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短文寄せ集め

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「無題 (ツイッターから」

足の先から這い上がってくるような寒さに目が覚めた。冷たい爪先を布団の中で擦り合わせるようにしながら、テレビをつける。関東平野部では約10センチの積雪となるでしょう、と言ったアナウンサーの後ろには江戸城の内堀に落ちていく雪の映像が写っていた。

雪か…どうりで寒いはずだ。溜め息を吐いて布団から這い出る。薄明かりに照らされる障子を開くと、庭はところどころに雪をかぶり斑に染まっていた。まだ蕾の固い椿にも雪が積もっている。自分の吐き出した息に窓ガラスが曇っていった。

しばらく庭を眺めていると、まだ寝ていた近藤がうごめく気配がして振り返る。起きたのかと思ったがそうではなく、ただ寝返りを打っただけらしい。布団にうつ伏せになり、枕を抱き締めるように引き寄せた太い腕を見て、土方はストーブに火を入れると近藤の傍らへ戻った。

ストーブの小さな火がだんだんと大きく、明るくなり近藤の頬を照らし、額に落ちた前髪の影をぼんやりと作り出した。それがゆらゆらと揺れる様を見ながら灰皿の乗った盆を引き寄せ、煙草に火をつける。近藤の枕元にあぐらをかいて、煙草の先を燃やすと顔を逸らして煙を吐き出した。

宙を白く染め、やがてゆるやかに昇りながら消えていく煙を見ているとやっと意識がはっきりしてくる。土方はそのまま二口ほど吸い、まだ長いままのそれを灰皿に押し付けて潰した。起床時間まではまだ少しある。ストーブの火に当たりながら、立てた片膝に顎を乗せ、起きる気配の無い近藤を見つめた。

テレビでは番組が切り替わったのか、騒がしい笑い声が聞こえてきていた。雪の日の朝は静かだ。慌ただしく廊下を走ってくる足音も、怒鳴り声も聞こえてこない。まるでこの屯所に自分たち二人しかいないようだ。そんな馬鹿なことを考えて、唇を歪め笑う。

枕をぎゅうと抱き締めていた近藤の手に触れた。刀を扱う指は節が太く、先が平らだ。短く切り揃えられた爪を指で撫でると、それがくすぐったかったのか近藤の腕がひくりと跳ねた。枕を離し、ごろりと寝返りを打って仰向けになった近藤が低く唸ってゆるゆると目を開けた。

眉間に刻まれた深い皺。近藤にしては珍しく険しく尖った視線が、土方を見つけて不思議そうに丸くなる。眉が下がっていくその様がおかしくて、土方は笑いながら近藤の眉間を指で伸ばした。雪だぞと告げて、膝を崩し近藤に口付ける。近藤の手が土方の頬に触れた。

ああ、だから…トシが冷たいはずだ。そう言って近藤は土方の頬を暖かな手の平で包み込んで口付けをねだった。誘われるまま布団に潜り込みながら、土方は暖を取るように近藤の足に爪先を擦り寄せる。近藤は冷たいと文句を言って体を震わせたが、ふっと笑いながら土方の体を抱き締めた。
作品名:短文寄せ集め 作家名:aocrot