二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 3

INDEX|3ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

 彼は最期に遺言を残していった。「あまくもの剣はあるべき所に返せ」と。
 それからひと月ほどたった日に保管してあったあまくもの剣は跡形もなく消え去っていた。
「…ただの昔話だ。だが、オロチは本当に存在する。その封印を解き放つ助長をしている者がいるのだ」
 メアリィは訊ねた。
「それは誰なのですか?」
「シン、という男だ」
 メアリィには聞き覚えがなかった。
「ごめんなさい、その方は知りませんわ」
 リョウカは少し落胆していた。
「あの、そのシンという方はどうしてその様な事をなそうとされているのですか?」
 リョウカは一息ついて話し始めた。
 近年のイズモ村では日々オロチを守神として崇めていた。実際にもともとはオロチは豊作の神として奉られていたのだった。
 古代に錬金術がまだ世界にあった頃、地のエナジーがオロチに影響を及ぼし、オロチは暴走し始めた。
 エレメンタルの灯台の灯火が消され、錬金術が封印されると同時にオロチもあまくもの剣も消え去ったとされている。
 これらの事からオロチとあまくもの剣の存在は地の灯台によるものだと推測できる。
 そんな折りあまくもの剣の力でオロチを完全に討滅できると信じ、地の灯台を解放させるべくイズモ村を飛び出していった者がいた。
「その方がシンという人なのですか?」
「ああ」
 リョウカは続けた。
「私は奴を止めるために後を追って旅を始めた。地の灯台を灯し、解放させるなど絶対にしてはならないことだ。もし、あまくもの剣が現れずオロチだけが復活したらどうする、村の…いや、世界の終わりだ」
「そういう事だったのか」
 リョウカの後方からロビンの声がした。見るとロビンだけでなく中性的な少年と火山を彷彿させる髪をした少年も共にいた。
「こうでもしなきゃ話聞かせてもらえないと思ってさ」
 ロビンは前日に話を聞かせてもらえなかったので、メアリィに頼んで2人の目の届かない所で話を聞くという手段をとっていた。早い話立ち聞きということになるが。
「そんな目的を持ってるなら尚更1人では行かない方がいい」
「立ち聞きとは、悪趣味だな」
 リョウカは相変わらず痛いところをついてくる。ロビンは少し怯んだが負けずに続けた。
「リョウカが言ってたシンってやつはきっとサテュロス達と一緒のはずだ。オレ達は奴らを追っているんだ。一緒に来ればシンにも会えるはずだ」
 リョウカはそっぽを向いた。
「私はシンに会いたいのではない、奴を斬らなければならんのだ」
「戦うつもりだったら敵の方が数が多いんだ。それでも勝つ自信はあるのか?」
 く、とリョウカはのどの奥で声を洩らした。
 確かに勝てる自信はあるかというと実際にはなかった。他の者達はどうか知らないが、少なくともアレクスは強大な力を得ている。これについては身を持って知っている。シンだって、過酷な旅の中で見違えるほど強くなっているのかもしれない。
「しかし私は…」
「あの、リョウカさん」
 メアリィは言った。
「何でも1人で背負い込む必要はないと思いますよ」
 リョウカははっとした。
 メアリィの言うとおり、使命感にばかりとらわれている自分がいた。
「一緒に行こうぜ、リョウカ」
 ロビンは言った。リョウカは俯かせた顔を上げた。
「ふ、仕方ない。そこまで言うなら…」
 最後まで素直な気持ちを表さなかったが、リョウカはようやく承諾してくれた。
――案外、私は心のどこかでこんな奴らとの出会いを求めていたのかもしれないな…――
 リョウカは思うのだった。
「これからよろしくな、あ、オレジェラルドっていうんだ」
 ロビンの横にいた2人のうちの火山頭の方が自己紹介した。
「ボクはイワンです。よろしくお願いします」
 イワンは深々と礼をした。
「ジェラルドにイワンか、私はリョウカだ。…よろしく」
 リョウカもまごつきながらも名乗った。
「よし、それじゃ今日は旅の準備を充実させよう。なんせ仲間が2人も増えたんだからな」
 ロビンの提案にジェラルドは不思議に思い、訊ねた
「ロビン、2人ってリョウカの他に誰かいるのか?」
 この言葉にメアリィはムッとした。
「まあ、ジェラルドったら私を忘れるなんてひどいですわ」
 ジェラルドはあわてて謝罪した。
「ご、ごめん…って、だってメアリィは…」
 言葉の続きはメアリィ自身が続けた。
「私はこの村の病気に苦しむ人達を助けるためにいたのです。…皮肉な事ですが、灯台が灯ったことによってどんな病もたちどころに治す水を湧かす『ヘルメスの泉』がまた湧き始めたのです。だから、私は旅に出ても平気なんです」
 ひとしきり話を聞いて、ジェラルドは思い出した。
 確かに灯台を登る前に通ったエントランスホールには涸れてしまった泉があった。しかし、灯台が解放され、サテュロスとの戦いによってジェラルドは気を失っていた。泉の存在は知っていたが、それがまた湧き出しているなどとは知らなかったのだ。
「そういう訳だ」
 ロビンは言った。
「さあ、旅の準備を始めるぞ。多分村の店の店員も病気が治って店を再開しているだろう」
 ロビンの言葉に従って、一同は宿を後にした。
    ※※※
 夜も更けたイミル村の宿で、ジェラルドが暖炉の炎を見つめていた。
 ロビンやリョウカは既に寝入っている。メアリィは自分の家に帰った。村人を治癒する彼女の手伝いをし続けてきた孤児達に旅立つ旨を伝えるそうである。
 その日旅の準備をしようと店に行き、食料などを購入しようとしたが、村人は皆疫病におかされていたため仕入れを全くしていないとのことだった。
 幸い、道具屋だけは貯えがあったので薬草などの傷薬は買うことができた。ロビン達には傷を治すエナジーが備わってはいるが、そうエナジーにばかり頼るのはよくないというロビン自身の提案によって傷薬を買っておくことになったのだった。
 食料は明日までに仕入れられるとのことなので、本当の出発は明日の昼ということになった。
 がちゃ、とドアが開いた。誰かが用を足しにでも行くのかと思っていたらその誰かがジェラルドの隣で暖炉にあたり始めた。
「やれやれ、今夜は一段と冷えるなあ」
 ロビンであった。
「ロビン、お前起きてたのか?」
 ロビンはジェラルドに向かずに答えた。
「なんだか寒くてしょうがないから目が覚めちゃったんだよ。…あ?寒い寒い」
 ロビンはもう一歩暖炉に近寄った。
「柄にもなく考え事かジェラルド?」
 ロビンは訊ねた。
「柄にもなくて悪かったな。オレだって何かじっくり考えたいことくらいあるさ」
 ロビンは軽く笑った。
「はいはい、悪かったって。で、一体どうしたんだ?」
 一息ついてからジェラルドは話し始めた。
「ガルシア達のことさ」
「ガルシア達の?」
「ああ、あん時はちらっとしか見えなかったけど、みた感じじゃ捕らわれてるというよりは協力してるって感じだったろ?」
「やっぱりお前にもそう見えていたか」
「また今度会うことがあったら…そん時はやっぱ戦わなきゃいけないのかな」
 ロビンは少し考えてからきっぱりと言った。
「戦わなければいけないだろうな」
 ジェラルドはロビンの答えに驚きを隠せなかった。
「ロビン、本気なのか?」