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涼風 あおい
涼風 あおい
novelistID. 18630
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ただの高校生なので。

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だからって、わざわざメールで回すことじゃねぇだろ。
「ふーん。なんだ、つっまんねーの。つーかさ、日向お前、付き合ってないなら仲村さん独占すんなよな〜」
「してねぇだろ、別に…」
視線だけで、隣で始終黙っているゆりっぺの様子を探る。うつむき気味になっていて表情はよく見えないが、オーラが確実に怒っている。もし2人きりだったら殴るか蹴るかされていることだろう。
「じゃあさ、じゃあさ、仲村さん俺と付き合わねぇ?」
俺の右側から、ゆりっぺのいる左側へ、ささっと移動し、顔を覗き込むように近づく。
「おまっ…」
近づく男を止めようとするも、もう1人の男に押しのけられて叶わない。
「お前何口説いてんだよ。俺も俺も!」
「ってお前も口説こうとしてんじゃねーかよ!」
「お前らいい加減にしろ!」
尚も黙り続けるゆりっぺを気にもせず笑っている奴らの頭を小突いてやると、「日向が怒ったー!」「逃げろー!」などという非常に幼稚な捨て台詞を吐いて走っていった。
「ったくあいつらは…」
朝っぱらから無駄に疲れさせてくれたことと、ゆりっぺを超絶不機嫌にしてくれたことを合わせたら、小突く程度じゃ全然足りねぇ。
「あれだな、こう毎回からかわれるのもいい加減疲れるよな。もういっそ本当のことにしちまうか〜?あはは…は…」
やばい。ゆりっぺが鬼のような形相になっている。殺されるかもしれない――。
その瞬間、頭に激痛が走った。
「いってぇぇぇぇえええ!!」
「まだ寝ぼけてるみたいだから、起こしてあげようかと思って。あたしって親切よね。目は覚めたかしら?」
ぐあんぐあんする頭をなんとか持ち上げると、目の前には満面の笑みと、俺の頭痛の原因であろう鞄があった。
「お…おう…下手すると二度と目覚めなくなるとこだったけど…な…」
くっそ、あいつら、後で絶対この痛みを味あわせてやる…。


*


英語の辞書が入った鞄で思いっきり殴ったらさすがにふらふらになった日向くんを置いて、先に教室へと向かう。放っておいても死にはしないだろうだろう。辞書が入っていたのはわざとではない。言って信じてもらえるかは分からないが、入っていることを忘れていた。事故だ。
教室へ入ると、先に来ていたひとみがその瞳を輝かせて近づいてきた。
「ねぇねぇっ昨日――」
「わかってる。アンタの言いたいことはわかってるから。その話はお昼休みにしましょう」
ひとみの言葉を遮って、手と言葉でひとみを制す。今すぐ問い詰めたいひとみはぶーぶー言っていたが、なんとか大人しくなってくれた。
先に教室へ来ているはずのさっきの2人は、誤解だったことを誰にも話してはいないのだろうか。まったく…誤った情報だけは嬉々として流すくせに、誤解だと知って興味を失えば、誤解であることは流さないんだなぁ。
ひとみとのやり取りを見てか、他の女の子たちも何か言ってくることはなかった。
無駄な抵抗だと分かっているけれど、午前中はなるべく日向くんの方を向かないようにして過ごし、無事にお昼休みを迎えた。
あたしたちはいつぞやのように、人気のない裏庭へ来でお弁当を広げることにした。
「でっ!?どうだったの昨日はっ!」
「あのね、まず、2人で出かけたっていう情報自体が間違いなのよ…」
昨日の出来事をざっくり話す。勿論大山くんのことは日向くん同様昔なじみの友達としか言っていない。
ひとみはあたしの話を大人しく聞き、最後に大きなため息をついた。
「もどかしいなぁ。はたから見たらどう見たって両想いなのに。なんでさっさとくっつかないかなぁ?」
どう見たって両想い?あたしが日向くんを好きで、日向くんもあたしが好きだって?ひとみ以外のクラスメイトからもそんな風に思われているのだろうか。
「ゆり、早く告白しちゃいなよぉ〜。もう自分が日向くんを好きだっていうのは自覚してるんでしょ?」
「う…なんでわかっちゃうかなぁ…」
「わかるわよ。何年ゆりと友達してると思ってるの?日向くんも日向くんよね。なんでちゃんと告白して付きあおうとしないのかしら」
心底不思議でならない、といったような様子でひとみが半ば独り言のように言う。
なんで、か…。日向くんはやっぱりあの子と…。
そんな考えがまた頭を回り始める。
「他に日向くんと何かあったの?話したくないならいいんだけど…」
急に沈んだあたしを心配してくれたけれど、これは他の人に話せる話じゃない。話したくないわけじゃないのに、話せない。
自分ごとのように悩み、喜び、時には怒ってくれるひとみは、あたしの大事な友人だ。話せるものなら話してしまいたいけれど…。
「ごめんね、ひとみ」
「何謝ってるのよぉ!謝られるようなことされてないんだけどなぁ〜。ま、わたしははゆりの味方だからさ、わたしに出来ることがあったらなんでも言ってよね!」
「ありがと」
いつかひとみが本気の恋をしたら、その時はあたしがひとみの味方になり、力になろうと改めて思った。


