幼馴染の騎士
「ただいま」
「ただいま帰りました」
「お邪魔します」
「…おかえりなさいませ。ルルーシュ様、ナナリー様。スザクもおかえり」
出迎えたのは、少し顔色の悪い烙斗だった。それを見て驚いたのはルルーシュ。
「ばっか!! お前、病人だろうっ」
「なんで、起き上がってるんだよっ。キミは」
ルルーシュとスザクが叫んだ。
「ちゃんと眠っていましたよ。熱は下がったんだよ。スザク」
それぞれの言葉に答える烙斗に二人は呆れた。
「スザク、烙斗を部屋へ。ナナリーはオレとおいで」
「わかった」
「はい、お兄様」
「…大丈夫ですよ」
「キミね、そんな顔していっても説得力ないよ?」
「スザク…。今日はありがとう」
「…いいけど。ルルーシュとナナリーの側にいれたんだし」
今日、烙斗が体調を崩し、騎士の務めが出来ないとわかったとき、烙斗は迷わずにスザクに変わりを依頼した。いつもルルーシュを見て箍が外れることは知っているが、騎士としての力は誰よりも優秀だと知っているからだ。
「まったく、早く治してよね。調子が狂うよ」
「…そうだな」
こちらは、ルルーシュとナナリー。
「お兄様、何を作りますか?」
「おかゆ…だろうな。後は、スザクもいることだし、普通に作る」
「わかりました」
二人で作り始めれば、慣れているもので早いものだった。
「スザク、ここをあけてくれ」
「うん」
今は烙斗が休んでいる部屋。ルルーシュが烙斗の体調不良を知ったときに無理やり寝かせたのだ。
ルルーシュが持ってきたものを食べ始める。
「…ごちそうさまでした」
「なんだ、烙斗もういいのか?」
「ええ、まだ余り食欲がないので」
そういって笑う烙斗に、スザクが自分の手を額に当てる。
「…また、熱が上がってる。さっき、起きたからだ」
「別にそんな訳は…」
「「ある」」
ルルーシュとスザクに同時に言われる。
「烙斗、今日はクスリを飲んで眠ってください。ね?」
「ナナリー様」
「お兄様もスザクさんも今日はこの部屋にいるつもりだと思いますし。烙斗も安心でしょ? 私は沙世子さんがいるから大丈夫です」
そういって、ナナリーーは出て行った。ポスンとベットに倒れこむ烙斗。
「…ほら、やっぱりつらかったんじゃないか」
「別にそんな訳じゃないよ」
「いいから、寝てろ」
「…はい」
「後、今くらい敬語をやめろ」
ルルーシュとスザク、そして烙斗は幼馴染なのだ。烙斗が騎士となってからは、違う場所に住み、主と騎士の態度をとっていた。
「…ルルーシュ」
「そうだよね。今ならいいよね。僕もそれがいいな」
「スザク…」
「別に無理をさせるつもりもないが、どうせ薬を飲んだからといって、眠くはならないんだろう? なら、付き合ってやる」
「ボクもロイドさんに許可貰ってるし、付き合えるよ。あ、ロイドさんから伝言」
「何…?」
『早く治して、ボクのところに遊びにきてね』
「…うん」
笑った烙斗に二人は頭を撫でた。
「眠ったか?」
「…みたいだね
烙斗は安心してベットに眠っている。ルルーシュとスザクも寝巻きに着替えていた。
「今日はありがとう…スザク」
「ん? 珍しいね。ルルーシュがそういうなんて」
「別にいつもだが?」
「そう?」
「というかな。お前がいつも暴走するから悪いんだ」
「だって、キミが好きなことは変わらないんだ。誰であっても、キミを渡したいとは思わない」
そう、スザクはずっとルルーシュのことが好きなのだから。
「でも、オレはお前の意思には答えられないぞ」
「いいんだよ。それで…。この状態が好きといえば好きなんだ。烙斗と遊んでさ、キミに酷いこと言われてさ。落ちこんで」
「…スザク。お前は本当変な奴だな」
「キミに言われたくないな。ルル」
烙斗がいるから続けられるこの距離。
多分、誰かがいなくなれば壊れてしまう。
…それは誰もが嫌だと思うことだ。
「オレは烙斗とナナリーがいること。お前と馬鹿をやってあの場所にいること。ロイドから烙斗を護ること…そんなことが出来ればそれでいい。幸せはそんな簡単なことなんだから」
「そうだね。幸せは簡単なことなんだよね。難しく考えることなんて…ないんだよね」
道は1つだけじゃない。
誰もがいくつもの道を持っている
それを知る事は…気づくことはとても難しいことなのだけど。
「ん…」
「烙斗?」
「起しちゃったかな」
二人で両側から烙斗を見る。
「ルル…スザ」
「起しちゃった?」
「ここ…何処?」
「ん? 寝ぼけているのか?」
「…寒い」
そういって、烙斗は両際の二人を力任せに抱き寄せた。
「お、おいっ」
「烙斗っ」
急なことで二人はベットに倒れこむ。
「ルルとスザだ」
にこーと笑う烙斗に二人は笑い、そしてすうとまた眠りの中に入っていった。
「…ルルーシュ」
「なんだスザク」
「どうしようか」
「…このまま、眠るしかないんじゃないか?」
烙斗の手は二人を離すことはない。
「たまにはいいかな?」
「そうだな」
烙斗を真ん中にスザクとルルーシュは手を握ったまま、ベットに入った。ここのベットは以外に広いのだ。三人で寝るには問題はない。
「久しぶりだな」
「そうだね。ボクは仕事もあるし」
「明日はいられるのだろ?」
「うん」
「しゃあ、寝坊も出来るな」
「ルルーシュってば」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「…おやすみなさい」
二人の言葉に寝言で答える烙斗に笑い、目を閉じた。