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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 5

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 むしろ試合に出るロビン以上にやる気が溢れているようだった。
 そういえば、とロビンは思った。
「リョウカはどうするんだ?」
 どうする、とはイワン達の援護を受けるのかどうかということである。
「私はいい、自分でエナジーを使えば十分だ」
 それに、と付け足した。
「皆の手助けが認められているのはロビンだけだ、手助けを受けたら私が失格になるかもしれないだろう」
 確かにそうである。リョウカはロビンのようにバビから推薦を受けたわけではなく、普通にトライアルを勝ち上がったのだ。いくらロビンの仲間とはいえその他の戦士達と同じ扱いであろう。
「それじゃ私はそろそろ部屋に戻ろう」
「ん、そうか、お休み」
 ロビンは言った。するとジェラルド達もお休み、お休みなさい、などと続いた。
「お休み」
 それだけ言うとリョウカは足早に部屋を出て行った。
――そろそろ、誰もいなくなっただろう…――
 リョウカは駆け足で廊下を行った。
「なあジェラルド、風呂行かないか?」
 ロビンが誘うとジェラルドは嫌そうな顔をした。
「え?、今更行くのか?もう遅いぜ」
 時刻はもう夜の十時半を過ぎている。他の戦士やコロッセオファイナル出場者はもう寝ているころであろう。
 イワンはまだ起きているが、メアリィはついさっき寝入ったばかりである。
「あんまり早く行くと混んでると思ってさ。なあ行こうぜ」
「いいってオレは、イワンとでも行けよ」
 ロビンは舌打ちをして、渋々ジェラルドと行くのは諦めた。
「じゃあイワン、行かないか?」
 言ってイワンを見るとベッドに横たわって安らかな寝息を立てていた。
「さっきまで起きてたじゃないか!」
 ロビンは再びジェラルドを見た。するとジェラルドは布団を被った。
「ああ、そうかい。じゃあオレ一人で行ってくるよ!最高の湯を独り占めしてきてやる。後で後悔するなよ!」
 ロビンはタオルと着替えを持つと部屋を出て行った。
「やれやれ、やっと行ったか。さて、オレも寝るかな…」
 ジェラルドは静かに目を閉じた。
    ※※※
 バビ宮殿の浴場はとても広い。バビが旅の途中に宮殿に立ち寄った戦士達のために作らせたものだという。
 ロビンの故郷、ハイディアにはこんなに広い浴場はない。
 そもそもこの時代に浴場というものは大きな町にしかない。小さな町や村の宿屋にはシャワーくらいならあるが、一個人の家にはない。
 そういった人達の入浴らしいことといったら、宿屋に行くか、天然の温泉に行くか、夏の暑い時期なら川に浸かるのかのどれかであった。
「これはすごいなあ…」
 バビ宮殿の立派な浴場を見てロビンは思わず呟いた。
 質素な脱衣場で衣服を脱ぐと、タオルを持って浴室へと戸を開けて入っていった。すると驚くべきことが起きた。
 浴室には先客がいた。いや、それだけならば別に驚く事はない。
 その先客というのはロビンより背が低く、丸みを帯びた肩をしている。胸元にタオルが当てられているが、身長のわりに豊満な胸の為、隠しきれていなかった。
 ロビンが出会ったのは女性である。これでかなり驚くであろうが、これをさらに超える驚きがあった。
 ロビンを見つめる顔である。普段はつり上がっている目が今は驚きのあまり丸くなっているが、今は束ねられている混じり気のない真っ赤な髪を見て合点がついた。
「り、リョウカ…!?」
 ロビンが言うとリョウカはビクッとした。
「…………っ!!」
 リョウカは声にならない叫びを上げてロビンの頬に平手打ちした。
「いって?!!」
 ロビンの叫びは浴場中に響き渡った。
「……何も叩かなくてもいいのに…」
 ロビンは真っ赤で手形に腫れた頬をさすりながら洩らした。
「うるさい!お前が悪いんだ!」 背後から湯をかけられた。
 リョウカはロビンの後ろの方で湯に浸かっていた。振り向いたら殺すと言わんばかりの視線が背中に浴びせられている。
 さっきの湯が耳に入り、ロビンは首を振った。
「別に覗きにきたわけじゃないのに…」
「当たり前だ!覗きだったら斬ってるところだ!」
 また耳に水が入った。
「落ち着けよ、ただ見ただけじゃないか」
「ただ見た、だと?」
 背後の殺気がさらに大きくなった。
「え、いや、あの、見たというか…ちょっと見た?ああそうだ、見えた、見えただけだよ!」
「見た、のか?」
 リョウカの声は低く、とても恐ろしかった。
「…少し」
「殺す…!」
 背後の殺気がこれまでで一番大きくなった。これにより、ロビンはただ陳謝するしかなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい!もうしませんから!ていうかこんな事もうないだろうけど、ああすいません、許してください!」
 背後の殺気は消え失せた。
「ふん、まあそんなに謝られては許さんわけにはいかんだろう…」
 ロビンは本当に命拾いしたと思った。本当に命が危ないと思っていた。
「但し、次同じような事があったらただじゃ済まないから覚えておけよ!」
「は、はいぃ!断じて致しませんん!」
 最後は一番恐かった。今度こそ同じ過ちをしたら命がないと本気で思った。
 しかし、これほど恐ろしい目にあいながら、まだ後ろでぶつぶつ言っているリョウカを後目になんだか妙な気持ちになってきた。
 妙な安心感である。そこからくすくすと笑いが洩れた。
「ふ、ふふふ…」
「何がおかしい!」
「え、ああゴメン、何だか安心しというか何というか…」
「安心?何を安心したんだ」
 無論命が、ではない。
「リョウカって口調も態度も男みたいなのに、その様子を見てたらリョウカも普通の女の子なんだなあと思ってさ」 リョウカは顔を真っ赤にして言葉に詰まった。ついつい出てくる言葉が乱暴になってしまう。
「バカにしてるのか!?」
「いやいや、そんな事はないよ。魔物だって何の迷いもなく倒すくらい頼もしいのに、そういう女の子らしいところがあるんだって、思っただけさ」
 こうまで言われると余計に言葉に詰まってしまう。
 ふと、いつからか、とリョウカは考えた。いつから男勝りな態度や言動をとるようになったのか、ロビンに言われ、自身でも考えてしまう。
 考えてみても到底分からない。もちろん理由なんてあるはずがない、しかし、考えれば考えるほどに浮かび上がるのは、時折、突然出てくる自分の中の何者がである。
 イミルでアレクスに負けた時以来、出てくることはないが、ずっと、少なからず気になっていた。
 ひょっとしたら、リョウカという者は存在せず、その何者かが真に存在すべき者なのではないか。
 しばしの沈黙が流れ、数分経っていた。
「あ、あのなロビン…」
「さ?て、そろそろ出るか。のぼせそうだ」
 ロビンが浴槽から出るのと同時にリョウカの声はかき消された。
「ん?何か言ったか、リョウカ」
 声は僅かにロビンに届いていたらしい。
「いや」
――言っても信じてもらえないか…――
「なあ、リョウカ」
 ロビンは振り向いてきた。
 リョウカは慌てて胸元をタオルで隠した。それを見るとロビンもあっ、という顔をした。
「ご、ゴメン!これだけは面と向かって言っておきたくて…」
「い、いや、いいんだ。で、どうしたんだ?」