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Wizard//Magica Wish −7−

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「やっぱ無理だよね…はぁ」
一日明け、俺は再びドーナッツを片手に持ち、恭介の病室へと目指す。ちなみに昨日のあの後の結果、「ばっかじゃないの!?そんなのできてたら苦労なんてしないわよっ!!」…と、さやかちゃんに怒鳴られてしまった。おまけに平手打ち付きだ。今でも思い出したかのように頬が痛む。

しかし、彼女の真意を知ってしまったからにはもう後戻りはできない。さやかちゃんは表に出さないだけで、全部内側にふさぎこんでしまっているのだ。このままじゃ さやかちゃんは一生救われない。契約とか、対価とか全部差し置いて、さやかちゃんにだって幸せになる権利はいくらでもあるのだ。このまま終わらせてしまう訳にはいかない!
「まだ、希望は捨てちゃ駄目だよな…絶対に、何かあるはずだ」
…と、自分を励ましてみるが、現状はものすごく困難だ。まず、さやかちゃんの初恋の人っていうのが誰のことなのだかわからない。あんなこと言っておいて今更誰なの?なんて聞くことはできない。さらに、その彼には既に彼女がいる。しかもその彼女っていうのが まどかちゃんと さやかちゃんの友達なのだ。下手すれば彼女達の関係すら崩れ去ってしまう危険性だってある。

「はぁ…だいたい、俺に恋なんてよくわかんないよ。おっと着いた…ん?」
恭介の病室に到着し、俺はドアを開けようとした…が。

−今日はお体の調子は良いのですの?−
−まぁ、それもあるけど。今日も最近知り合った僕の友達が来るんだ−
−へぇ、そうですの!私も一度、お会いしてみたいですわ!−

病室の中から、会話が聞こえてくる。
一人は恭介だ。だが、もう一人は一体誰だ?女の子の…声?
俺は現状を知るべく、いつもと変わらないマイペースでドアを開けた。

「見舞いにきたぞ、恭介…おっ」

「あ、こんにちは、ハルトさん!待ってましたよ!」
「あなたが…上条くんの友達さんですか?初めまして、私は『志筑 仁美』と申します」

「あぁ、操真 ハルトだ。よろしく、仁美ちゃん」
俺は目の前に座っていた、仁美ちゃんって子に頭を下げた。今時お嬢様口調とは…相当な令嬢なのだろうか。見た目は容姿端麗、やや緑色が入っている長いふわふわの髪に育ちの良さが判る温和な感じ、かな。ついでにすごく笑顔が似合う美少女だ。近くにあったパイプ椅子を取り出し、俺は仁美ちゃんの横へ座った。

「はいこれ、ドーナッツ買ってきたよ」
「毎度すみません、対したお返しもできなくって…」
「気にすんなよ!それより…恭介って意外にやり手なんだな、病室に女友達連れ込むなんて」
「あっ…えっと、その…違いますよ、ハルトさん」
「ん?違うって何が?」


「志筑さ…じゃなくて、仁美は僕の『彼女』なんです」


「えっ…」
瞬間、俺の頭の思考が停止してしまった。
今、恭介は何と言った?
彼…女……?こんな恭介には勿体なさすぎるぐらいの美少女が!?

「は、はぁぁぁ!!?…マジかよ…恭介、お前彼女いたの!?」
「すいません。この前、話そうと思っていたんですけど」

「あらあら、どうされましたの?操真さん」

俺は今だに興奮を抑えきれずに仁美ちゃんへと振り返る。
見れば見るほど仁美ちゃんがとても美しく…可憐に見える。いや、実際そうなのだ。こんなアニメやドラマにしか登場しなさそうな子が現実に存在するなんて…。羨ましすぎる。
やはり、恭介には勿体なさすぎる。こんな不条理があって良いのだろうか。
…はぁ、一度は体験してみたいシュチュエーションだ。寝たきりの彼につきそう美人すぎる彼女…。誰だって一度は憧れるだろう。

