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こらぼでほすと 再来2

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 もふもふのコートを揉んで、ティエリアも、ほっと一息つく。地上の四季なんてものは、すっかり失念していた。ついでに衣装が、前回の物しかなかったので、夏服のままだった。軌道ステーションは、空調があるから常春の空間だったが、エアポートへの移動で、ようやく気付いた。残念ながら、エアポートに小さな子供用の服なんて売っていないし、乗り継ぎの時間も迫っていたから、そのまんま移動してきた。そう、今回は、ミニでというリクエストだったから、素体を乗り換えて、ミニで降りて来た。
「アレルヤ、おまえも、それ着ろ。見てるほうが寒い。」
 ぴっちり黒Tシャツだけなんて、見るからに寒そうだ。いくら、寒暖差は
気にならないと言われても、最低限、冬仕様にはなっていただかないと、こっちの気分が悪いと、ハイネが、別の紙袋から黒のコートを取り出した。
「ありがとうございます、ハイネ。」
「礼はママニャンに言うんだな。おまえらの降下が決まってから用意してた。」
 実際に用意したのは、歌姫様だが、発案は、ママニャンのほうだ。それも実用向きの男の子用のものを、歌姫に用意もさせた。アレルヤたちのものは、ハイネをアッシーにしてマンションまで取りに行ったのだ。いくらなんでも風邪を引く、と、心配していたそうだ。



 クルマに乗せてから、明後日のミッションについての連絡だけ、ハイネもしておく。ちょっといつもと違う趣向なので、口調なんかも変えて頂かなくてはならない。
「つまり、ママニャンが、ミニの保護者ってことで挨拶するんだとよ。後、衣装合わせあるから、明日、三時に集合だ。」
「僕、ちゃんと喋れるかなあ。」
「そんなに深刻に考えなくても、淀んだら、ハレルヤにチェンジして怒鳴らせろ。お客様は、ハレルヤに叱られたいらしいからな。」
「それならなんとかなりそう。ハレルヤ、よろしくね。」
「わかったぜ、アレルヤ。俺様に怒鳴られたいとは、おかしな客だなあ。」
 アレルヤからチェンジしたハレルヤが、へらへらと笑いつつ手を挙げる。毎度のことながら、ハレルヤが乱暴に脅すと、喜ばれてしまう。その乱暴さが、お客様はきゅんきゅんするとおっしゃる。
「おりぃは、いちゅもとおりにゃ? はいね。」
「おう、おまえさんのほうは、いつも通りだ。」
「うちのじじいは大丈夫なのか? ハイネ。」
「明日に備えて大人しくしてる。今日も、おまえらを迎えに行きたかったみたいだけど、三蔵さんが止めてたから、今頃、昼寝してるんじゃないか。」
 いや、昼寝っていうか、こたつでじっとさせられているが正解だろう、と、ハイネは笑う。マイスター組が降りてくるとなると、そわそわして昼寝どころではない。だが、さすがに一日、稼動しているだけの体力はないから、そこいらは坊主も考えて、用がなければこたつで横になるように命じている。ここで、ダウンなんかさせたら、年少組は言うに及ばず、トダカたちじじいーずからもクレームの嵐がくるからだ。下手をすると、里帰りさせられてしまうから、坊主も女房の体調には敏感にならざるをえない。
「あとさ、オーナーが、おまえらと打ち合わせたいことがあるらしいから、そっちも頼むな。」
「わかっちぇいりゅ。」
 三月のことだろう、と、ティエリアは頷く。こちらも、そのつもりだったから、やるなら打ち合わせはしなくては重なっては意味がないからだ。
「あのな、ハイネ。26日の夜だけ、俺ら、マンションに戻るからな。 」
「ほおう、まあ、それは別に構わないがミッションが無事終わったら、ってとこだな。」
 27日は、アレハレルヤの誕生日だ。どっかの新婚バカップル夫夫のごとく、一番にお祝いとかやるんだろうと、ハイネは内心で微笑ましく思いつつ、まずは目先のミッションに意識を向けさせる。これが終わらないと、何も始まらない。



