幼馴染の騎士
歩く間、ずっと袖口から手を離さなかった烙斗。
華神はそれを見て、何も言わずに歩いた。
着いたのは 既にボロボロになっている廃墟
そして、それは二人が別れた場所
華神が消えた場所
「ここ…は」
「ああ、オレがお前の前から消えた場所。お前が一人になった場所だ」
「な…んで」
「もう一度、お前がお前を見つめるためだよ」
「え…」
華神は、笑う
あのときのように
華神はふわりと浮く
「烙斗、お前の傷はお前のものじゃない」
「ちがうっ。これはオレの…闇だ!」
そう、人を殺した
華神が目の前で殺されたとき目の前が暗くなった
そして、次の瞬間紅く染まった。
「…オレはお前を奪った奴が赦せなかった。一人だったオレを育ててくれた、大切な人を殺されたときにオレは憎しみを覚えた。ルルーシュとスザクと離れされたときにあった闇が動いた。…これはオレの闇だ」
烙斗は、スザクとルルーシュとナナリーと離れ離れになったとき、1つの闇を持った。ただ、それは自分でも気がつかなかったもの。大人の身勝手と政治のことで離された。
「…そのときに灯った闇は種となり、オレの中に埋められた」
そして、次に出逢った大切な人「華神」
だが、それも心ないものたちに打ち砕かれた。
「…オレはルルーシュとナナリーの騎士。けれど、その前に人殺しだ。だから、あいつらは護る。スザクの心と共に。…オレは救われるべきじゃない」
「…烙斗」
「だから…いいんだ。あいつらには話す気はない。離れる気はないが、闇まで見せる気はない」
そんな烙斗に華神は笑う。
そう優しく包み込むように。
「馬鹿だね。お前は人なんて殺してないよ?」
「だけどっ」
じゃあ、あのときのあの目の前で起こったことは?
一瞬でいなくなったお前は?
今ここにいるお前は?
どうしていなくなった?
オレは…お前が必要だったのにっ!!
華神は…烙斗を抱きしめる。
そして語る
「オレはお前だよ。烙斗」
「何…を」
「オレはお前だよ。烙斗」
華神は笑う。
「お前は一人になったとき、それに耐え切れなくなった。そして、作られたのがオレ『華神』だよ」
「…作った?オレがお前を?」
「オレは、お前の幻」
「でも、皆に見えていた」
「それは、お前の意思が強かったからだよ。触ることも出来る感じることも出来る。けど…それはただの幻でしかない」
「華神」
「オレがね。お前の前から消えたのは、ルルーシュとスザクがすぐ側までいると知ったから。お前の心の傷はあの二人になら癒されるって知っていたから」
「え…」
優しく笑う華神。
「お前はずっと待ってたんだよ。あの二人を。ナナリーを。いつかまた逢えると信じていた。信じていたからこそ、逢えない時間の深みが酷かった。だから、オレという存在が出来上がった。…お前は、本当に優しい子だから」
「……」
実感はなかった。
けれど、華神の言葉は真実だから。
「まったく。お前は馬鹿なんだから」
「もう自分を解放してやれ。…ルルとスザに甘えてやれ。お前は何も闇なんか持っていない。闇はオレが持っていってやるから。お前はヒカリの中に戻れ」
「…華神?」
「もう、時間なんだ。同じ刻に同じ者はいることが出来ない。オレはもう、消えるよ」
「…やだ」
「わがままいうな。それに、お前の今の立場は?」
「ルルーシュ様とナナリー様の騎士だ」
「なら、それに準じろ。…もうお前は一人じゃない。そして、人を殺してなんかいない。お前は綺麗…だよ」
「華神!」
「お前は…優しすぎるんだよ」
「…華神の方が優しい」
今にも泣きそうな烙斗に、華神は優しく頭を撫でる。
「もう、逢えない。でも、オレはお前の中にいるから。お前に何かあったときは、すぐに助けてやる。約束だ。お前はお前に戻れ。烙斗という人間に」
華神の姿が消えていく。
「華神!」
「泣くな…。オレはここにいるから」
心臓をゆびをさして、華神は消えた。
そして、その場で烙斗は意識を失った。