短文寄せ集め
「ぬくもり」
口付けをした。手を繋いだ。指を絡めてみると近藤が冷たいと呟いた。まるで死人のようだとそう言って土方の手を包み込むように握り、暖を与えるように手の平で揉む。雪が降っているからだろうと土方は応えた。積もるかな、トシ。近藤がそう言って子供のように笑った。さあなと素っ気無い返事をして、近藤の手を離す。触れ合うのも、じゃれ合うのもあまり好きではない。近藤の手は自分には熱すぎて、持て余してしまう。近藤が空っぽになった手を軽く握って、どうしてというような顔をするので、煙草を吸いたいからと嘯いて背中を向けた。腕を伸ばし、灰皿と煙草の乗った盆を胸の前まで引き寄せる。箱を叩いて出した一本を唇に咥え、火を点けようとした時、土方の背にとんと温もりが寄りかかってきた。肩甲骨の辺りがじわりと温かくなっていく。首を巡らせ肩越しに振り返ると、近藤の肩が見えた。近藤さん、と呼べば、傍にいるくらい良いだろうとどこか拗ねたような口調で言うので、思わず笑ってしまう。火の点いていない煙草を灰皿に放り出して、身体を起こした土方の方へ、拠り所を無くした近藤がごろりと転がってきた。仰向けになったその身体を組み敷くように押さえ、土方はゆっくりと近藤に口付けた。愛してるよとそう言って。