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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 3

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 ふん、とニュンパは鼻で笑った。「人の心を覗けるのはお前達だけではないと心得ておけ!」
    ※※※
 フーチン寺の滝壺は一見ただの穴なのだが、よく見ると穴は深そうに見えた。その割れ目に手を伸ばすと確かにその奥には空間がある。
 ジェラルドは滝の中へと身を預けた。
 びしょ濡れになりながら滝壺の中を見渡すと、そこには数々の試練が待ち受けていた。
 まず、水の上を渡る手段はその上に浮かぶ角材を利用しなければならなかった。玉乗りの要領で前に進んでいくわけだが、困ったことにそれは何かにぶつかるまで止めることは出来ないのである。無理に止めようものならバランスを崩し、水の中へと転落してしまう。さらに悪いことに水は緑色に濁っており、透明度は最悪なものだった。見た限りでは水深も相当ありそうである。落ちたら無事ですまされそうにない。
 ジェラルドはおっかなびっくりに角材を伝って沼を越えた。しかしそこは行き止まりであったが、赤い色をした宝箱が一つあった。
「へへ、こいつが奥義ってやつかい?」
 ジェラルドは迷わず宝箱の蓋を開けた。すると、箱の中から無数の触手がジェラルドに襲いかかってきた。
 ジェラルドは触手につかまれる前に箱から手を離した。
「あっぶね?、ミミックだったか…」
 ジェラルドは腰から大剣を抜いた。
 ミミックという名の宝箱は徐々にその正体をさらしていく。何本もの触手が現れた宝箱の中に目が光っていた。「オレを食いたかったようだが、残念だったな!」
 ジェラルドは大剣を思い切り振りかぶった。ミミックは自分の触手を宝箱の中に隠した。
 宝箱は非常に固く、斬ることは出来なかった。それどころか、力の反動でジェラルドは後ろに崩れてしまった。
 ミミックはその隙を逃さず触手を突き出してきた。触手はジェラルドの頬を掠めて傷口からは少し血が飛んだ。
「くっそ?、やるな…」
 ジェラルドは反動で痺れる手で頬を拭った。
「だが簡単にはやられないぜ」
 頬を拭う手の内で笑った。
『ヴァルカン!』
 ミミックの下の地面から火柱が上がった。火柱の中でミミックの触手が少しずつ燃え尽きていった。
「へへ、やっぱり火に弱かったか!」
 ジェラルドは笑った。
「一気に行くぜ!」
 ジェラルドはエナジーを強化するために精神を集中させた。
 解き放とうとした瞬間突然体が重くなった。同時に凄まじい眠気が襲ってきて膝をついてしまった。
――ま…さか…?――
 ジェラルドの予感は的中した。
 ミミックが催眠エナジーの『スリープ』を発動していたのだ。
 感じたことのない眠気に動けなくなったジェラルドを見て、箱の中の目がニヤリとした。
 ミミックは『フレアストーム』を発動してきた。強力な炎が地面を伝ってジェラルドに襲いかかる。
 ジェラルドは炎に焼かれて焼死した、かに思えた。
「あぶねえ、あぶねえ…危うく焼け死ぬとこだったぜ…」
 ジェラルドはそばの岩の陰で身を守っていた。しかしその身には剣の切り傷があった。
「あてて、眠気覚ましにしちゃあやりすぎたかな…」
 なんとジェラルドは『スリープ』で眠らないために自らの体を斬ったというのだ。
「ま、これなら当分痛くて眠くならないだろうな」
 ジェラルドは左肩を押さえている。出血もそこからなのでそこを斬ったのだと分かる。しかし傷は思った以上に深手であった。
 ミミックはまた『スリープ』を発動した。
『ファイアボール!』
 ジェラルドは無数の火の玉を発生させミミックにぶつけた。
「そのエナジーはテメーの目さえ見なきゃかかんねえんだよ!」
 ジェラルドは精神を集中させた。
『ヒートバーナー!』
 炎の中でミミックは雲散霧消していった。
 ミミックのいた所に小さく赤く輝く物が落ちていた。
 赤い宝石である。たいして高価な物には見えないが、何か重要な物であるような気がした。
 ジェラルドはそれをポケットに仕舞って奥へと進んでいった。
    ※※※
 ぶん、と棒状の板がしなった。
「心に邪念が見える。集中せい!」
 ニュンパはバチンと高らかな音を立ててロビンの肩を叩いた。
「痛った!」
 ロビンは悲鳴をあげた。
「ほら、もう一回ゆくぞ!」
「ち、ちょっと待ってくださいよ!」
 ロビン達はジェラルドが戻るまでの間、奥義の修行の代わりに僧侶の修行を受けることになっていた。何もせずただ時を過ごすくらいならとニュンパが提案してくれたものだが、これが想像以上に厳しいものだった。
 まず座禅を組むのだが、一見すれば簡単そうに見えるが、組んでいる最中は何も考えてはならない。別に考えなんて言わなければ分からないだろうなどと思うかもしれないが、相手は『リード』が使えるのである。時折かけてくるエナジーによって、ロビン達は度々棒の餌食となっていた。
「無の心にするって言ったって『リード』されればびっくりしますよ」
 ロビンは口を尖らせた。
「うるさい、文句を言っとる暇があるならもっと集中せい!」
 また叩かれた。
――どれ、こやつの心も覗いてみるかの…――
 ニュンパはリョウカの背後に寄って、念じた。
『リード』
 リョウカはロビン達のようには動じなかった。
『………………』
 動じないばかりか既に無の心に達していた。
 ニュンパが驚いていると、リョウカから力の流れを感じた。
『な、なんとワシの気を跳ね返しただと!』
「そうですか、これが無念無想の境地ですか…」
 リョウカは言った。
「素晴らしいですね、ニュンパ殿」
 リョウカはまた目を閉じ、精神統一に戻った。
――こやつ、何者じゃ…?――
 ニュンパは底知れぬ驚きに包まれていた。
    ※※※
 視界がまたぼやけた。
 ジェラルドはまた倒れ込みそうになる。
「く…そぉ…」
 先程自ら傷付けた左肩からは血が滴っている。傷口には幾重にも布を巻き付けていると言うのににじみ出ている。ここまで来るまでにまた魔物と戦ってきたので、戦う度に傷口が開いてしまっていたのだろう。
 皮肉な事に『スリープ』の眠気覚ましにつけた傷が今では目の霞む物になっている。
「少し休むか…」
 ジェラルドは壁に寄り添って腰を下ろした。そして傷口をふさいでいた血まみれの布を取り去って傷口をのぞいてみた。
 出血は止まってきたようだが、無理をすれば簡単に開きそうである。ジェラルドは新しい布を取り出し、傷に巻き付けた。そしてヒールナッツも取り出してそれを口に運んだ。甘い風味が口の中に広がり、それが消える頃には少し体が楽になっていた。
 ヒールナッツには不思議な作用がある。見た目は単なるナッツだが、食べた生物の体力が回復するほど高い栄養分が含まれている。しかし回復すると言っても体力がある程度戻るだけで傷は全く治らない。『プライ』や『キュア』には及ばないが、今のジェラルドには体力さえ戻ればどうにかなる。
 数10分ほど休んだ後にまた立ち上がって奥を目指した。
 ヒールナッツのおかげで体力がだいぶ回復していた。足取りも軽い。今ならば魔物が現れたとしても十分に戦えそうである。しかしその後は全く魔物が現れなかった。