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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 4

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「いいって、ほっといてくれ!」
 シンはガルシアの手を乱暴に払いのけた。
「シン…」
 ガルシアは手の甲をさすった。
「悪い…」
「ひい!また魔物じゃ!」
 後方を歩いていたスクレータが悲鳴を上げた。 シンとガルシアがすぐさま振り返ると、豚の怪物のオークととかげに火の力が宿ったサラマンダーがスクレータ達に唸り声を上げていた。
「ジャスミン、スクレータ、早くこっちに来るんだ!」
「待って兄さん、スクレータが!」
 スクレータは地面に尻餅をついたまま動こうとしない。
「こ、腰が抜けて動けん…」
 オークは手に持つサーベルでスクレータに斬りかかった。
…………キイィン!………
 スクレータが今まさに斬られようかというところで鋭い金属音が辺りに響いた。
「…くっ!」
 シンがオークのサーベルを受け止めていた。
「し、シン…」
「ジャスミン、スクレータ引きずってこっから離れろ!」
「う、うん!」
 ジャスミンはスクレータの襟を引っ張って離れた。
 シンはジャスミン達が離れたのを確認するとサーベルを押し返した。
「これで心配はねえ。かかってこいよクソ豚野郎!」
 シンは両手にそれぞれ持つ短剣を構えて、人差し指をクイッと動かしてオークを挑発した。
 オークは挑発にのり、ぶひぶひ言いながらサーベルを振り回してきた。
 シンはサーベルを受け止めた。オークのサーベルの一撃は意外に重く、片手で受け止めたため手が痺れるようだった。
 シンはサーベルを受け流すと同時にオークに一撃を与えた。
 ぴぎゃっと滑稽な悲鳴を洩らしたオークであったが、それの持つ分厚い脂肪に守られ、急所をつくに至らなかった。
 シンは舌打ちをした。
「くそ、おデブで助かったな、豚さんよ」
 余裕を見せてみるシン。
 突然嫌な気配がし、シンは飛び退いた。
 横からサラマンダーが火を吹いてきたのだ。
「あぶねえ、あぶねえ。敵は二体いたんだったな」
 シンは流れてきた汗を拭った。
――どうする…?どっちかに攻撃すればどっちかから攻撃されちまうな…――
 今敵は二体並んでいる。今どちらかに攻撃を加えればもう一体から攻撃を受けるのは必至である。どうにかして二体をバラバラに離す事ができればよいのだが。
――そうだ、こうすれば――
 シンは大きく息を吸い込んだ。
「や?い、お?お?ぶ?た?さ?ん。こっこまでおいで?だ!」
 大声でひどく幼稚な罵倒を浴びせると同時に両手で唇を引き伸ばして舌を出した。
 オークが当然のように怒って追いかけてきた。
「わはは?!」
 シンは笑いながら一目散に逃げ出した。
 逃げるシン、それを追いかける魔物、端から見れば遊んでいるようにしか見えない。しかしシンは着実にある機会を狙っていた。
――よし、思った通り豚が追いかけてきたな。そのままだ、そのまま追ってこい――
 この光景はガルシア達にもよく見えていた。
 皆シンの行動の意図がつかめず、呆然と見ているだけだった。
「兄さん、シンは何をしてるんだろう?」
 ジャスミンは訊ねた。
「全くわからない」
 しかしその答えは次の瞬間に現れた。
――よっし、ここだ!――
 シンは逃げるのを止め、オークに向き直った。
 シンの背後にはサラマンダーがいる。前からはオークが向かってくる。
 ちょうど一直線上に並んだ。
