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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL

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この村の人達特有の布地の服を着ているが、彼のそれは少し丈夫そうなものである。革の手袋に革のブーツはまさしく活発な少年をさらに引き立てている。
「こら、この騒音公害!」
 疲労が大きく、ジェラルドはこの声に気付くのに少し時間がかかった。
「あ、あぁ…ジャスミンか…」
 ジェラルドは息を切らしながら答えた。
「どうしたんだ、こんなところに?」
 ジェラルドは上半身のみを起こした。
「まぁ、忘れたって言うの?」
 ジャスミンは口を尖らせた。
 ジェラルドは思い出した。
「あ!あぁそうだった、今日はガルシア達の…」
 ジャスミンがジェラルドの隣に座った。
「あの日以来だったわね…」
 ジャスミンは過去を振り返る。
「あなた達がエナジーの練習に熱中し始めたのは…」
「あぁ、そういやぁそうだったなぁ」
 ジェラルドは間延びした感じで答えた。
「一体何があったというの、あの三年前の事故に?」
 ジェラルドは答えに詰まって、俯いた。
 しばらくの間沈黙の時が過ぎた。
 ジャスミンは息をつくと立ち上がり言った。
「まぁいいわ、とりあえずロビンを迎えに…」
「オレたち助けを呼ぶ途中で倒れてたんだろ!?」
 二人の声は完全に重なっていた。なのでジャスミンには聞こえなかったようだ。
「え、何か言ったジェラルド?」
 ジャスミンは驚いた様子で訊ねた。しかし、ジェラルドはただ首を横に振るだけであった。
「ねぇ、言いたいことがあるなら言いなさいな」
 ジャスミンはジェラルドに詰め寄る。
「何でもない!!」
 ジェラルドが大声を上げた。しかし、すぐにばつの悪そうな顔をした。
「ゴメン…」
 一言だけ言うとジェラルドは黙り込んだ。
「変なジェラルド!」
 ジャスミンが言う。
「さぁ、だいぶお日様も高くなってきたわ。早くロビンの家に行きましょ!」
 言うとジャスミンはさっさと行ってしまった。
「ま、待ってくれよぉ」
 後に続いてジェラルドも歩き出した。
    ※※※   
『キャッチ』
 エナジーが発動された。
「う〜ん、藁だけじゃ無理かな」
 ロビンは依然屋根の修理をしていた。
 あれから大きく空いている穴をどうにか直そうと色々試してみた。
 今までの穴同様に藁を詰め込む作業をしてきたのだが、どうも穴が大きすぎるらしい。天井裏に藁が落ちてしまうだけだった。
「こりゃあ材木も必要か?」
 ロビンは屋根の下を見た。するとうまい具合に穴にはまりそうな板が置いてあった。しかし降りて取りに行くのでは面倒である。
「よぅし、あれは使えそうだ」
 ロビンは手をかざした。
『キャッチ』
 エナジーを使う。しかしそれは少しばかり重いのか、エナジーが途中で途絶え、板が落ちてしまった。
「あらら、さすがに無理だったか。だったら…」
 諦めて取りに行くのかと思いきや、ロビンは再びエナジーを使う。
『キャリー』
 2つのエナジーの光が板を挟み込むようにして宙を舞う。そして板はロビンの下へとやって来た。
「よしっと、それじゃこれを組み込むか」
 ロビンは釘と金槌を取り出し板に釘を打ちつけた。
「これで…」
 ロビンはエナジーを使った。
『キャッチ』
 そして藁を詰め込んだ。出来上がりである。
「やれやれ、終〜わりっと!」
 ロビンは両腕を目一杯上げて背伸びをした。
「ロビン、出来たの?」
 ロビンの声を聞きつけたのか、母親であるキニーがロビンに問いかける。
「ああ、終わったよ。母さん」
 自信満々にロビンは答えた。
「どれどれ…」
 キニーが梯子を使い、屋根に登ってきた。
「うん、しっかり出来てるわ。さすがロビンね!」
 キニーは満足げである。ロビンも満面な笑みを浮かべていた。
「17歳になったのよね、ロビン」
 ロビンは先週誕生日を迎えた。
「ホント、ドリーの若い頃にそっくりになったわ」
 キニーは自分の夫、すなわちロビンの父とロビンを重ね合わせた。
「………」
 これを聞いてロビンは俯いた。
「まだ、哀しんでいるの?あの日の事を…」
 ロビンは首を横に振った。
「そうじゃないんだ」
「そうよね、もう三年も前のことだし…」
 キニーが言いかけたところでロビンが言った。
「悔しいんだ!」
 ロビンは少し声を荒げてしまった。
「あの時オレは何も出来なかった…、エナジーさえあれば、エナジーさえ使えればガルシアを、父さん達を死なせることもなかったんじゃないかと思うと悔しくて、悔しくて…」
 ロビンは気持ちのすべてをキニーに伝えた。
「そう…、だからあなたあの日以来エナジーの練習に明け暮れていたのね…」
 ロビンは頷いた。
「お〜い、ロビ〜ン。屋根の修理は終わった〜?」
 少し離れた所から少女の声が聞こえた。
 ジャスミンである。なんとも間が悪いことだ。
 ロビンはジャスミンよりもさらに離れたところからジャスミンを追いかけて走っている少年を見つけた。
 あの真っ赤な火山頭はジェラルドである。
「よいしょっと」
 そうこうしている間にジャスミンは梯子を使い屋根に登ってきた。
「うわぁ、意外と屋根の上の景色って綺麗なのねぇ…」
 ジャスミンは手で日光を遮るようにして遙か遠くにある霊峰アルファ山を見た。
「こんにちは、ジャスミン」
 キニーがジャスミンに挨拶をすることでジャスミンははっ、となった。
「こんにちは、おばさま」
 ジャスミンは居住まいを正した後丁寧に挨拶した。
「キニー、でいいわよ…」
 キニーは微笑みながら言った。
 それに対してジャスミンも微笑み返す。
――アルファ山、か…――
 そんな中ロビンは1人物思いに耽っていた。
――オレ達ハイディアの民はアルファ山のソル神殿を守護するためにエナジーを授かった。ならばあの山に、ソル神殿に行けば更なるエナジーを得ることが出来るんじゃないだろうか?――
 ロビンはアルファ山を登ることを考えた。しかし、その考えはあっさりと取り消された。というのもソル神殿はおろかアルファ山に行くことさえも禁じられていたからである。
 その昔この世界に錬金術が存在していた時代、人々が力を独占しようと争っていたとき、アルファ山の神がそこに封じたという。そしてその封印をとく鍵となるものがソル神殿のどこかにあるとされている。万が一その封印がとかれてしまった場合、世界は滅びるという。だからこそハイディアの長はそこへ行くことを許していないのだ。
――いやいや、行ったところで怪我をするだけだろう――
 その他、アルファ山に行くことが禁止とされている理由として、魔物の存在がある。
 前にも何度か魔物が麓へやって来たことがあった。そのたびに村の若者たちが命からがら撃退してきた。
 たった一匹や二匹でそれほどまでに手こずるのだ。それ以上に出てこられたら、とても太刀打ちできない。
 そんなこんなでアルファ山は禁断の土地とされているのだ。
「どうしたの?1人で難しい顔して」
 ロビンはジャスミンの声に面食らってしまった。
「え?あぁいや、何でもないさ…」
 あははは、と笑いながらロビンは答えた。
「ふうん?」
 ジャスミンは首を傾げた。
「ハァ…、ハァ…全くそんなに急がなくてもいいのに…」
 息を切らしながらジェラルドが到着した。
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 作家名:綾田宗