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Wizard//Magica Wish −6− 後編

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「巴マミ、別に身体を拭いてもらわなくてもお風呂ぐらい入れるわ」
「ダメよ、まだフラフラじゃない。ほら、服脱いで?」

暁美さんは、何かと物事を拒んでくる。別にそれ自体は何も悪いことではないのだけど、少しぐらい頼ってくれても良いでもないか、というのが本音だ。
彼女は、一人で色々な事を抱え込みすぎてる。もちろん彼女の中に眠る本心なんてしらない。多分これから先も教えてはくれない筈だ。
それでも、今の彼女はきっと誰かを必要としている。
そのためには、無理やりでも自分が頑張らなくてはいけない。

「………。」
「ほら、こんなに汗かいて…っ…」

暁美さんの背中に、うっすらと色々な傷跡がある。これは魔女との戦いで出来たものなのだろうか?…だとすれば、信じがたいが彼女は数え切れない程の戦闘をこなしてきたことになる。流石に自分にはここまで数えられない傷跡ができたことはない。

「…あまり、ジロジロ見ないでくれる?」
「あっごめんなさい。ただ…凄い傷跡だなって」
「……今までの戦闘で出来た傷よ」
「やっぱりね。もう少し周りを頼っても良いんじゃない?暁美さんの事だから今までずっと一人で戦ってきたんでしょ?今は私や鹿目さん達が周りにいるじゃない」
「関係ないわ。私はこれからもずっと一人で戦い続ける。仲間がいたって、足でまといなだけなのよ。それに……」

仲間を失うという悲しみが増えていくだけじゃない

「それに…何?」
「いえ、なんでもないわ。もう結構よ」
「えっ」

汗を拭き取ったタオルをお湯に浸けて洗面所へ持っていく。あの時、暁美さんは一体何を言おうとしたのだろう。…けど、一つ確信できる事がわかった。

暁美さんは、私と同じなのだ。


「暁美さん、あなたの気持ち…全部とは言えないけどわかるわ。今のあなたは私とそっくりなんだもん」
「…?」
「だって私も…ちょっと前まで一人ぼっちだったのよ。今は鹿目さん達が傍にいてくれるけどね」


巴マミ、あなたはなんて愚かなの…
そんなの、今、この瞬間だけじゃ意味ないのよ。
本当の絶望っていうのは、全て後からやってくるものだから。



「わからないわよ、…これから、誰かを失う悲しみを背負うことになるかもしれない…あなただけを残して、みんな消えていく、なんてこと。あってもおかしくないのよ?」

「それでも、『記憶』の中ではいつでもみんなと一緒だから」

「……え…」

「私、みんなと一緒に生活してきて、わかったことがあるの」


最初は、ずっと一人ぼっちの戦いで何度も苦悩して、何度も泣いて…そんな辛い日々を過ごしてきた。けどある日。私の目の前に鹿目さんと美樹さんが現れた。
彼女達は右も左もわからない魔法少女のなりたてだった。
当初、私はそんな彼女を指導しようと魔法少女の先輩として指導に当たっていたわ。
けど時間が経つにつれてそんな上下関係も消えていった…私は、彼女達と魔法少女として通じ、日常でもお話する時間も増えて、…そしていつの間にか『友達』になっていた。
それから佐倉さんと知り合って、暁美さんやハルトくんとも知り合った。

最初は何もなかった空間から少しずつ輪が広がって、今は大きな輪に広がった。
魔法少女になって嫌なことも増えたけど、また新たな楽しみが増えた。

確かに一緒にいることはもちろん大事。けど、それ以上に「今まで一緒に過ごしてきた時間という記憶」が一番大事なんじゃないかなって思ったの。


「一緒に過ごした時間という記憶…」
「えぇ。だから今の私はとっても満足しているの!」
「だからって、まどか達と一緒に過ごす時間を増やして学校の友人はどうでも良いというの?」
「そんなことはないわよ。昔と違って、今は信じ合える仲間がいる。いずれ、こっちもなんとかするつもりよ」
「そう…なら良いわ」

彼女は、巴マミはいつの間にか強くなっていたらしい。
以前の彼女なら絶対に考えられない行動だ。
何故、一体何が彼女をここまで強くすることができたのか。

私には、わからない…。理解できない。

私は…彼女ほど強くない。


操真 ハルト…あなたが心配するほど、彼女は弱くないみたいよ。
もしかしたら、全てあなたのお陰なのかもね。



それから、幾日が過ぎていく…。

「暁美さん、目玉焼きは完熟派?それとも半熟派?」
「生は嫌いだから完熟で頼むわ」

私の為に一切手を抜かずずっと傍に居てくれる。日が経つに連れて本来人間が持つ自分の身体を修復する能力が働き次第に自由が聞くようになっていった。それでも彼女はまだ私を解放してくれない。…気が付かなかったがおそらく巴マミは貴重面なのかもしれない。

「マミ!今日はあたしとハルトが ほむら を見張っておくから今日ぐらい学校行ってこいよ!」
「え、でも…」
「たまには授業受けないと、まどかちゃんみたいにおバカさんになっちゃうよ?」

「そうね…、じゃ、お願いしようかしら」


・・・

−…巴さん、学校きたよ−
−不登校から立ち直ったのかな?−
−そのままずっと来なければよかったのに−

「………はぁ…」



・・・

彼女は普段通り学校に登校して下校時間になると まどか と美樹さやかを連れて帰宅してくる。玄関から部屋に入った瞬間、彼女は一瞬何かから解放されたような表情になるのだ。
「はい!これ今日のプリントだよ?」
「だいぶ回復したみたいだね、調子はどう?ほむら」

「えぇ、ありがとう…巴マミ?」
「…っ!え、なにかしら暁美さん」
「いえ、何か浮かない表情をしていたから」
私はあの表情の訳を聞いてみる。いや、本当はその理由を悟っていた。何回も繰り返し見てきた光景だ。間違いなく学校絡みだろう。おそらく、彼女は訳を話さずうやむやにするだろう。

「…えっと、別になんでもないわよ?ただ今晩の献立を考えていただけ」
「そう、ならいいわ」
思ったとおりだ。
ただ、これ以上追求するのも毒だ。この事には触れないようにしておこう。この問題は彼女自身の問題なのだから、なにも自分から突っかかっていく必要性もない。

・・・

「巴マミ、もうかなり身体が楽になったわ。そろそろ…」
「そうねぇ。…うん、じゃあ今日一日安静にしていたら暁美さんのソウルジェムを返してあげるわ。けど無茶だけはしないでね?」
彼女の手に自分のソウルジェムが光輝いている…ソウルジェムを見る限り一切の汚れがない。ソウルジェムは何もしなくても汚れは溜まっていくものだ。きっと彼女が定期的に貴重なグリーフシードを用いて汚れを取り除いてくれていたのだろう。全く、どこまでお人好しなのだか…。

「今日も佐倉さんに任せて学校に行ってくるから、なにか困ったことがあったら連絡頂戴!」
「あら、最近やけに自分から進んで登校するようになってるわね。なにか良いことでもあったの?」
「何もないわよ、ふふっ!…ただ、あの時暁美さんに断言しちゃったしね」
「あぁ…いずれなんとかするって事かしら」
「そう、今がその時なの。じゃ、行ってくるわね!」
「いってらっしゃい」