二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

機動戦士ガンダムRS 第7話 宇宙の傷跡

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

「戦いたがるものなどいません」
 フリット総理大臣がゆっくりしゃべった。
「わがコロニー連邦共和国には、好んで戦場に出たがる者などいない」
 フリット総理大臣は、立ち上がった。
「平和に穏やかに幸せに暮らしたい。
われらの願いは、それだけだった。
だがその願いを無残に打ち砕いたのは、誰です?
自分たちが進化した人種だという幻想にとらわれわれわれナチュラルを見下すのは。
われらは、忘れない。
『月面都市コペルニクスの悲劇』と『血のバレンタイン』を。
243721名の人命が一瞬のうちに失われた忌々しき事件から一年がたとうとしている。
それでも何とか最低限の要求で戦争の早期終結のため心を砕いてきた。
しかしコーディネーターは。
いやパトリック・ザラとムルタ・アズラエルは、その努力をことごとく無にしてきたのです。
われわれは、われわれを護るために戦う。
戦わねば護れないのであれば戦うしかないのです」
 その言葉に閣僚の皆は、戦争の早期終結のため固く決心した。


              ※

 ストライクガンダムとポッドらは、デブリベルトの中を探索していた。
しかし周囲には、隕石や完全に破壊されコロニー軍か地球軍のどちらの軍艦で何の艦すらわからないものがそこらじゅうにあった。
アークエンジェルも周囲のデブリに気をつけながらその後を追っていた。
すると目の前にひときわ大きなデブリが現れた。
皆は、その大きさに圧倒された。
しかし皆は、すぐにそれが何であるかに気づいた。
「これってスウィート・ウォーターの残骸?」
 皆は、今度はその冷たい墓標の姿に言葉を失った。
 スウィート・ウォーターは、血のバレンタインで破壊されたコロニーだった。
地球軍は、戦争の早期終結のためコロニー直接攻撃を実施した。
しかし核ミサイルの大量増産に失敗しすべてのコロニーを攻撃対象にできなかった。
そこで地球軍は、1基ずつコロニーを破壊する方法をとった。
そして最初に狙われたのがスウィート・ウォーターだった。
攻撃は、無事成功したがコロニー軍が地球にニュートロンジャマーを打ち込んだため核が使えなくなり戦争の早期終結が難しくなってしまった。
 皆は、ポッドから降りるとスウィート・ウォーターの内部に入った。
そこには、母娘の遺体がそのまま放置されていた。
それを見たミリアリアが悲鳴を上げた。
トールは、ミリアリアを抱きしめ遺体が見えないようにした。

              ※

 皆は、一度アークエンジェルに戻りブリッジに行き状況を報告した。
「報告します。
水は、スウィート・ウォーターにしかありませんでした。
スウィート・ウォーターには、最低でも1億tの水があります」
 バジルール副艦長がラミアス艦長たちに報告した。
「あそこの水を?
本気ですか?」
 キラは、スウィート・ウォーターから水をもらおうとしているバジルール副艦長が信じられなかった。
「あそこは、地球軍が核攻撃で破壊したコロニーでしょ?
コロニーを壊して利用したいときに利用する。
地球軍の体質は、その程度なんですか?」
 キラは、あまりに身勝手に感じ抗議した。
「水は、あそこからしか見つからなかったの。
わかって」
 ラミアス艦長は、キラに理解を求めた。
「誰も大喜びしているわけでは、ない。
『水が見つかった』と」
 フラガ大尉もそれに続いた。
「俺たちだってあそこから物資を得ることは、したくないさ。
でも仕方ないだろ。
俺たちは、生きてるんだ。
なら生きなければならないんだ。
それともお前は、スウィート・ウォーターの犠牲者たちに『申し訳ございませんでした』と俺たちにもあのようになれと」
 そういうとフラガ大尉は、スウィート・ウォーターの墓標を見た。
キラは、スウィート・ウォーターで水の回収をしてはいけないという道徳心と生きたいという本能の狭間で揺れていた。

               ※

 大西洋連邦の首都のワシントンにあるホワイトハウスでは、パトリック・ザラ大統領とシーゲル・クライン副大統領が戦況について話をしていた。
「もうやめようじゃないか。
これ以上戦っても無意味な犠牲を出すだけだ」
 シーゲル副大統領は、停戦を考えていた。
「無意味だと?
無意味なことは、ない」
 パトリック大統領は、それを否定した。
「最初からレノアを殺したナチュラルを滅ぼすために戦う。
それだけだ」
 パトリック大統領は、完全に憎しみだけで戦いを続けていた。
「その心こそ無意味と言っている」
 シーゲル副大統領は、憎しみでは何も解決しないと考えていた。
その言葉にパトリック大統領は、シーゲル副大統領の胸倉をつかんだ。
「貴様に何がわかる?
貴様のように妻子が健在な貴様に何がわかる?
私は、本当に落ちこぼれの無能な男だった。
にもかかわらずレノアは、そんな男を愛し無能な男を1国の代表にまで育て上げたんだ。
私にとってレノアは、人生のすべてだ。
そんなレノアの敵討ちのために戦うことがなぜ無意味といえる?」
 パトリック大統領は、鬼のような形相で叫んだ。
シーゲル副大統領は、もはやパトリック大統領の暴走を止めることは不可能だと感じていた。

                ※

 大西洋連邦国内にある大型パネルにシーゲル・クラインの娘のラクス・クラインが映った。
そして「静かな夜に」を歌った。

                ※

「ケイト准尉」
 査問会が終わりセントラルハウスを出たところでマーク少将がケイト准尉に命令を出した。
「君たち第251艦隊にもアーガマもどき捜索の任務が下った。
出発は、24時間後の18:00に出発だ」
「了解」
 ケイト准尉は、マーク少将の命令に敬礼した。

                ※

 2人は、リムジンエレカに乗り宇宙軍庁に向かった。
宇宙軍庁の近くには、宿舎もあり出撃が近い軍人はここで最後の休暇を過ごす。

                ※

 アークエンジェルでは、軍人たちが皆折り紙でお供えの花を折っていた。

                ※

 そして折り終わると代表としてミリアリアが折った花をスウィート・ウォーターに一斉に投げた。
そして皆は、黙祷した。
ラミアス艦長は、ペンダントを取り出しそれを力いっぱい握っていた。

                ※

 パトリック大統領は、1人花束を持って墓にいた。
そして彼は、前の墓にその花束を置いた。
その墓石には、「レノア・ザラ」と刻んであった。
しかしその墓石の下には、肝心の遺体がない。
 レノアは、月面都市コペルニクスの悲劇の爆発テロのとき爆発物の一番近くにいたため遺体が原型を保っておらず生存者にレノア・ザラがいなかったため死亡扱いになった。
しかし当初パトリックは、レノアがひょっこり帰ってくるんではないかと淡い期待をしていたがその期待はレノアの致死量の血痕が確認されたことで打ち砕かれた。
 パトリックは、遺体が埋められていない墓標の前で手を合わせた。
そしてナチュラルの皆殺しを約束しその場を去った。

                 ※