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Wizard//Magica Wish −7−

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「ただいま~…あれ?」
杏子ちゃん達が既にマミちゃんの家に帰ってきていると思っていた俺は、どこにも寄り道せずまっすぐ帰ってきた。しかし玄関を開けると、まどかちゃんのローファーどころか杏子ちゃんのブーツすら無かった。まだ帰ってきてはいないのだろうか?だが、一足だけ玄関の片隅に靴が綺麗に置かれていた。

「あら、さやかちゃん一人とは珍しいね」
「お~っす!お邪魔してるよっ!」
「いや、ここ俺の家じゃないんだけどね」

リビングには漫画を読みながらくつろいでいた さやかちゃんの姿があった。

美樹 さやか。
まどかちゃんのクラスメイトでいつも元気、活発な性格の女の子。まさに まどかちゃんとは正反対だ。まどかちゃん曰く「思い込みが激しくて喧嘩もよくしちゃうけど、優しくて勇気があって困っている子がいれば一生懸命…」だと言う。まぁ今でも俺に対してきつい面があるが。
実は彼女は俺たち魔法使いの中で最も遅く誕生した、まだまだ未熟な魔法少女なのである。目にも止まらぬ速度で斬撃・打撃を狙う典型的な近接戦闘タイプ、まさに戦いの初心者がよくやりそうな危なっかしいタイプなのだが、意外にもセンスはあるみたいで、今後の成長に期待する価値はあるみたいだ…と、まさに実況者のように彼女を説明してみる。
「あんた、今すっごく嫌なこと考えてなかった?」
「えっ…い、いや別に」
「そ、ならいいけど!」
そういえば、彼女は一体どんな願いを代価にして魔法少女になったのかを知らない。いや…わざわざ聞くまでの事ではないのだが。

「まどかちゃんは?一緒じゃないんだ」
「まどかは補習よ、補習」
「補習?」
「実はね、今日授業で抜き打ちテストがあったのよ。したらあの子、突然の事だからテンパっちゃって、それで…」
「それで、思うように力が発揮できず、赤点とっちゃったって訳か。まどかちゃんらしいな…。あれ、さやかちゃんは?」
「ふふんっ!たまには私だって凄い点数とったりしちゃうのよ?見せてあげようか?見たいか!?見てしまうのかぁ!!?」
「しつこい。どれどれ…っ…」
「なっはは~!赤点のボーダーラインの一点上でした~!」

さやかちゃんは本当に馬鹿だなぁ。…と、口から出そうになった。
点数の書かれたプリントを必死に俺に見せつけ、やたらとドヤ顔をしてくる。正直、その点数で威張られてもどう反応してあげれば良いのかわからない。どうせ威張るんだったら、80点以上はとってほしいところだ。

「おめでとう、さやかちゃん。次もがんばってね」
「おぉ!もっと褒めてくれたまえ~!!」
「ヨクガンバッタネ、サヤカチャン」
「ははっ!よろしいよろしい!」

相当機嫌が良いのか、俺が棒読みで褒めている事にも気付いていないみたいだ。どこまでめでたい女の子なのだろうか…。
「たっだいまぁ~」
「あ、杏子ちゃん」
「杏子!おっ帰りぃ~!」
「あ?どうした さやか。やけに機嫌が良いじゃねぇか」
丁度良いタイミングで巡回帰りの杏子ちゃんが帰宅してきた。右手には大きな買い物袋を持っており、よくよく見るとたい焼きが少しはみ出ているのがわかる。また大安売りに釣られて大量に買ってきたのであろう。そのお金は一体どこから沸いて出てくるのかが永遠の謎だ。

「見て見て杏子!このテストの点数!どう?すごくない!!?」
「ん…あぁ?…なんだ、数字が随分ちっちゃいじゃないか。これのどこがすごいんだ?」
「…あ」

「…………。…杏子ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「やるのか、さやか!望むところだっ!!」

それから、またいつもの杏子ちゃんと さやかちゃんの乱闘が始まる。もう毎日見慣れた光景だ。最初は止めに入ることはあったが、最近に至っては、やらせるだけやらせて両者疲れてきたところで止めさせるのが最も効率が良いということに気がついたので、あえて俺は二人をほおっておくのだ。

「ったく、毎日懲りずに…ね、マミちゃん」

俺は、となりの寝室で今だにベッドで眠っているマミちゃんに話しかけた。あれから時間は経ったが、一向に起きる気配はなかった。きっと、今も夢を見続けているのだろう。俺の魔法でソウルジェムを指輪に変えられた魔法少女は人間に戻るという見返りとは別に、いつ起きることになるのかわからない眠りが待っている。もちろん、いつ起きるかなんて、俺自身もわからない。ただ一つわかっていることは、その眠りの長さには個人差があり、すぐに目を覚ます子もいれば、何年も眠り続けてしまうケースもある。
「大丈夫、マミちゃん。この世界に目覚めない眠りなんてものはない。いつか、きっと君も目覚めるよ…」
俺はマミちゃんの前髪を整え、乱れた布団を綺麗にしてあげた。

・・・

「どう?俺の入れた紅茶」

「う~ん…やっぱ違うな」
「そうね、マミさんのと比べるとあんたのは下の下ね!」
「けど、この前のよりは美味しくなったよ!…うん、美味しい」

「そっか、ありがと まどかちゃん」

午後6時過ぎ、ようやく補習が終わったふらふらな まどかちゃん が俺たちのいるマンションへと訪れた。よほど過酷な補習だったのか、顔はげんなりしており、青ざめていた。俺は台所へと立ち、全員分の紅茶を入れる。その度に俺は美味しい紅茶になったか聞き取りをするのだ。大抵、まどかちゃん以外からは不評なのだが。それほどマミちゃんの入れる紅茶がどれほど美味だったかを物語る。俺には、大抵たどり着けない領域だ。

「もうへとへとだよぉ、先生達も厳しくってさ。私ちょっと泣いちゃったよ…」
「それはあれよ!きっと まどかの泣き顔見たくてわざと厳しくしてたんじゃない?」
「ひどいよ さやかちゃん!むぅ~」

頬をふくらませた まどかちゃんを さやかちゃんはよしよし…と頭を撫でている。今更だが、てっきり俺は まどかちゃんは頭が良いものなのだと勘違いしていた。実際はどこにでもいる中学2年生の平均レベルの知能で、まともに勉強していなければこれほどの点数をとってしまう程だったのだ。

「でも良かったじゃない。一日で補習済んで、これから毎日だったら流石にやばかったけど」
「そうだな。私達がまどかが抜けた分まで見回らないといけないしな」
「ごめんね、ハルトくん、杏子ちゃん。でももう大丈夫!今日は予想外の出来事だったけど、明日からはまた頑張るよ!」
「そ~かそ~か!それは良い心がけだよ、まどかくん!はっはっはっ!」

ばんっばんっと さやかちゃんはまどかちゃんの背中を高笑いしながら叩く。
「あ、…ありがと…痛っ…さやかちゃ…あぅっ!」
まぁそうなるだろうな。

「なぁなぁハルト」
「なに?杏子ちゃん」
「なんかさぁ~今日やけに さやかの奴機嫌良いと思わないか?」
「…確かに」
作品名:Wizard//Magica Wish −7− 作家名:a-o-w