「…なんか腹立つ。やっぱこのドーナッツ今日は無し。持って帰る」
「えぇ!?僕、なにかしました!!?」
「はい、仁美ちゃん。これ持って帰って食べちゃって」
「こんなに沢山…流石に一人じゃ食べきれませんわ!」


・・・

「さっきは取り乱し過ぎたな…あまりにも突然だったから驚いたよ」

「ははっ、そこまでですか…」
「ふふっ!操真さんって面白いお方なのですね?」

俺は軽く咳払いをし、パイプ椅子に座る。どうやらタイミングが悪かったようだ。知らなかったとは言え、二人だけの時間に水を指してしまったような気がした。結局、俺はドーナッツの入った箱の蓋を開け、3人で食べながら色々な話しをする。
「あっ」
「あらら…上条君、こぼしてますわよ?」
「仕方ないな、ほれ」
恭介は若干麻痺が残る右手でドーナッツを食べていたため、食べかすを胸元に落としてしまった。おまけにチョコレートとコーティングされたドーナッツを取ったことにより、口の周りにチョコが付着していた。俺はティッシュを取り恭介の口元を拭いてやった。

「ハ、ハルトさん!…その…恥ずかしいですよ…」
「しょうがないだろ?回復しているとはいえ、麻痺は残っているんだから」
「ふっ…くすぐったい…」
「食べかすもこんなに落として…病院着が汚れちゃうよ?」

俺は丁寧に食べかすを綺麗に摘み、手元のティッシュに集めた。どうやら俺は自分で思っている以上にお人好しらしい。
「あら…あらららら…」
「あれ、どうした仁美ちゃん?」
何やら、隣りにいた仁美ちゃんが頬を赤くしながら俺たちを凝視する。何か悪いことをしてしまったのだろうか?それとも…あ、もしかしたら自分が拭いてあげたかったのだろうか。…はぁ、また彼女に悪いことをしてしまった。

「操真さんって意外に大胆ですのね……上条君と操真さん……。あぁ…これは、禁断の…」
「?」
「あ、すみません!私に構わず、どうぞ続けてください!!」
「あ、あぁ…」

よくわからないが、機嫌を悪くしてしまった訳ではなさそうだ。
俺は器用に食べかすを全て取り、ゴミ箱にティッシュを投げる。そして再び仁美ちゃんに振り返る…さっきより顔を赤くして口元に手を添えていた…一体なんなのだろうか?

・・・

また、少し時間が流れた。
二人の時間を邪魔しては悪いので、俺は恭介にCDプレーヤーを借り窓際で肘を付き永遠と曲を聴き続けていた。曲が終わるたびに二人の会話が自然に耳に入ってくる。
「この前、学校で家庭科の授業がありましたの」
「へぇ、何を作ったんだい?」
盗み聞き…という訳ではないが、ちょっとばかり会話を聞いてみる。内容はありきたりな世間話をしていた。

「調理実習でミートローフを作りましたの!でもゆで卵が半熟で切ったときにお肉と混ざり合っちゃって…」
「ははっ、今度作ってみてよ。僕も食べてみたいな」
「はい!もちろんですの!」

二人共、楽しそうだな。
俺もいつか彼女とか作ってみて、こんな光景を誰かに見せつけてやりたい…なんてことを考えてみる。

「あと…そうですの!この前抜き打ちテストがありましたのよ?突然のことで私驚きました!」
「けど、仁美は真面目だからもちろん満点とったんでしょ?」
「ふふっ!当たりですわ!」

しかし、なんだろうか。この違和感は。
俺の目の前に見える光景は幸せの彼氏彼女が語り合っている光景だ。
けど、何かが違う。

「仁美はさ、何か苦手なものってないの?あまりにも完璧すぎて逆に嫉いちゃうよ」
「えっと、いっぱいありますわよ?…その…ゴキブリとか…」
「ぷっ…」
作品名:Wizard//Magica Wish −7− 作家名:a-o-w