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Wizard//Magica Wish −7−

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よく考えれば、最初にこの部屋にいたときから さやかちゃん はとてもテンションが高かった。いつもなら…「おかえ…あ、なんだ。あんたか」と冷たくされるのが現状だ。ところが今日は暖かく迎えられ、さらにはまだ一度も罵声を浴びていなかったのだ。いつもだったら一日10回はさやかちゃんに怒られているのだけど。先程の赤点ギリギリの点数がそれほど嬉しかったのだろうか。だがいくらなんでも浮かれすぎだろう。むしろ危機感をもった方が良いんじゃ…。

「もうさやかちゃん!下級生の子にラブレター貰ったからって浮かれすぎだよぉ」
「っ!!ちょ、ちょっとまどか!あんた何言ってるのよ!!それは二人には黙っておいてって」
「あ、そうだった。ごめんね?さやかちゃん。えへへ……って、痛い!痛いよ!!こめかみぐりぐりしないでぇ!!」

「「あ、そういうことか」」
「なぁぁ!納得するな!ハモるなぁ!!」

まどかちゃんの発言でようやく辻褄があった。どうやら さやかちゃんはラブレターを貰ったことが嬉しくてこんなにテンションが高かったのだ。確かに、『黙っていれば』結構顔立ちは整っており、スタイルも中々良いし、一応、美少女の部類には入るだろう。『黙っていれば』…の話だが。
「…ちょっとあんた。今とんでもなく失礼なこと考えてなかった?」
「えっ…い、いや別に」
「そ、ならいいけど!」

「でも さやかちゃんどうするの?…その、…付き合っちゃったりとか…する、のかな?」
「あ~…ないない。明日は土曜で学校休みだし、今度の月曜日にちゃんとその下級生に会って話してくるよ」

「えっ、もったいないじゃないか!なんでだよさやか!」
「まぁ…その、タイプじゃないっていうかドキドキしないっていうか。どうも興味が沸かないんだよ」

「へぇ~さやかちゃんも乙女チックなとこあるんだね」
「うっさい!あんたに言われたくないわ!」
「ご、ごめんなさい」

ようやく、今日始めての罵声を浴びせられた。

「その告白してきた下級生の噂はよく聞くよ…スポーツ万能、勉強もできて、おまけにかっこいい…全然悪くないんだけどさ。けど、違うんだよ…なんていうか…その…」
「そんなこと考えているからいつまでたっても彼氏できね~し、先越されるんだよ」
「だぁぁ!!人が真剣な話してる時に横槍入れるな!!あとちょいちょい腹立つな!!」

「まどかちゃん、先越されたって?」
「えっ…と、あんまり詳しく教えたら さやかちゃんに怒られちゃうんだけど、実はさやかちゃんって一度告白するタイミング見失って、私達の友達に先越されちゃったんだ」
「あ、ということは…要するに、その友達が好きだった子も さやかちゃんが好きだった男の子で、さやかちゃんはあと一歩が踏み込めず、その友達に持ってかれちゃったってことか」
「えへへ…半分正解」
「半分?…じゃああと半分は?」
「それは…その…」

ふと、まどかちゃんの顔から笑顔が消えてしまった。なにかいけない質問をしてしまったのだろうか。考えられるとすれば、さっきの半分正解の時だ。確かに、さやかちゃんは見かけによらず、シャイな面がちょっとだけある。その他に、一体なにがあるというのか。まどかちゃんがこんな顔をするということは、よほど重大なことなのだろう。

「おっと、そろそろ巡回の時間だ。今日は さやかの番だったよな?」
「そうね、今日はあたしと まどかの番よ。さてと、仕度しないと…」
「あ、ちょっと待って、さやかちゃん」
俺はおもわず、さやかちゃんを引き止めてしまった。何故、引き止めてしまったのか、自分でもわからない。さやかちゃんは突然のことで若干不機嫌な状態になり、まどかちゃんにいたってはポカン…となってしまった。

「ん…なによ」
「さやかちゃん。今日の巡回はまどかちゃんの変わりに俺が一緒に着いていくよ」

思わず、俺は2人の同行を自分から進んで願ってしまった。どうも、さっき まどかちゃんが言ってたあの事が頭から離れなかったからだ。どうしても事の真相を知りたい…ただ、一歩間違えればかなり空気の読めない男になってしまうのだが。

「はぁ?なんであんたが着いてくるのよ」
「あの~私は一体どうすれば…?」

「たまには良いじゃん。二人で星空の下を散歩しようよ」

「気持ち悪っ!なによいきなり!?」
「ごめん、さやかちゃん…私の話、聞いてる?」

「今のは冗談、ただ単に身体を動かしたかっただけだよ」

「あ、そう。…はぁ、だったら勝手に着いてくれば?」
「ねぇ…絶対わざとだよね?そうでしょ?」

「うん。じゃあお言葉に甘えて…」

よし、なんとか二人だけになる時間を作ることができた。もしかしたら、あの事はさやかちゃんにとってはずっと心に引っかかっている事かもしれないし、さやかちゃんが契約するときに願った事と何か関係があるのかもしれない、と俺は思う。間違っていたらとんでもなく恥ずかしい。ただのウザイ男…その角印が押されてしまう。けど、黙っていても彼女の望んでいた願いはわからない。魔法少女になるということは、一度は希望を与えられても、必ずその希望が絶望に変わってしまい、今に至っているのだ。このままこの子達はほおっておくわけにはいかない。俺がなんとかするんだ。

「ねぇ杏子ちゃん…私、もしかして空気なの?」
「…よしよし」


作品名:Wizard//Magica Wish −7− 作家名:a-o-w