 寺の山門を越えて家のほうへ入る。ここは、オールセルフサービスなので、勝手に居間まで入らないと出迎えはない。靴を脱がせてもらったティエリアは、ちったかちったかと廊下を走って居間に顔を出す。こたつには三蔵と、その向こうに盛り上がったこたつ布団がある。足音に気付いていた坊主は、こたつの中の女房のケツあたりを軽く足で叩いて起こす。
「・・・・はい? 」
「ちびどものご帰宅だ。」
 それを聞いて、ゆっくりとこたつに手をかけてニールが起き上がると、居間の入り口にはちっちゃなティエリアが立っている。
「おかえり、ティエリア、アレハレルヤ。」
 声をかけたら、ティエリアが飛び込んでくる。二歳児仕様の小ささだから、飛び込まれても衝撃は軽い。
「ただいまにゃ、にぃーりゅ。」
「ただいま。」
「はい、おかえり。寒かっただろ? 初めての旅行は、どうだった?」
「たのしかったにゃ。あるくとつかれるし、時間がかかることがわかったじょ、にーる。」
「そうなんだ。予定通りにはいかなくて、全部はクリアーできなかったよ、ニール。」
「あははは・・・そうだろうなあ。寺院なんかは、装飾とか壁画とか観るもの一杯だからなあ。まあ、いいじゃないか。次は、そこいらも考えればいいんだ。」
 ぎゅっとしてもらえるのは、ミニの特権だ。頬を擦られて、冷えているな、と、膝にだっこされて、こたつに足を放り込まれる。
「アレルヤも入れ。とりあえず温まるものを用意するからさ。それから、おまえたち、三蔵さんにも、ちゃんと挨拶しろ。」
 ティエリアを少し温めてから、ニールはアレルヤと場所をチェンジして立ち上がった。そう言われて、はっと気付いて、アレルヤは頭を下げる。ここの主人は、三蔵だ。
「ただいま、三蔵さん。」
「おう。せいぜい、うちの女房の手伝いをしてやれ。ちび、おまえは挨拶はなしか?」
 ティエリアは、もこもこのコートを脱いで、てってけとニールの後を追い駆けている。
「しぇわににゃるじょ、しゃんじょー。」
「それは挨拶とは言わんがな。」
 けっっと吐き捨てて、坊主のほうはタバコに火を点ける。ミニは、女房の背後から足に抱きついている。それは和む光景だ。
「いつも、うちのじじいが世話になってありがとよ、三蔵。」
 それを見ていたら、ハレルヤにチェンジして頭を下げているのが、面前にいたりする。
「それは逆だ。 ハレルヤ。」
「そうでもないと思うぜ。うちのじじいには、世話するのが必要だからな。あんたぐらい手のかかるのが理想的なんだ。」
 そう言われればそうか、と、坊主も納得する。ティエリアが纏い付いていたら危ないと、ハレルヤも台所へ歩いて行ってしまった。
「試作品なんだけど、プリン食べるか? 」
「たびりゅ。」
 明後日のために、少し凝ったものを作ってみようと、いろいろと考えた試作品だ。そろそろ、悟空も帰ってるだろうから、それらも出しておくことにした。ここでは、試作品を作り過ぎても、悟空が消化してくれるし、なんなら店へ運べば、年少組が食べつくしてくれるから、量を気にしなくていい。準備していたら短期バイトに出ていた悟空が戻って来た。学校の空いた時間に肉体労働な短期バイトもやり始めた。
「おかえり、アレハレルヤ、ティエリア。うわぁー今日も山盛りだなあ、ママ。」
「ちょうどよかった。ちょっと味付けを変えたんで感想を言ってくれよ? 悟空。」
作品名:こらぼでほすと 再来2 作家名:篠義