二次創作小説やBL小説が読める！投稿できる！二次小説投稿コミュニティ！

　最初に仕掛けたのはシンだった。双剣を構え、一直線にマンティコア目指し迫る。
　目にも止まらぬ速さで無数の斬撃をマンティコアに叩き込んだ。　シンの姿は斬撃の後マンティコアの背後に現れた。
「どうだ人面ら…」
　シンは驚きのあまり言葉を詰まらせた。
　シンが絶句するのは無理もない、無数の斬撃を与えた、確かな手応えもあったというのに。
「どうした？我を倒すのではなかったのか」
　マンティコアは倒れるどころか血一滴流すことはおろか、かすり傷一つ負っていなかった。
「バカな！何で傷つかねえ！？」
「次はこちらからゆくぞ」
　マンティコアは念じた。
『イラプトヴァルカン！』
　サテュロスも得意としているエナジーが発動された。
　二本の火柱がシンの足元から噴き上がる。
「くっ！」
　シンは後ろに跳びながら火柱を交わした。着地の瞬間を狙ってマンティコアは毒針を持つ尾をシンに突き出してきた。それをシンは地に伏せることでよけた。
「ふん、ちょこまかと動きおって。ならばこうしてくれよう」
　マンティコアはまたエナジーを発動した。
『クエイクスフィア！』
　マンティコアが両方の前足で地面を踏みつけると辺りの地面が激しく揺れた。
「おわっ！」
　シンは揺れで体制を崩し、倒れた。すかさずマンティコアの尾が伸びる。シンは寸前のところで刃で受け止めた。
「ふ…、怪物のくせにやるな…」
「無駄に抗うのは止めておけ、主ごときに我が身を斬る事はできん」
「どうかな…！？」
　シンは尾を押し返した。すぐさま起き上がると後方に跳ぶとマンティコアに手を向けた。
『マザーガイア！』
　マンティコアの足元の地面がひび割れ、地の底から大地の力の流れと岩が吹き上がり、マンティコアを包み込んだ。
「ぐおおぉ…」
　エナジーの中でマンティコアは苦悶の声をあげる。
「どうだ！剣が効かなきゃエナジーだ！」
　勝利を確信したが、エナジーの中のマンティコアは次第に笑みをこぼし始めた。
「ふん、効かぬわ！」
　マンティコアが力を解き放つとエナジーがかき消された。
「そ、そんな…。何故だ！」
「分からぬか？ならば何度でもやってみるがいい」
「くそ」
　シンは念じた。
『竹刺しの術！』
　地面から発生する竹槍を受けてもマンティコアはピクリともしない。
『雷鳴の術！』
　エナジーで作り出したプラズマを発火させて攻撃したが、これも通用しない。
「だったら…」
　シンは短剣にエナジーを込め、一瞬にしてマンティコアに突進した。
『滅殺の術！』
　シンの短剣はマンティコアの尾で受け止められていた。
　マンティコアはニヤリとした。
「これを受けても斬れない…？まさか…！」
　マンティコアは口を大きく開き、シンの肩に噛みついた。血飛沫が辺りに飛び散る。
「ぐわぁ！」
　シンは剣を取り落とした。次の瞬間マンティコアの頭突きを受け、シンは転げ回りながら遠くまで突き飛ばされた。
「シン！」
　ガルシア達は地面に横たわるシンのもとに駆け寄った。
「シン、おい、しっかりするんだ！」
　ガルシアはシンを抱き起こした。
「ガル…シア…、逃げ…ろ…や、やつは…、結界を張っている…。破らなきゃ…、きれ…な…」
　シンの首から力ががくっと抜けた。
「シン！」
　一瞬死んだように思えたが、辛うじて息をしていた。出血と頭突きの衝撃で気を失っていた。
「ガルシア、シンは…」
「大丈夫。何とか生きてる」
「ふふふ、そやつ、我が結界を見破りおったか。なかなかやる。褒美に今すぐ仲間共々喰ろうてやる」
