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Wizard//Magica Wish −6− 前編

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「ルパッチマジックタッチゴー!『ディフェンド』プリーズ!」
「杏子ちゃん!次は上から来るよ!」
「おう、任せろ!!」

ウィザードと杏子は二人がかりで比岸の魔女を相手にしていた。魔女は大型のためその場から移動することはできないが、魔女を守るかのように何もない空間から魔力砲を二人目掛けて容赦なく降り注いでいた。ウィザードは杏子を魔力砲から守り、なんとか相手のすぐ付近へと近づこうとする。だが近づくにつれて集中砲火が増しなんとか防御するもその隙に遠くへと逃げられてしまうのだ。

「ハルト、こんなんじゃキリがないよ!また一気に近づいて叩きのめそう!」
「それじゃさっきの二の舞になっちゃうよ、…だったら、遠くからでも動きを封じ込めるまでだ!」

ウィザードは何かを思いついたのか、右手の指輪をはめ直し新たな指輪を装着した。
「『エクステンド』プリーズ!」
「うわっまたその魔法かよ!?」
左手だけ伸びた状態にし勢いよく比岸の魔女目掛けて腕を伸ばしていった。魔女は魔力砲を放つも不規則な動きをする左手には全く当てることができなかった。
「よし、やったぞハルト!そのままあいつを拘束してやれ!」
「もちろん、そのつもりだよ」
魔女の目の前まで到達し、そのまま魔女を腕でぐるぐる巻にしようとした…が、魔女はそれを察知し空中へと飛びそれを回避したのだ。

「な、あいつ卑怯だぞ!!」
「まだだよ!杏子ちゃん、俺の腰からバインドの指輪とって右手に装着して!」
「わかった!…こ、これか?」
「ちがう、それはコネクト!その一個下!」
「あ、これか!ほら、たしか中指だったな」
「…っ!!きょ、杏子ちゃん早く!ちょっとヤバイかも!!」

魔女は二人目掛けてその大きな口に高圧縮された魔力を溜め始めた!流石に圧縮されきった魔力が直撃なんてしてしまうと身体の痕跡のひとかけらすら残らないだろう。
杏子は少々焦りながらウィザードの右手にバインドウィザードリングを装着し、ウィザードは右手でベルトを操作し魔法を発動させた!

「『バインド』プリーズ!」
「よしっ…捕まえた」

魔女の口から圧縮されきった魔力砲が発射される寸前でウィザードの伸びきった左手の先からさらに拘束魔法を発動させ魔女の身動きが取れないように拘束した!それと同時に魔女の口に圧縮されていた魔力は分散され言葉に出来ない悲鳴を上げて拘束魔法から逃げようとしていた。

「杏子ちゃん、お願い!」
「任せろ!」

杏子は自分の槍を空中へ投げ自分のソウルジェムを手に取り力を溜め始める。
すると空中へ投げた槍は比岸の魔女の大きさと同程度まで巨大化し、まるで生き物のようにくねくねと動いていた。その姿は正しく『龍』のようだった。
杏子はその槍の先端に飛び移り、魔女目掛けて巨大になった槍ごと突っ込んでいった!!

「これで、とどめだァァァァァ!!!!」

瞬間、杏子は比岸の魔女を貫いた。
魔女は悲鳴を上げながら地面へと落ちていく…だがまだ力があるのか最後の抵抗かのように闇雲に魔力砲を放ち始めた。
「くそっまだか!」
「大丈夫、これで最後だ」
「ルパッチマジックタッチゴー!チョーイイネ!『キックストライク』サイコー!!」

ウィザードは足に炎を纏わせ魔女の元へと高く飛び、重力に身を任せて渾身の蹴りを放った!この蹴りが魔女に直撃し今度こそ魔女は力尽き地面へと倒れてしまった。
「『リボーン』プリーズ!」
ウィザードは完全に魔女が消滅する前に魔女のグリーフシードをウィザードリングへと変化させ、まず一つの脅威を駆逐することに成功した。

