幼馴染の騎士
「…華神」
「しょうがないなぁ…」
烙斗は華神の袖を離さなかった。
「今日はいいけど、明日からちゃんと元に戻るんだよ?」
「…」
コクリと頷く烙斗に華神は笑い、そして三人に向き直った。
「すみません。今日はこいつを借りてもいいですか?」
すぐに対応したのは、ナナリーだった。
「ええ、今日はもう大丈夫です。烙斗のことお任せしてもいいですか?」
「ええ、ナナリーさん。明日には、いつもの烙斗としてあなた方の前に戻します」
にっこりわらう華神。ナナリーもそれがわかったのか、華神の手を優しく自分の手で包んだ。
「あなたは…烙斗にとって大切な人なんですね。烙斗をお願いします。私はあなたのことが好きですよ? だから、お願いします」
「はい、お姫様。承りました。烙斗は必ず明日あなたたちの元に返します」
うやうやしく、ナナリーの手にキスを落とす。
「ありがとう。お願いします」
ナナリーの言葉に華神は烙斗を連れていった。
「お兄様! スザクさん!」
「…え」
「ナナリー?」
「いつまで、呆けているんですか。帰りましょう?」
「…烙斗は。烙斗はどうしたんだ!」
「そうだ、烙斗は?」
「華神様に今日はお任せしましたよ。気が付いてなかったんですか?」
「……」
「あ…」
二人のそんな様子にナナリーは呆れた。
「お兄様たちは急ぎすぎなんですよ」
「ナナリー…?」
「それって…」
「お二人が烙斗の昔のことをお聞きしたんじゃないんですか?」
「……」
「ナナリー…」
「今は、華神さんにお任せしましょう? 明日にはいつもの烙斗が戻ってきます。後、お兄様もスザクさんも…待つことを覚えてください。…真っ直ぐな言葉は時に人を傷つけますよ」
ナナリーの言葉に二人は沈黙した。