be my baby
PM6:00
午後にラジオの収録と雑誌の取材があり、仕事が全て終わる頃には夕方六時を回っていた。取材を受けている間に空は澄んだ水色から鮮やかな橙に変わり、取材が終わりホテルの部屋を出る時にはもう日が落ちて真っ暗になっていた。エレベーターホールの大きな窓から見上げた空に星が瞬いている。
早く帰らなければ…音也が待っているだろう。
マネージャーにロビーで待っていてもらい、ホテルの中にある洋菓子店でケーキと、パン屋でホテル特製だというメロンパンを買った。ロビーに戻る途中にある土産の買えるショップで大きな犬のぬいぐるみを見つけ、それも購入する。プレゼントだと言うと、店員が綺麗な水色の袋に入れて大きな青いリボンを結んでくれた。
マネージャーはトキヤが持って帰った荷物に怪訝そうな顔をしたが何も言わず、車まで運ぶ手伝いをしてくれた。
車に乗り込み、携帯を見る。メールも電話の着信も無い。
真斗のアドレスを呼び出し、今から戻りますとメールを送った。分かったという短い返信があったが、音也のことは何も書かれていなかった。
ホテルを出て寮に戻るまでの道で二度、事故渋滞にはまった。時間が過ぎていくのを、車の後部席でじりじりとしながら待つ。やっと道路が流れ出し、時計を見ればもう八時を過ぎていて、メールを送ってから二時間近く経っていた。
やがて、夜空に薄い雲が出てきて、雨が降り始めた。ぽつぽつと窓を濡らしていく雨に苛立ちが募る。携帯を取り出し、電話をしようとして、やめた。
真斗から何も連絡が無いのなら、きっと大丈夫なのだろう。何度かそうして携帯を弄くっている内に電池も少なくなってきてしまったので溜息を吐いてポケットへ仕舞い、目を閉じた。
そのまま十分ほど転寝をしている間に、学園に着いていたらしい。雨が降っていたので、門を潜り寮の前まで車を着けてもらった。ケーキとパンの袋を持って、ぬいぐるみの包みを抱える。明日また、とマネージャーに挨拶をして車を見送ると、トキヤは自室へと急いだ。
作品名:be my baby 作家名:aocrot