　マンティコアはゆっくりとガルシア達に歩み寄ってくる。ジャスミンとスクレータは恐怖で震え上がっている。
　ガルシアにも恐怖はあった。しかし、それを凌駕する気持ちがあった。
――ガル…シア…、逃げ…ろ…や、やつは…、結界を張っている……――
　シンの言葉が、心中によみがえる。
「も、もう終わりじゃ…！」
　ざっ、と音を立ててシンが砂の上に横たえられる。
「兄さん？」
「ジャスミン、スクレータ、シンを頼む」
　ガルシアは立ち上がった。
「ガルシア、どうする気なのじゃ？」
「やつは、俺が倒す」
「な！」
　スクレータは一瞬言葉を失った。
「無茶じゃ、お主、シンでも無理な相手を、戦った事がないお主がどうやって戦うというんじゃ！？」
　ガルシアはこれまでの旅の中で何度となく魔物と遭遇した。しかし、そのたびにサテュロスやシンらに守られていた。故に戦闘に身を投じた事はない。
　前に、サテュロスから護身用として、剣を預けられた。『シルバーブレード』という白銀の光沢を放つ宝剣である。今ガルシアが身につけている物でもある。これもまた一度として鞘から抜いたことがない。
　しかし、それをガルシアは抜いた。
「戦わなければ、死ぬだけだ」
　剣はガルシアにとって少し重く感じた。
「兄さん止めて！」
「どっちにしても死ぬというのなら、俺は戦って死ぬほうを選ぶ！」
　ガルシアは剣を構え、駆け出した。
「ほう、次は主がくるか…」
　ガルシアの攻撃を受け止めながら、マンティコアはニヤリとする。
「そう死に急がなくとも、すぐに死ぬというに」
　マンティコアは前足を振るってガルシアを突き飛ばした。
「ぐう！」
　ガルシアはすぐに立ち上がってまた駆け出した。
「ふん！」
「ぐはっ！」
　突き飛ばされてもガルシアはすぐにまた立ち向かう。
「邪魔だ！」
　今までで一番強い力でガルシアは吹き飛ばされた。
「がはぁ…！」
　鳩尾に一撃を受け、ガルシアは喀血した。
「ガルシア！」
「兄さん！」
「ふふ…、終わり…」
　ガルシアはまだ立ち上がろうとしている。
　剣を杖にして、血まみれの顔を上げながら、マンティコアを睨みつけた。
「驚いた。まだ立ち上がってくるとは…」
　ガルシアは思い出した事があった。
――この剣には水の力が封じ込められている。気を込めて振るえば剣が反応し、秘められた水の力が放たれるだろう。もっとも、貴様に使えるかは分からぬがな…――
　サテュロスがガルシアにシルバーブレードを預けた時に言っていた言葉である。
　ガルシアは半信半疑であったが、今は信じる事にし、剣を構える。
「シルバーブレード、その秘めたる力、表せ…」
　ガルシアの気持ちに応えるように、シルバーブレードが一瞬輝く。その後に剣から脈動を感じた。
「おおおおお！」
　ガルシアは叫びながらマンティコア目掛けて突進した。
「まだ来るか、愚か者め！」
　ガルシアはマンティコアから数歩離れた所で剣を振り上げ空高く跳び上がった。
　剣に秘められた力の名は、自ずと頭に浮かんでいた。
「アクアストライク！」
　ガルシアは落下と同時に剣を振るった。
　剣撃と同時に地面から間欠泉のごとき水柱が噴き上がった。
「こ、これは水！？いかん、我が砂の結界が…！ぐわああぁぁ！」
　マンティコアの周りで光の球体が現れたかと思うと、ひび割れ、砂となり風に流されていった。
「今だ！」
　ガルシアは自分の持つ力をすべてこのエナジーにかけた。
『ラグナロック！』
　空中より巨大な剣を作り出し、それをマンティコアに投げつけた。
「そ、そんなバカな…！我が、我がぁぁ！」