれ始めていた。物陰に息を潜めて、嵐が通り過ぎるのを待つ。別行動となってしまったが、サガは幸いにも同行者たちとそばにいたので、うまくこの場から逃げおおせているだろうときっと、大丈夫だと私の勘は告げていた。問題は取り残された自分自身だけであったが、結構楽観的だった。これも長年の勘、根拠のない自信である。
そう長くは続かないと見込んではいたが、そろそろ憂さ晴らしも飽きたのだろう、闇雲に銃を撃ち放っていた連中が最初乗り込んだ場所へと集まり始めていた。遠くを捉えることのできるカメラはこういったときにも便利だった。ファインダーを覗き込んで一人一人、彼らを確認し、静かにその姿を収めていく。別に撮る必要はなかったけれども、習性みたいなものだ。
シャッターを切るたびに、これがカメラではなく、昔手にしていたライフルならば、きっと彼らはその場で笑顔を張り付かせたまま、地へと伏していたのかもしれないと皮肉な思いを巡らしていた時だった。
「……サガ!?」
集団の一人がふざけて手を伸ばした先、覆い隠していた布が剥ぎ取られ、素顔をさらした男の顔を見て驚愕した。
まぎれなく、そこにサガがいた。暗がりの中ではあったが、造形はまさしく彼でしかなかった。息を呑み、シャッターを切った瞬間、遠く距離を置いたはずの彼の視線がまさしく私へと定められた。そして、反射的にかまえられた銃は遠距離を狙えるソレ。咄嗟に身を隠そうとしたのと同時に、焼けるような熱さを左腕に走った。
「くっ!」
熱さと痺れを感じて、撃たれたのだと理解するよりも先に、身体は動いていた。遠く離れた場所から怒声が響き渡る。一刻もこの場から離れなければならないと身体が命じるままに私は駆け出した。