Wizard//Magica Wish −6− 前編
「さっ…さやかちゃん…ほむらちゃん…大丈夫だよねぇ?」
「はぁっはぁっ…血は止まったし傷口は塞がったわ…心拍数も若干弱いけど多分大丈夫…」
「う…ふぅ…う…よ、良かったよぉ……」
「あぁもう!まどかったら鼻水まで垂らして…大丈夫、ほむらは死なないわよ」
3人が戦っていた頃、少し離れた場所で さやか はずっと ボロボロになった ほむら の治療に専念していたのだ。まどか は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃになりながらもずっと ほむら の手を握り声をかけ続けていた。
ほむら の外傷は さやか のお陰でほぼ完治したのだが、今だに意識は戻らなかった。ソウルジェムを見る限りかなり魔力を消費していた…よほど凄い戦いが行われていたのだろう。
「ほむら のこんな姿、始めてみたね…まどか」
「うん…ぐすっ…ごめんね、ほむらちゃん…私がもっと早く気付いていればこんな事ならなかったのに…」
「もう、まどか はなんも悪くないのよ?…けど、もうちょっと私達頼ってくれても良いじゃない…大体、戦闘が始まれば魔力の波動で私達も感づくのに…私達に気づかれないように戦っていたのね。どれだけ私達のこと信じてないのよ…」
「ちがうよ さやかちゃん。きっと ほむらちゃんは私達が傷つくのが嫌で一人で抱え込んじゃったんだよ。うん、きっとそうに違いないよね」
「ったく、本当にまどかは…あんたみたいな良い人、私が男なら絶対彼女にするんだけどね!」
「もう、さやかちゃんったら…」
まどか は片方の手で ほむら の手を握り、もう片方の手で ほむら の頭を優しく撫でた。きっと彼女は一人で辛い思いをしながら戦っていたのだろう。何故、彼女は自分たちに心を開いてくれないのか…一体何が彼女を閉じ込めているのか。
「本当はきっと思いやりがあって…優しい子なんじゃないのかな…ほむらちゃんって」
こんな近くで彼女を見たのは始めてだ。
良くみると随分と肌が白く全く荒れていない…部屋の中での生活が長かったのだろうか?普段は冷酷な目つきだがこうして見るとどこか悲しげなようにも見える。
「ほむらちゃん、目、覚ますよね?」
「まぁ安静にしていれば…ね。それより まどか。私も杏子達の応援に行ってくるから、ほむら の看病お願いね…正直、私もあの女に一発入れてやんないと気がすまないよ」
「さやかちゃん…」
「大丈夫!周りには杏子やマミさんだっているんだから!じゃ、あと頼んだわよ!」
「うん、無理しないでね?」
さやか は勢いよくその場を後にし、その場には まどか と今だに目を覚まさない ほむら の二人だけになった。
まどか は先程より手を握る力を強くし、さやか の姿が見えなくなるまでその後ろ姿を見続けていた…。
作品名:Wizard//Magica Wish −6− 前編 作家名:a-o-w