*


さて、どうしたもんか…。
予想外の現状をなんとか打破したくて頭を悩ませているものの、決して頭がいいとは言えない頭ではいい解決法が浮かばない。
あの日の、素直に本当の気持ちとして言えなかったゆりっぺなりの告白に、俺はYesの返事をした――つもりだった。“つもり”、辞書によれば「自分勝手な思い込み」とある。正にその通りだ。相手に伝わらない言葉など意味がないのに。
「はぁ…今更どうやって伝えろっていうんだよ…」
ひとりごちて机に突っ伏すと、前の席の奴が何やら必死にペンを動かしている。今日提出の課題なんてあったかと今日の授業科目を順番に追っていく。
「やっべ、英語当たるのにやってねぇ…ゆりっぺに見せてもらうか…」
ゆりっぺも特別勉強ができるわけではないが、宿題や予習はきっちりとやってくる、真面目さんであり努力家だ。その努力の賜物を数分でいただこうなどというのは虫が良すぎるとは思うが、背に腹は変えられない。
「ゆりっぺ頼む!英語の訳を見せてくださいっ!」
こうやってゆりっぺの目の前で手をあわせて頭を下げるのは何度目だろう。毎回ぶすっとされるが、なんだかんだ最後には見せてくれるのでつい甘えてしまう。
「まだこの前の分のツケが残ってるんだけど?」
「ツケ?」
なんだっけ?
「ケーキ。駅前のケーキで手を打ったでしょう?その分の支払がまだですので受付兼ねます」
ああ、そういえば…。おお、そうだ、その手があった。
「そう言うなよぉ。今日まとめて払うからさ!ケーキに飲み物もつけるから!だからお願いしますゆりっぺ様っ!」
一緒にお茶飲みに行ったところでどうにもならないかもしれないが、何かのきっかけにはなるかもしれない。
それでもぐずるゆりっぺをなんとか説得し、その日一緒に行く事となった。
全ての授業が終わり、掃除が終わると、各自お店に向かう。
どうせ同じ場所から同じ場所へ行くんだから一緒に行けばいいのに、クラスの奴に突っ込まれるのが嫌なんだろう、そこだけは譲れないと押し切られた。
約束した時の会話を聞いてた奴は絶対いるし、学校の最寄り駅前の喫茶店なんかにいたら誰かしら通るだろうにこの細工に意味はあるんだろうか。
先に教室を出ていったゆりっぺから遅れて10分。俺は席を立った。