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パラレルワールドストーリー

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トキヤの言葉に、翔が「おー」と答えて生徒会室へ入っていく。廊下に音也とトキヤだけを残して、扉が閉まった。
「あなたも、さっさと入ってくれば良いでしょう」
「…だって、トキヤ、怒ってない?」
上目遣いにそう訊かれ、音也らしくないその小さな声に呆れる。
「もう、怒っていません」
「ホントに?」
「本当です。…ですが、今後はキッチンには入らないで頂きたいですね。あなたはとにかく動作が乱暴なのですから、危なっかしくて見ていられません」
「うん…ごめんね」
項垂れて謝り、音也は手に持っていた紙袋をトキヤに差し出してきた。
 それは駅前にあるインテリアショップの袋だった。
「似たようなやつ探したんだけど、無くてさ。気に入らなかったら使わなくていいよ」
そう言って項垂れたままでいる音也の手から袋を受け取る。袋の中、四角い箱の中身はカップだろう。陶器のずしりとした重みがあった。トキヤは溜息を吐いて、音也の背に触れた。叩くように一度、丸まった背中を撫でると、生徒会室の扉を開けた。
「今日はやることが色々あって忙しいんです。しっかり働いてもらいますから覚悟して下さい」
そう言って音也を生徒会室に押し入れる。
「やあ、今日も無事全員揃ったね」
レンがわざとらしいほど明るい声で言って笑った。音也がホッとしたように自分の席につくのを見届けてから、トキヤはキッチンへ入り、音也から受け取ったカップを箱から取り出した。
 シンプルな白に、細くシルバーのラインが入った、トキヤ好みのカップだった。
 全く…仕方がない…。
 音也がどんな顔をしてこのカップを選んだのかと思って、小さく笑う。
 反省はしたようだから、今日は甘いカフェオレを入れてあげようか…。