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Wizard//Magica Wish −7−

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さやかちゃんは必死に笑顔を見せる。けど、それは「笑顔」ではなかった。無理やり作った笑顔の底には、酷く悲しみが隠れていた。彼女の本来の望みは…その身体を直してあげた彼と一緒にいたい、傍にいたい…ということだろう。非常に難しい望みだ。…ん、待て。
この話…どっかで聞いたような…気のせいだろうか。
とにかく、今俺にできること。…考えたってわからない。思ったことを言うまでだ!!

「さやかちゃん」
「…何?」

「俺にはよく恋ってのがわからない。けど俺から一つだけ言えることがある」
「うん…」
「とにかく…その、あれだ。…思い切って…っ!!」


−ドクン…−

この感じ…以前も感じたことがある。
まただ…何故?


「?…どうしたのよ、急に」
「さやかちゃん!伏せて!!!」


冗談じゃない…なんでまたこの感じが押し寄せてくるんだ?
確かに…確かにあの時俺は…っ!!



急に、空から火炎弾が自分達の周りに降り注がれた!
俺はさやかちゃんを自分の胸元に引きつけ地面へと伏せた。ベンチに直撃し、無残にも燃え上がる。俺は混乱した。なぜだ…こんな高威力な魔法を放つことができるのは俺の知っている中で一人しかいない!!
「な、なんなのよ一体!!」
「この魔力…間違いない!!」

「見~つけた、指輪の魔法使い!!」
「…フェニックス!!」

上を見上げる。そこには…倒した筈のフェニックスの姿があった。
何故?
あの時確実に仕留めた筈だ。
別の個体?いや、違う。彼女の魔力の波動そのものが全く同じだ。
そんなことは良い。とにかく、目の前に彼女が再び現れたというなら…っ!!


「どういう経緯で復活したのかは知らないけど…」
「『ドライバーオン』プリーズ!」
「もう一度、倒すまでだ!」

「あいつ!…なんで生き返ってるのよ!!」


「時間がかかってけど、ようやくここまで再生することができたわ。正直、あなたがエレメント変化の魔法を使ってくるとは思いもしなかったけど、もう同じ手は通用しないわよ…覚悟なさい!!」

フェニックスは両手で自分の身体の数倍はあるであろう火炎弾を作り始めた。さやかちゃんはソウルジェムを取り出し魔法少女に変身し、俺も左手にウィザードリングを装着した。
「変身」
「『フレイム』プリーズ!『ヒーヒー!ヒーヒーヒー!!』」
ウィザードへと変身した俺はソードガンを構え、フェニックスのいる空中へジャンプをする!しかし奴はすんなりとそれを交わし、俺はそれ以上空中で静止することができず、なにもできないまま着地した。

「無様ね、指輪の魔法使い!さぁこれで…」
「後ろ、がら空きなんだけど!?」
「しまっ…く…」

「ナイス、さやかちゃん」

実は、俺はおとりだった。
フェニックスが俺だけを見るようにして、さやかちゃんは高スピードで後ろへと移動する。そのままフェニックスが作った大きな火炎弾を破壊する…といういかにもシンプルな作戦だった。
フェニックスは地上へと降り、頭から大量に蛇の生えた姿、「メデューサ」へと変貌する。どうやらフェニックスの状態ではかなり魔力を消費するらしい。

「少しは頭を使うようね…けど、これなら?」

「っ!!メデューサ、お前!!」
「ま、マジかよ…」

−Gertrud−

メデューサの後ろから這い上がるように2体のファントムが出現した。ちなみに さやか ちゃんにはこのファントムに見覚えがあるらしい。顔を引きつけさせながら「またかよ…」と口ずさむ。

「さやかちゃん、あのファントムと戦ったことあるの?」
「魔法少女に成り立ての頃にね…」

外見は…と聞かれると非常に答えにくい。まず、何が何だかわからない不気味な姿をしており、自分達の知る「魔女」とはかけ離れた異型の存在であることを判り易く示してくれている。見方によってはうつむいて長い髪を前にたらしているようにも見える。強いていえば…薔薇だろうか?薔薇に触手やハサミを付けた感じといえば伝わるだろうか。

「メデューサ、また罪の無い一般人を!」
「あら、気に触れたかしら?…まぁ今のあなたたちならこれぐらいで十分ね」

「っ…、おいおい、この前は一体誰にやられたのか覚えてないのかっ!?」

一気に踏み込み、メデューサの元へ駆け込む。ウィザーソードガンで下段切りをしようとした。だが、俺の剣はメデューサに届かなかった。いや、厳密にいえば、止められた。
「あ、言い忘れていたけど、…ファントムも以前に増して強力になっているわよ?注意しなさい」
「ぐっ…うわぁぁ!!」
「あ、あんたっ!!」

俺の足に、ファントムから伸びた触手で掴まれ、無残に地面へと叩きつけられた。ははっ、ほむらちゃんに何度か拘束魔法使用したことあったけど、ここまで身動きが取れないものとは…。このままでは拉致があかないので触手を切り倒し、なんとか態勢を立て直した。
しかし、時は既に遅く、メデューサはファントムを2体置いていったまま、どこかへと姿を消していたのだ。


「メデューサ!…いない!?」
「逃げたわね!くっそ…」
「それより さやかちゃん、このファントムをなんとかしないと」
「じゃあ私はこの一体なんとかするから、あんたはあっちをお願い!」
「わかった!」

俺は2体放たれた内の一体に向かって走った。
「『ビッグ』プリーズ!」
巨大化した右手でファントムに向かい張り手を放つ。だが直撃したのにもかかわらずファントムはピンピンしており、まるで今の攻撃が何の効果も無かったかのようだった。

「確かに、一筋縄じゃいかないようだな」
「『コピー』プリーズ!」
分身した俺は今度はウィザーソードガンのガンモードで何発も狙い撃ちする。単純に2倍の攻撃が当たっているため、ファントムはうめき声をあげながら身体をよろけた。だがファントムも当たっているだけではすまず、再び触手を伸ばし、拘束しようとしてきた。…いや、違う。その触手の先がおおきなハサミに変わり…。
「ぐあぁぁっ!!!!」
「っ!!あ、あぶね…」
自分の分身が、無残にもそのハサミに上半身と下半身に切断され、消滅してしまった。もしあのハサミが自分に向かってきたら今頃どうなっていたであろう。考えるだけでぞっとする。そんなことを考えている間に自分にも先程のハサミが向かってきた!

「ほっ…よっと!当たらなきゃ大丈夫だ!」

何度も身体を回転させ、ハサミと触手を避けていく。どの魔女やファントムにも言えることだが、あまり長期戦はしたくない。ここは一気に倒さなくては。
「シューティングストライク!」
「これでどうだっ!!」
フレイムシューティングストライクを魔女に向けて放った。属性効果が良かったためか、ファントムの身体は一瞬で燃え上がり、断末魔をあげた。
「『リボーン』プリーズ!」
「よっと…よし、まず一つ!」
もちろん、グリーフシードをウィザードリングに変えることも忘れずに回収した。

「きゃああっ!」
「さやかちゃんっ」
作品名:Wizard//Magica Wish −7− 作家名:a-o-w