 シンは武器を構え、オークに向かって駆け出した、その時同時にサラマンダーが火を吹いた。すると、駆け出したと思われたシンが高く空中へ跳んだ。
 サラマンダーの火はまっすぐ伸びていき、オークを焼き焦がした。
 シンは空中で宙返りをし、落下する力を短剣に込めてサラマンダーの背を刺し貫いた。
 サラマンダーは断末魔の叫びを上げて絶命した。
「さあ、今楽にしてやるよ。豚!」 まだ体に炎がくすぶるオークめがけて、シンは飛びかかった。
 がっ、としっかりオークに抱き締めるとそのまま上空高く跳び上がった。最高点に達すると身を翻して地面に向かってオークの脳天を突き出した。
『イズナ落としぃ!』
 盛大な砂煙を巻き起こし脳天を打ちつけられたオークはもはや動く気配がなかった。
「ふう、終わったか…っぐ!」
 シンは激痛を感じ、その場にしゃがみ込んだ。
 右腕の包帯からは血が滴り始めている。
 ガルシアはシンに歩み寄ると何も言わずにシンの包帯を解き始めた。
「よ、よせ!」
 血で染まった包帯を取り去ると噛み傷であろう、傷口ばぱっくり開いていた。昨晩シンが戦ったアリジゴクに噛まれたところである。
「どうしてこうなるまで言わなかった?」
「お主、その傷でさっきまで戦っとったのか。むちゃをするのう」
 スクレータは言った。
 シンは苦痛に歪めた表情で言う。
「悪い、みんなに心配かけないようにしてたんだ。オレが戦えないなんてなったらみんなを守れなくなると思って…」
 シンはこれまでの道のりでも魔物と戦い、ガルシア達を守ってくれていた。
 この傷だって先程の戦いだけでここまで開くはずがない。おそらくだいぶ前から開き始めていたのではないかと思う事はたやすかった。
「シン、お前は少し休んだ方がいい」
「何を言ってる、もうすぐ砂漠の出口なんだぜ?」
「だからこそだ。慌てなくても日暮れまでにはカレイの町でサテュロス達と合流できる」
 ガルシアは自分の水筒を取り出し、シンの腕を引き寄せるとその水を傷口にかけ始めた。
 ただの水だというのに傷口には恐ろしく滲みた。
「…………!!」
 シンは声にならない叫びをあげる。痛みは頭の先まで突き抜けるようだった。
「シン、ちょっと動かず我慢しろ」
 ガルシアは傷口に手をかざした。
『キュア』
 エナジーが傷口を優しく包み込み、傷が少しずつ閉じていった。
「これでひとまず大丈夫だろう。でもあまり無理するな、ちゃんと治療しなければまた開くからな」
「悪いな」
「別に…」
 ガルシアは包帯をきちっと巻いた。
「ほう、何やらここ数日我が同胞が次々にやられていると思えば、このようなところに人間がいようとはな…」
 ガルシア達の背後からおぞましい声と共に魔物が姿を現した。
 その魔物はライオンのような姿をしているがそれが持つ尾はサソリのように毒針を含んでいる。
 コウモリのような黒い翼が背中に生えており、たてがみの中心にある顔はなんと人間の顔をしている。
 森の奥に棲むと言われる伝説の魔物、一軍の軍隊をも食してしまうと恐れた人々はそれをマンティコアと呼んだ。
「久しぶりに人間が喰えるわ」 マンティコアは口元を釣り上げ、笑った。
「どうやら、敵の親玉のお出ましのようだぜ…」
 シンは短い双剣を抜いた。
「待てシン、お前戦う気か?」
「当たり前だろ。こいつを倒さなきゃ砂漠からは抜けられない」
「でも傷が」
「大丈夫だ。思うに、この砂漠に取り付いた魔の正体ってのは多分こいつだ。こいつを倒せば砂漠は暑さが和らぐはずだ」
 もはや戦いを避けるすべは残されていなかった。戦わなければ、砂漠の魔によって死を与えられる事になる。
「人間ごときが我を倒すつもりか?なかなかに面白いことを言う。よかろう、その愚かさに免じてすぐに殺し、喰ろうてやろう」
「寝言は寝て言いな、人面ライオンが!」