幼馴染の騎士
「烙斗」
目の前に現れたのは、自分が一番傷ついたときに側にいた人だった。もう、会わないと思っていた。もう会えないと思っていた。だから…。
「華神(かしん)」
ルルーシュやナナリー、スザクがいるのも忘れて、烙斗は華神に抱きついた。
あれから数日たっていた。
烙斗はずっと変わらない。ルルーシュとナナリーの騎士のまま、スザクと言い合ったり、ルルーシュを影から助けたり、日常のまま。
「…ルルーシュ」
「なんだ。スザク」
「今日は、僕は一緒に帰れないけど、気をつけて帰るんだよ?」
「誰にいっているんだ」
「キミだよ。ルル」
「子供じゃない」
「だって、キミは綺麗なんだから、いつでも気をつけないと」
「オレは男だ」
暴走しそうなスザクを止めるのも烙斗。
「スザク、またルルーシュ様ほ困らせているのか?」
「困らせてなんかいないよ?」
「ほら、仕事の時間じゃないのか?」
「残念でした。今日は休みなんだよ」
「そうか。じゃあ、一緒に帰るのか?」
「当たり前だろ?」
そんな会話もいつものまま。
けれど、ルルーシュもスザクも心の中はもやもやしたままだった。大切な幼馴染の心を溶かしてやれなかった自分たちが不甲斐なくてしょうがなかった。
「今日は、烙斗は泊まってくのですか?」
「いいえ、今日は二人を送った後は帰ります。ナナリー様」
「そうですか…」
「烙斗、泊まっていけ」
「ルルーシュ様、今日は無理なんです。ご容赦ください」
「今日は何かあったんだっけ?」
「ちょっと、用事があるんだよ」
この頃、烙斗は泊まることもせずに二人を送っていくとすぐに帰っていた。理由は特にない。今までもそうだったのだからおかしい訳ではないのだが。それでも…少しルルーシュたちから離れているようにも見えた。
そこに現れた『人』
「華神!!」
声をあげて泣いていた。自分たちが見たことのない烙斗がそこにいた。
「…生きてたのか」
「そんな、簡単には死にませんよ。何、この子はまたそんな顔をして。それにキミは『騎士』になったんでしょ? ボクよりもその子たちのことを優先しなさい?」
「…はい」
「ほら、キミはキミの場所に戻るの。キミの隣はボクの隣ではないよ?」
「……」
俯いたまま、それでも離れたくないのか袖口をぎゅっと握り締める。華神は軽く笑う。そして、後ろにいる者たちを見た。二人の少年と一人の少女。少女は目が見えていない分、周りの空気を感じ取るのが上手いらしい。にっこりと笑っていた。
少年たちは複雑な顔をしていた。華神は、袖を持ったままの烙斗を連れて三人の前に立つ。
「初めて、お目にかかります。私は月宮華神と申すものです。この烙斗とはある時期に一緒にときを過ごした者になります。以後、お見知りおきを」
最初に返したのは、ナナリーだった。
「私はナナリーと申します。こちらこそよろしくお願いします」
ナナリーにつられて、ルルーシュとスザクも返す。
「ルルーシュだ。ナナリーの兄であり、…烙斗の幼馴染だ」
「スザクです。同じく烙斗の幼馴染です」
「ああ、あなた方がこいつの大切な幼馴染ですね」
「知っているのですか?」
「こいつと一緒にいたときによく話しを聞いていたんですよ」
優しい笑い顔は、何処か烙斗を思い出させた。