「おっ、こいつは凄い魔法だ」
「そんなことよりハルト、マミの奴が心配だ!早くいこう!!」
「あぁ、もちろん!」

・・・

「っ!やるじゃない…ずっと私に攻撃する暇を与えさせないなんて」
「……っ!……っ!!」

マミは無言でメデューサと距離を取りつつマスケット銃を放ち続ける。
マミの場合、近接戦闘の魔法が乏しいため、間合いに入られると圧倒的に不利になってしまう。そのため絶対に相手に近づかせてはいけないことが一番重要なのだ。
一瞬の隙を見せれば容赦なく相手は自分を切り刻んでくるだろう。
「(いくら動きが素早くても範囲の大きい攻撃なら…っ!)ボンバルダメント!!」
「っ!!…一度に限らず二度まで私に傷を…」
巨大な銃を出現させ広範囲による銃弾をメデューサに叩きつけた。直撃…とまではいかなかったが、確かにダメージは与えさせる感覚はあった。

「はぁっ…はぁっ…どう?今の魔法少女も捨てたものじゃないでしょ」

「確かに…あなたは強いわね…けど、…これなら?」

「…っ!!?」



身体が、動かない?

おかしい…脳からの指示とは裏腹に手の指一本すら動こうとはしない。
全ての指示が無視されているのだ。
何故だ。これも彼女の魔法なのだろうか?
不味い…ただでさえ近づけば危険だというのに防御すらままならない状態の今では確実に自分はやられてしまう…!!

「ふふっ!今、あなたは口すら開かない状態でしょ?…私の『目』を見たわよね。私の目を見た相手は身体が石のように動かせなくなってしまうのよ。まぁ効力は数十秒なんだけどね…でも、逆にその数十秒が恐怖だと思わない?」

メデューサは剣を持ちゆっくりとマミの元へ歩いていく…口すら開かないので悲鳴すら出せず、大量の冷や汗が流れ落ちる…。
「…っ…」
「さあ、これで終わりよ…あなたも早く絶望して私の『一部』になりなさい」
「…?…」


一部?
一体なんのことだろうか…いや、今はそんなことどうでも良い。
この窮地を一体どうやって逃れればよいのだろうか。
今、首元に剣が突きつけられている。
もはやこの場を逃げ出すことは不可能だ。

「さぁ…声も上げずに死になさい!!」
「……!!…」

「てやぁぁぁっ!!」
「何!?ぐふっ…」

絶体絶命のそのとき、杏子が勢い良くメデューサの背中を斬りつけた!!メデューサは態勢を崩し、ようやくマミ身体の自由を取り戻し窮地を達したのだ。
「…はぁっ!!…はぁっ!!…た、助かったわ、佐倉さん」
「悪ぃマミ!遅くなった!!」


「まさか、あの魔女を…」
「その、まさかだ。メデューサ」
「ゆ、指輪の魔法使い!」

ウィザードは右手に先程入手した指輪を装着しメデューサに歩みよっていた。
メデューサは頭の蛇をウィザードに伸ばして再び襲わせた。だがウィザードは一切躊躇することなく無残にも己の剣で蛇を切り刻んでいく。
「何!?」
「もう同じ手は効かない…さぁ、ショータイムだ!!」
「ルパッチマジックタッチゴー!『コピー』プリーズ!」

「何をしても無駄よ!」
メデューサは剣を持ち一瞬でウィザードの元へ移動し、剣を振り下ろした!ウィザードは華麗にその斬撃を裂け、逆に自分が彼女に切り刻もうとした!
「どこを見ているの?…っ!!あぁっ!!」
だが、メデューサの読みはこの時始めて外れたのだ。
なんと目の前にはウィザードがもう一人存在していた!!
避けたのはその内の一人であり、もう一人のウィザードの斬撃がメデューサに直撃し、よろけてしまった。

「すげぇ…ハルトがもう一人」